常識人枠。
グランマーレに戻った俺は仲間たちと合流し、せーさんのことを紹介する。
「というわけでこちら新しくパーティに加わったせーさんです」
「せ、セイガイハと申します。呼びにくければ、せー、とお呼びください」
恐縮しつつも礼儀正しく、深々とお辞儀をするサムライ。
その姿に、四人は呆然とした後、
「……いやいやいやいやカネツグ!? ボクらとしてはいきなり連れてこられてもビックリなんだけど!?」
「その通りよカネツグ、なんで誰にも相談せずパーティメンバーを増やしてるのよ」
「そ、そうだよツグ兄! しかもこんなマトモそうな人を連れてくるなんて! ウチ以外は変な人しかいないこのパーティに!」
「……おい、コンブ、自分を、変人枠から、除外しようと、するな」
「だからコンブってなんなのアルっち!?」
等々、俺に文句をぶつけてくる。
彼女たちの言葉はもっともだろう。
誰にも相談せず独断でパーティメンバーを増やすなど褒められた行為ではない。
だが、わかってほしい。
周囲にむっつり呼ばわりされるのが嫌だから男性メンバーを増やしたいだなんて、彼女たちに相談できるわけないのだ。恥ずかしすぎて。
あと自分がアバターを変えたせいでってエンネアが気に病むのも嫌だし。
そんなわけで俺は真実を隠し、嘘の理由を仲間たちに話す。
「いや、カレンのところで偶然にも出会ってな、すっごく意気投合してしまったんだ。これはもう仲間になってもらうしかないと、そう思った次第でして。ダメ?」
「いきなり受け入れろと言われても困るわ、カネツグ」
アカツキが難色を示す。
するとせーさんが、悲しそうな顔で言うのだ。
「……あの、カネツグさん。ダメなようでしたら、無理にとは言いませんから」
トラブルの原因になるくらいなら自ら身を引く。
奥ゆかしい。サムライ。
そのせーさんの謙虚な態度に乗っかり、俺は仲間たちを説得にかかる。
「ほら見てくださいよせーさんのこの謙虚さ! これがうちのパーティに不足気味の人格者という人材です! せーさんがいれば俺以外が変人揃いのこのパーティも少しはまともになるし! どうでしょう!?」
「待ちなさいカネツグ。変人代表のあなたがどの口で人を変人呼ばわりするのよ。むしろ私だけじゃない、このパーティでまともなの」
「だまらっしゃい脳筋! まともな人はSTR全振りのアバターで大剣二刀流とかしませんー!」
「脳筋言うな! 滅べ!!」
「滅べって言った方が滅べ!! ドードー鳥みたいに!」
俺とアカツキがギャーギャー言い争っている横で、エンネアがせーさんに話しかける。
「あのー、せーさん、でいいのかな? ご覧の通り、私以外は変人ばっかりなパーティなんですけど、本当に入るつもり? 考え直した方がいいよ?」
「ええ、ぜひ。変わった方が多くて、賑やかで楽しいと思いますし。可能ならば、お仲間に加えて頂きたいです」
「うーん、それなら私は反対するつもりはないけど。カネツグの連れてきた人ならたぶん大丈夫だと思うし」
エンネアに続き、ペスカがはいはーいと意見を口にする。
「ウチもオッケー! 仲間が増えるのはオメガ大歓迎ですしおすし?」
対して、アルはぷいっとそっぽを向く。
「……私は、反対。信用、できるか、わからない、し」
さらに、アイアンクローで俺を撃退したアカツキもアルに続く。
「私も反対よ。人格面で優れていたとしても、私たちと一緒に動けるほどの実力はあるのかしら? カネツグ、わかっているでしょう? レベルの違うパーティに入って一番つらい思いをするのは本人なのよ?」
「……それを言われると、なぁ」
かつて俺はアカツキ率いる廃課金勢のギルドに所属していた。
金の力で戦力に絶対的な差がついてしまうUNOにおいて、無課金だった俺は非常に弱く、明らかにギルドの足手まとい。
ギルドメンバーの目は厳しく、あまりに肩身が狭かった。
その状態がつらくてギルドを辞めようとしたのがきっかけで、アカツキと決裂することになり……。
だから、俺はアカツキの言葉そのものを否定することはできない。
しかし、と、俺は聞いた話を理由に反論する。
「せーさん、かなり強いらしいんだ。だから大丈夫じゃないかな」
「かなり強いって……実際に戦っているところを見たの?」
「見てはいないです……」
「じゃあ彼がどのくらい強いのかもわからないじゃない。……まあ、実力が十分なら彼が仲間に加わるのに賛成しても良いわ。だから」
アカツキは厳しい目でせーさんを見る。
「実技テストよ。あなたが私たちのパーティに加わるに相応しい力を持っているか、確かめさせてください。その結果次第でパーティに入れてもいいか判断します。アルもそれでいいかしら?」
「……まあ、強ければ、許容しても、いい」
「お、おい、アカツキ、こっちから誘っておいて実技テストやらせるのはちょっと……」
「大丈夫ですよ、カネツグさん。彼女の――アカツキさんやアルファルドさんの言うことはもっともです。その疑念を払拭するには、実際に私の腕を見てもらうのが一番でしょう。……自信はありませんが、ぜひ、受けさせてください、テストを」
気分を害した様子もなく、せーさんは凛とした表情でアカツキたちの挑戦を受ける。
アカツキは、いい度胸、とでも言いたげに笑った後、踵を返して歩き始めた。
「では、ついてきてください。わかりやすく実戦で、あなたの力を計らせてもらいます」




