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銀狼ルナの心情~異世界で勇者になりましたが引きこもります番外編  作者: きゆり
二章 現代編

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第十三話

 女の顔を見ると酷く青ざめていた。

 魔力を使いきったか……。


 ドラゴンが治りきった自身の身体に驚き、そして身体を持ち上げこちらに来た。


『このおねえちゃん、ぼくをなおしたせいでしんじゃったの?』


 ドラゴンは心配そうに女の顔を覗き込んだ。


『いや、魔力を使いすぎて倒れただけだ』


 とは言え、さすがにこのまま放置すれば危ういかもしれん。どうするか。

 人間など放っておいても良いとは思うが……。

 動物たちやドラゴンの視線が痛いな。

 何故皆、この女には懐いているのだ。

 まあ我も例外ではないのだが……何故かこの女からは心地良い気配を感じる。


 少し魔力回復させてやるか。


 何十年かぶりに人間化した。


『なにするの?』


 ドラゴンが心配そうに聞いてくる。


『魔力を少し分けてやるだけだ』


 そう言って、女の身体を上に向かせ、その上に股がり両手の掌に我の掌を重ねた。

 そこから我の魔力を流す。


 魔力を流しているといつまでも終わりのない感覚に襲われる。底知れぬ魔力量だな。

 我の魔力が尽きてしまう訳にはいかない。

 早く目を覚ませ! 握る手に力が入る。


 ある程度魔力が行き渡ったたのか、女は少し瞼を動かした。


『人間、大丈夫か!?』


 ゆっくり瞼を開けた女は眩しそうな顔をし、完全に目を開けると、今度は目を見開いた。

 表情がころころと変わるな。


「ちょ、ちょ、あ、あ、あな、あなた、、、誰ー!!!!」


『あぁ、気が付いたか』


 女は驚愕の表情で周りを見回し、最後に再び我を見た。両手を振り払おうとしているのか、真っ赤な顔でじたばたと身動ぎしている。面白いな。


 両手を離し、女の横に座った。


「あなた誰ですか!? 何で裸!?」


 女は顔を背けながら身体を起こした。

 なぜ顔を背ける。


『裸? あぁ、人間は服とやらを着るのだな。残念ながら今は服などない』


 そういえばショーゴも驚いていたな。服を着ろ、と。その後ショーゴの魔導具のお陰で服には困らなかった。しかし年数と共にその魔導具も失ったのだった。

 最近は人間化する機会もなくすっかり失念していた。


 まともにこちらを見ようともしない、明らかに動揺しているところを見ると、元の姿に戻ったほうが良いようだな。

 獣の姿に戻った。


「え! あなた、あの狼さん!?」


 狼さん……


『そうだ』


 女はマジマジと見詰めて来た。

 まさか獣姿のほうが普通な顔をされるとはな……可笑しな奴だ。


「人狼?」

『いや、我は魔力で人型になれるだけだ。人型は力が劣るから普段は滅多にならない。どうしても必要な場合のみだ』

「そうなんだ……」


 何故がっかりした顔になる。人間化は嫌だったのではないのか? 人間の考えることは分からん。


『そなたが魔力を使い果たして倒れたので、我の魔力を少し分け与えた。それを行うのに狼の姿ではやりづらいのでな』

「魔力を送ってくれたんだ、ありがとう。そういえばドラゴンちゃんは!?」

『そなたのおかげで復活した』


 後ろにいるドラゴンのほうを向いた。

 ドラゴンは心配そうにこちらを見ていた。


「君、大丈夫? 元気になった?」


 女に話し掛けられたドラゴンは近付いた。


「ぼくはおねえちゃんのおかげでげんきになれたよ。おねえちゃんもだいじょうぶ?」


 ドラゴンは女の顔を覗き込む。心配していたのが分かったのだろう、微笑みながら大丈夫だと返事をしていた。


 動物たちも心配そうにしていたが、大丈夫そうだと分かると安心したかのように、次々に周りへ集まっていた。


『そなたには攻撃をしてしまい申し訳なく思う』


 これは本心だった。有無を言わさず攻撃を仕掛けてしまった。

 昔なら自ら攻撃を仕掛けたことなどなかったのにな、と苦笑した。


「良いよ、ドラゴンを守ろうとしてたんだもんね」


 女はニコリと笑った。

 恐怖も畏怖もなく、侮蔑や敵意も全くない。

 最初からずっと……。

 可笑しな人間だな。ショーゴと同じだな。思い出すと少し笑えた。


『償う訳ではないが、そなたが望むならば契約を結んでも良い』


 ショーゴと同じだから、という訳でもなかった。我はこういう人間が好きなのだろうな。

 昔から考えると自分でも信じられんくらいだ。

 ショーゴのせいでこういう可笑しな人間に興味を持つようになってしまった。


「契約?」


 女は契約を知らないのだろう、キョトンとしている。


『あぁ、従属の契約だ』

「うーん、従属……」


 何か引っ掛かっているのか? 考え込んでいる。


「友達になってくれるのは嬉しいけど、何か上下関係付けちゃうのは嫌だな」


 友達……?


『ハッハッハ!! 変わった奴だな。我を従わせようとした者はたくさんいたが、友達になりたいと言ったものは一人もいなかった』


 ショーゴが仲間になりたいと言ったくらいだな。後にも先にもそんな可笑しなことを言う奴はそなたらくらいだろう。初めて声を上げて笑った。


「そうなの?」


 女は不思議そうにしていた。


『まあ堅く考えるな。従属契約と言っても仲間のようなものだからな。契約をしていれば、お互いがどこにいるか気配ですぐに分かるし、離れていても会話が出来る。我の力も契約の力で上乗せされる。そなたに何かあればすぐに駆け付け助けられるぞ』


 それを聞いて女は関心を示し質問をしてきた。


「街中には一緒に入れる? 離れても会話が出来るならやっぱり外かな」

『そなたが望むなら人間の姿になって付いて行こう。服は魔導具として装備させていてくれたら大丈夫だ』

「いや! それは色々問題があるからダメ!」


 何だ? 何故人間化が問題なのだ? たまに理解不能だ。


『ならば小さき姿になって一緒に行くことは出来るが』


 小型化をして見せた。

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