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銀狼ルナの心情~異世界で勇者になりましたが引きこもります番外編  作者: きゆり
二章 現代編

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第十五話

 動物たちとは別れ、オブシディアンを連れ森の奥へ向かった。

 オブシディアンはすっかり元気なったな。

 ユウにやたらと懐いたものだ。我もまた再び人間と契約をするとは思っていなかったがな。


「ルナ、オブ、聞こえる?」


 別れてから時間も経たずに、ユウから連絡が来た。


『あぁ、ユウ、聞こえるぞ』


 オブも返事をし、どうやら魔導具屋が開いていないので、今日は魔導具が手に入らないという連絡だった。

 そのままオブシディアンと一夜を明かすことになった。


 誰かと共に過ごすのは久しぶりだな。オブシディアンを守るために動物たちと過ごしていたが、少し意味合いが違うしな。

 やはり仲間……なのだな。


 翌日オブシディアンはつまらなくなったのか、翼を羽ばたかせ飛んでみたり、尻尾を叩き付けてみたり、と、大人ドラゴンの真似だろうか、暴れ回っている。


 我は無駄な動きをしたくない。気配を探りながら横たわる。

 その時にふとユウが気になった。

 今日は魔導具屋も開いているだろう。普通の服を頼むつもりで話し掛けてみた。


『動きやすい服で頼むぞ、ユウ』

「うわっ! いきなり話し掛けないでよ、びっくりした」


 うわっ? 何故そんなに驚くのだ。


『すまん。しかしユウが何やら変なことを考えている気がしてな』


 これは本当だ。何やら感じたのだ。


「いやいや、大丈夫! ちゃんとしたので作るよ!」

『頼んだぞ』

「はーい」


 何やら不安だ。大丈夫だろうな……。


 しばらくしてから連絡が入った。

 ユウが戻って来るから分かりやすい場所で落ち合おうということだった。


 戻ってきたユウはオブシディアンに抱き付き頭を撫でた。オブシディアンも嬉しそうだ。

 その後我のほうにもやって来たかと思うと、我の首に手を回し抱き付く。そして我の首元に顔を埋めたかと思うと、すりすりと顔を擦り付けた

 さすがに変な気分になる。


『おい、いつまでしている』

「あ、ごめん。でもそのもふもふたまらないんだもん!」

『可笑しな奴だ』


 何とも気の抜ける返事だ。思わず笑いが漏れた。

 そのやり取りを見てか、オブシディアンが間に割り込んできた。


『それより魔導具は?』

「あ、そうだった」


 忘れていたのか……。


 ユウは銀色の腕輪を取り出した。赤い石の腕輪をオブシディアンに、青い石の腕輪を我に。

 腕輪は大きさを考えずともすんなりと手首に収まった。


「まずはオブね。オブ小さくなって!」


 ユウの言葉に反応するように腕輪に付いた石が光だし、オブシディアンを包み小さくなっていった。

 ある程度小さくなると光は消えた。

 そして光の中から出てきたのは……


「か、可愛いーー!!」


 ユウは小型化したオブシディアンを力一杯抱き締めたらしく、オブシディアンが死にそうな顔をしている。


『ユウ、くるしい……』

『ユウ、離してやれ』

「あ、ごめん」


 オブシディアンを高く持ち上げ、マジマジと見詰め、こちらを向いた。


「これって成功なの?」


 言いたいことは分かった。これは小型化というよりも赤子化……。


『どうだろうな。我もドラゴンの小型化は見たことがないから分からない』

「うーん、まあ良いか。可愛いし!」


 良いのか……何も考えていないのか……。


「次はルナね。後ろ向いとくから人間化してみて?」

『? なぜ後ろを向いておくのだ? 見ておかないと成功しているのか分からないのではないのか?』

「いやいやいや! 無理だから!」


 思い切り否定された。相変わらず人間化には異様な反応をするな。


『まあ良い。分かった』


 人間化をし、ユウに近付いた。

 ユウの耳元に口を近付け名を呼んだ。

 ユウはビクッとすると、声のほうへ振り向いたため、お互いの鼻先が掠めた。ユウは放心している。


『ユウ?』


 あまりにも顔が近かったせいか、瞳に写る自身が見えた。ユウは目を見開き前のめりになった。

 何をやっているのだ。

 背後から左手と腰に手を回し抱き戻した。


「ご、ごめん!」


 何をそんなに慌てているのかは知らないが、手を離し改めて魔導具の服を見た。見たことのない服だな。


『これはユウの好みか?』

「私の好み! 良いでしょ? 動きやすいでしょ? ダメ?」


 何故か最後の言葉は小さくなっていた。


『いや? 動きやすいし、良いのではないか? 今まで着たことがない服だと思っただけだ』

「一応色んな服をイメージしてみたから、その時々で相応な服になるんじゃないかな?」

『分かった』


 なるほど、その場に順応する魔導具なのだな。

 人間は面白いものを造り出すものだ。


「さて、魔導具も無事装着出来たし、街に戻ってみようか!」


 その言葉にオブシディアンは怖がっている。


『ユウや我が守るから大丈夫だ。しかも今のお前はドラゴンには見えない』


 ドラゴンというより少し大きい蜥蜴くらいにしか見えない。それは言わないが……。


「そうだよ、オブのことは私たちが絶対守るから大丈夫だよ」


 そう言ってオブシディアンを抱き上げた。


『さて、では行くか』

「待って、ルナは人間化じゃなくて仔犬化で!」

『ん? せっかく魔導具で服も手に入ったのにか?』


 しかも仔犬ではない……。


「う、うん。必要なとき以外は仔犬化でお願いします」


 何故そんなに人間化は嫌なのだ? それなりに自信のある人間化だったのだがな……。仕方ない……。


『そもそも仔犬ではないからな』

「分かってるよ!」


 本当に分かっているのだろうな……。

 オブシディアンと一緒に抱き上げられ、抱き上げた手で明らかに我とオブシディアンを触って楽しんでいるな……。


『街に行くんだろう?』

「そうでした」


 確実に忘れて触ることに夢中になっていたな。


 ユウは空間転移魔法を発動させ、一足飛びに街まで行った。

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