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地獄の三つ首ガトリング。

「げほっ、それで、二人とも、今日は何の用だい?」



 とうとう喫煙を諦めた姉御は、キセルをその辺に放って俺たちに応対する。



「新しい、銃、買いに来た」


「ほう、銃ねぇ。あんたスナイパーだろ? ということは、新しい狙撃銃をご所望かい?」


「違う。狙撃銃じゃ、ない。中距離戦向けの、銃が欲しい」


「中距離戦向けとなると、ライフルかマシンガン、あるいはガトやロケランか」


「私、習得しているスキルが、キャノンマスタリー。重量のある、火器なら、新しく、スキル、鍛えなくても、済む」


「オーケー、キャノン系だね。ちょっとまってな」



 アルの要望を聞いて、姉御が店の奥に引っ込む。


 ガラガラガチャガチャと物音を響かせた後、戻ってきた姉御は馬鹿でかい銃器を抱えていた。



「うちの店にあるのはこんなところさ」


「少し、見せて」



 アルはそれらの銃器を手に取り、真剣な顔で性能をチェック。


 その間にと、姉御は俺にも問うてくる。



「そっちは何かないのかい? カネツグ」


「俺は武器の修理くらいですかね。また壊れました、四色刀」


「自分で作っておいてなんだが、本当にすぐ壊れるねこいつは。待ってな、すぐに直してくるよ。代金はいつもどおりで」


「了解っす」



 俺から四色刀を受け取ると、姉御は再び店の奥へ。


 姉御の鍛冶系スキルも着実に成長しているらしく、今では四色刀の修理も五分ほどで終了する。


 戻ってきた姉御の手には、新品同然にピカピカになった四色刀が握られていた。



「あいよ、おまちどう。サービスでちょっとだけ強化しといたよ、前より少しだけ性能が上昇してるはずさ」


「あざっす!」


「……ところで、アタシの四色刀とカレンの作ったカタナ、どっちが使いやすい?」


「……えーと」



 俺はそろーっと目を逸らす。


 属性付与ギミックと引き換えにすぐ壊れる”四色刀”と、特殊な力はない代わりに性能が高い”蛇鴉”、どっちが使いやすいかと言われると後者である。


 しかし、四色刀の製作者本人にそれを言うのはどうかと口をつぐんだのだが、俺の反応で姉御は察してしまったらしい。



「そっかぁ……、やっぱ基本性能と耐久値が課題かねぇ」


「し、四色刀も属性攻撃が弱点の相手にはめっちゃ役に立ちますよ!」


「ははっ、フォロ―ありがと。……あとでまた色々と試作してみるか。ちょうどいい実験台もここにいるし」


「実験台って言いませんでした今!?」



 姉御はそろーっと目を逸らし、口笛を吹いて誤魔化した。



「……決まった」



 と、アルが買う武器を決めたらしい。



「これ、もらう」


「おう、そいつは……”トライバレル・ヘルケルベロス”か。いいもんを選んだね、そいつは自信作だよ」



 武器の名前がカッコいいあたりはさすが姉御。


 アルが選んだ武器は、三連銃身トライバレルの名の通り、三つの銃身を備えたガトリングガンだ。


 AMSRハイドラハウルに負けず劣らずごっつい銃で、現実に存在していたら屈強なムキムキ軍人さんでも持ち上げるのが精一杯だろう。



「威力が、高い。気に入った」


「ふふふ、何を隠そう威力と連射性に重点を置いた火力特化砲だからね、そいつは。それがロマンというヤツさ。まあ、よほどのSTRがなければ反動がデカすぎてまともに扱えないんだけど」


「問題、ない。STRなら、自信、ある」



 小柄で儚げな白色少女、アルファルド。


 まるで力強いタイプに見えないのだが、実のところ大型狙撃銃を扱うため筋力をかなり強化しており、うちのパーティではアカツキに次ぐSTR自慢である。


 大剣二刀流とかいうバカの戦い方でもしない限りは、彼女はほとんどの武器を軽々と扱えてしまうのだ。



「それと、弾丸。大型狙撃銃用と、ヘビーガトリング用の、大口径弾、くれ」


「あいよ。ノーマル弾だけでいいのかい?」


「貫通弾、も、ほしい」



 UNOは、銃を撃つのに弾丸を消費させるタイプのゲームである。


 そのせいで射撃武器は”銃自体の耐久値”と”弾丸”という二重の消費に苦しめられることになり、戦闘ごとにかかる経費は近接武器のおよそ1.5倍。


 単純に考えればペナルティでしかない弾丸システムなのだが、実はこのシステムが銃系武器の長所でもある。


 銃に装填できる弾丸は普通の弾丸”ノーマル弾”以外にも複数種が存在しており、例えば着弾地点で爆発する”ブラスト弾”とか、撃ち抜いた相手を凍結させる”フリーズ弾”など、多種多様。


 それらの弾丸を、物理に弱い相手にはノーマル弾、氷に弱い相手にはフリーズ弾、といった感じで使い分ければ、一つの銃で様々なタイプの敵に対応できる。


 この弾丸システムに由来する状況対応力も銃系武器の強みなのだ。


 まあ特殊弾はノーマル弾に比べるとだいぶ値が張るので、結局のところ銃系武器の長所を活かそうとしたら近接武器の何倍もお金がかかってしまうのは間違いない。


 ちなみにアルが所望した”貫通弾”は、敵の物理防御を無視してダメージを与える特殊弾だ。


 重装甲の敵にもダメージを通しやすく、大型で硬い相手を撃つことが多いアルには適した弾丸と言える。



「んじゃ弾丸とヘルケルベロスで……お代はこんなもんだね。端数はオマケしとくよ」


「わかった」



 アルは姉御にお金を支払い、新たな銃と弾丸を手に入れた。


 やはり買い物をするのは楽しいのか、その表情はいつもよりちょっぴり嬉しげだ。



「それじゃ姉御、またそのうち来ますね」


「また、くる」


「あいよ。それまでにたっぷり稼いどきな」



 商品が売れて上機嫌な姉御に見送られ、俺たちはぱらいそを後にする。


 買い物が終わり、さて次はどうするのかと問う前に、アルが俺の手首を引っ張った。



「試し撃ち、する。つきあえ」


「オーケー。お前の新たな銃の力、見せてもらおうか!」

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