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喫煙は20歳になってから!

 昨日の様子を見る限り、アカツキとせーさんなんとなく大丈夫そうだった。


 安心した俺は次の日こそ狩りに……は、いかず、アルと一緒に西京まで買い物に来ていた。


 その日、ペスカは夏休み中の部活がある日で昼間にログインできず、エンネアもモデルの仕事があるのでオフライン。


 アカツキとせーさんは釣りだ。


 なのであまった二人で狩りに行こうかと思っていたのだが、珍しくアルが行きたいところがある、と。


 西京の街を並んで歩きつつ、俺はアルに聞いてみた。



「行きたいところって?」


「ぱらいそ。バサラの、店。新しい、銃を、買おうと、思う」


「姉御んところか。新しい銃って……今のヤツだと物足りなくなってきたのか?」


「いや、これ自体は、問題、ない。私好み。改造しながら、使い続ける、つもり」



 武器や防具にだって性能差が存在する。


 低レベルの時に入手できるような武器は性能が低く、逆に高レベル帯の武器は高性能という、ゲームでならよくある話。


 基本的に装備の性能は高い方が良いに決まっているので、プレイヤーは自分のレベルや行動範囲にあわせて装備を買い替えながらゲームを進めていく。


 しかし、低レベル帯でお世話になった武器に愛着があり、それを長く使い続けたい、というプレイヤーも多くいる。


 彼らに対する救済策が、鍛冶系のスキルを持つプレイヤーが手を加えることで装備の性能を上昇させる”改造”というシステムだ。


 この改造を行っていけば、低レベル帯の武器を強化して長く使い続けることが可能となる。


 性能を上昇させた分、例えば修理に必要な素材アイテムに高品質なものを要求されるようになる、装備を十分に使いこなすための要求ステータスが高くなるなど、いくつかのデメリットもあるのだが、その辺は財布やアバターの育成方針と要相談。


 アルはいま愛用している大型狙撃銃”AMSRハイドラハウル”を、その改造を利用して使い続けるつもりらしい。


 となると、新しい銃が欲しいとはどういうことだろう?


 俺が聞く前に、アルはいつもどおり途切れがちな言葉で語り始める。



「……私が、スナイパー、やってる、理由。敵と、接近、したくない、から。怖いし。けど、今は、少し、大丈夫。お前ら……ミス、あなたたちが、いるし。危なくなったら、カバーして、もらえる、から」


「フッ、仲間の背中を守るのはパーティ戦の基本だからな」


「ノリが、痛々しい」


「泣くぞ?」


「……それで、少しは、接近戦に、対応できる、銃を、買おうと、思った。中距離支援向け、みたいな、やつ。敵が近ければ、少しは、命中率、上がると、思うし」


「なるほど。でも最近はお前の狙撃の命中率、前よりマシになってる気はしたんだがな」



 アルの狙撃の命中率は相変わらずひどい。


 しかし以前は10発を撃って5発しか当たらないくらいだったのが、最近は10発を撃って7発を当てるくらいに改善されてきていた。


 そのことについて言われると、アルはぼそっと。



「……一人で、やってた時より、集中、できるから」


「集中できる?」


「前は、いつも、自分の周りを警戒しながら、狙撃してた。敵に、襲われるかも、しれなかったから。けど、今は、エンネアが、ドローンアイで、周囲を、見張ってくれる。お前らも、状況次第で、助けに来てくれる。だから、前より、狙撃に、集中できる」



 言ってから、アルは恥ずかしそうに顔を背けた。



「……一応、お前らの、おかげで、マシになった、ということ。礼は、言わないが、ありがとう」



 礼は言わないと言いつつ、ありがとうと言っている。


 矛盾したその言葉が、彼女なりの感謝の表現なのだろう。


 そう言ってくれるのは嬉しいのだが、そうこっ恥ずかしそうにされるとこっちもなんだか恥ずかしい。


 だからこの空気を取っ払うため、俺はちょっとふざけて彼女に答える。



「んもーアルちゃんったら素直じゃないんだからー」


「……今の、私は、お前の頭に、素直に、銃口を、向けられる」


「ごめんなさいごめんなさいこっち向けないでその物騒な銃を!?」


「……ったく。こういう、ふざけた会話、ずっと前は、嫌いだった、はずなのに」


「俺も人と話すのはそんなに好きじゃないな」 


「そうは、見えない」


「仲の良い相手は別なんだよ」


「典型的、コミュ障の、性質」


「泣くぞ!?」



 そんなどうでもいい会話をしながら歩いて、俺たちはバサラの姉御の店へと辿り着く。


 のれんをくぐれば、相変わらず雑多に武器を売っているカオスな店内。


 姉御はカウンターでキセルを咥えており、



「げほっ、げほっ!?」



 その煙で思いっきり咳き込んでいた。



「なにしてるんですか姉御……」


「げほっ……お、おうカネツグ、それとアル。いやね、客に言われたのさ。キセルでタバコを吸ってそうな見た目をしている、って」


「その客の意見には全面的に同意できますけど」


「だからキセルを吸う練習。ごほっ。ああ、クソ、煙たい。バーチャルなのになんか目に染みるし」


「そんなに無理して吸わなくてもいいのでは……」


「げほっ、そうは、思うんだけどね。けどやっぱ、さ」



 姉御は少し溜めた後、カっと目を見開いてこう主張する。



「映画とかでイケてる大人がタバコとか吸うシーン、格好いいだろう!?」


「その意見にも全面的に同意できますけどね!」


「だろう!? だからそういうの、できるようになりたいのさ」



 わかる。


 キセルをふかす剣客しかり、街の片隅でタバコを吸うダンディな探偵しかり、映画などで喫煙する大人はだいたい格好いいのだ。


 格好いいことをやりたくなるのは人として当然。


 ただ健康などが気になるので現実ではやりたくない、そんな悩みを解決してくれるのが仮想現実ってやつである。


 俺もこっちの世界でタバコを吸ってみたことがあった。


 むせまくった。


 以来、俺は現実でも仮想世界でも喫煙を完全にあきらめているのだが、姉御は格好良さやロマンのためにその無理難題に挑戦しているのだ。


 すげぇと尊敬の眼差しを向ける俺、めっちゃ咳き込みながら再びキセルを口に咥える姉御。


 そんな俺たちを、



「バカ、じゃねーの」


「「バカって言うな!?」」



 アルはすごい直球で罵倒してくるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 喫煙経験がないのならまず検索してからのほうがいい、とマジレスwww
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