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サメじゃないので空は飛べない。

 行く手を阻むサメを斬り捨てながら、俺とせ―さんは前へと進む。


 その途中、ふと心配になったので聞いてみた。



「そういえばせーさん、体調は大丈夫ですか?」


「え? あっ、はい。少し寝たので良くなりました」


「まだせーさんがログアウトしてから数時間しか経ってないっすよ?」


「私、疲れていても3時間ほど眠れば大丈夫なので……」


「強すぎる」



 俺なんて12時間くらい寝ても眠かったりするのに。


 まあ、ともかく。



「大丈夫ならいいんです。頑張りましょう!」


「はい! それと、カネツグさんに聞いてほしいことがあるんです! この戦いが終わったら……」


「待ってせーさんそれ死亡フラグを感じる! 話すの後にしましょう!」


「そ、そうですか? それでは……」



 口を閉じた後、せーさんは正面を見据える。


 エクサロドンを中心に、空を泳ぐサメの群れ。


 せーさんは走る勢いをそのままに、桟橋からジャンプ、群れの端にいたサメの背中に、軽々と飛び乗った。


 俺もそれに続く。


 泳ぐサメの速度を見て、タイミングよく桟橋から――ジャンプ!


 数秒間、滞空した後、俺は狙っていたサメの背中に飛び乗った。



「よっし、成功!」


「カネツグさん! 次へ!」


「了解!」



 そう、一度、サメに飛び乗れた程度で喜んでいる場合ではない。


 空飛ぶ群れの端から、次々とサメを渡っていき、エクサロドンまで接近しなければ。


 俺は次のサメの背中へジャンプ。


 足を滑らせそうになったが、なんとか成功。


 さらに、次のサメへ。


 滞空中、近くにいた飛行サメが俺に噛みつこうとしてきたが、



「邪魔ッ!」



 空中で体を捻り、その勢いでカタナを振るい、サメの首を跳ね飛ばす。


 体勢を立て直して、サメの背中に着地。


 やってみるとなんとかなるもんだ。


 ふと見れば、せーさんは俺より先へと進んでいる。


 遅れまいと、俺はその後に続く。


 サメからサメへ飛び移って、サメを斬って、またサメへ飛び移って、次のサメへ飛び移って、サメを斬って……サメすぎて頭がおかしくなりそうだったが。


 とにかく、俺たちはサメを足場として空を渡っていき、ついにエクサロドンへと飛び移ることに成功した。



「……っふぅー! ちょっと落ちかけた!」


「おつかれさまです、カネツグさん。……それにしても、本当に大きいですね、このサメさん」


「背中に乗るとこう……なんかの島? って勘違いするようなサイズですもんね。ともかく、このサメには……」



 俺はカタナを抜き、足元に――エクサロドンの皮膚に突き立てた。



「落ちてもらう!」



 ドスリと、肉を貫く間隔。


 エクサロドンの皮膚に切れ込みが入る。


 ちょっとだけ血が出た。


 …………。


 …………あれ?


 隣でせーさんも足元のエクサロドンを斬り裂いているのだが、やはりちょっと表面が傷つくだけ。


 エクサロドンは痛みに悶たりもせず、平常通りに空を飛んでいる。



「……あっ! そうだ!」



 俺のカタナは二本ある。


 普通の高性能なカタナ”蛇鴉”と、属性付与ギミックを備えた変なカタナ”四色刀”。


 四色刀の属性付与ギミックを利用すればと、俺はそちらもエクサロドンの背中に突き立てて、ボタンを押した。


 刀身が赤く燃え、エクサロドンの肉が焼ける。


 焼き魚の匂いがした。


 次のボタンを押す。


 刀身が青い雷光を纏い、エクサロドンを感電させる。


 ただ巨大すぎる全身にまでは電気が通らない。


 次。


 刀身が白く凍り、冷気がエクサロドンを凍らせる。


 やはり、傷口がちょっと固まっただけ。


 俺たちが何をしても、エクサロドンは揺るがない。



「……誤算でしたね」


「そうですね……」



 巨大すぎるエクサロドンに、小さすぎる俺たちの攻撃は通じないらしい。


 これでは、この巨大なサメを地に落とし、仲間たちに攻撃させることが不可能だ。


 作戦失敗か、と、諦めかけたその時、ふとペスカの――奈緒の顔を思い出す。



「……そういえば、妹が言っていたんです」


「え?」


「暗い深海に生息する種類のサメは、光に弱いのだと。目にカメラのフラッシュを浴びただけで衰弱死してしまうこともあるんだとか」



 妹から教えられたサメ知識。


 それを念頭に置いた上で、俺は自らの愛用するアイテムを手に取る。


 フラッシュ・グレネード。


 ”閃光”手榴弾。


 エクサロドンが、光に弱いサメだったと仮定して。


 太陽の下で暮らす人間ですらも怯むほどの、強烈な閃光を目に浴びせられたらどうなるか?


 試してみる価値はあるだろう。


 失敗してもフラッシュ・グレネードが一つだけ無駄になるだけだ。



「せーさん! ちょっとこいつの頭の方まで行ってくる!」


「わかりました! お供します!」



 俺はエクサロドンの背中を駆ける。


 せーさんは俺の一歩前を行き、進路を妨害しようとする飛行サメを斬り捨てて道を拓く。


 背中から首へ、首から頭部へ。


 やがて辿り着いたのは、エクサロドンの鼻の上。


 左右を見下ろせば、死んだ魚のソレみたいな眼球がギョロギョロと動いている。



「……さーて、お前が深海魚なのかどうなのか、教えてもらうぞ! せーさん! 目を閉じて!」


「はい!」



 俺はエクサロドンの左目に向けて、フラッシュ・グレネードを投擲。


 直後、炸裂。


 閃光が空に輝く。


 斬られても焼かれても動じなかったエクサロドンが、はじめてその身を悶えさせた。


 巨体が、降下をはじめる。


 どうやら、エクサロドンは光に弱い”深海魚”だったらしい。


 やったと思ったが、その直後に気づく。



「……あれ? これこのままだとこいつと一緒に真っ逆さま?」


「……そういえば、そうですね」



 そういえば、俺たちはサメと違って空を飛べない”人間”だった。

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