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サムライスシフジヤマゲーシャ。


 カレンはゆるりと顔を動かして、俺は振り返って、声の主を見る。


 最初、そのアバターが男か女かわからなかった。


 中性的な顔立ち、長い黒髪、背はすらりと高い。


 防具は波の模様があしらわれた和服、その胸元が大胆にはだけているのを見て、ようやく彼が男性アバターだと理解する。


 カタナを腰に差しており、”剣客”とか”サムライ”という言葉がピッタリの美丈夫だ。


 彼は穏やかな、けれど少し困ったような顔で、俺たちの方を見ていた。


 カレンがそのプレイヤーに応じる。



「あら、ちょうどよかったわぁ。せーさんに紹介したい子がおるんよ」


「私に、ですか?」


「そ。この近未来ニンジャっぽい子な、カネツグちゃん言うんやけど」


「はじめまして、カネツグです」



 カレンの言葉にあわせ、俺は恐縮しつつ自己紹介。


 それと同時に相手の頭の上に浮かぶプレイヤーネームを確認する。


 俺が彼の名を知るのとほぼ同時、剣客は姿勢を正し、礼儀正しく名乗った。



「これはご丁寧に。私は”セイガイハ”と申します。その、ご覧の通りの、”サムライ”です」



 セイガイハと名乗った彼は、言葉遣いといい、仕草といい、いちいち気品に溢れている。


 ここまで丁寧な物腰の人物、そうそういないだろう。


 人格面は仲間にしたいと思うに十分。


 アバターの男女比問題がなくとも、ぜひ俺以外が変人ばかりのパーティに加わってバランスを取ってもらいたいくらいだ。


 一目で彼を気に入った俺は余計な言葉を省き、真正面から単刀直入にお願いした。



「セイガイハさん! ぜひうちのパーティメンバーに……仲間になってください!」



 ……いや、冷静になれ、俺。


 彼ほど人格面に優れていそうな雰囲気のプレイヤーならば、すでにどこかのパーティに所属していてもおかしくない。


 それもきっと俺のところみたいな変人揃いのパーティではなく、すげえまともでしかも強いパーティだろう。


 こちらの仲間になってくれるわけがなく……、



「いいですよ」


「いいの!?」


「な、なぜ提案した側のあなたが驚いているのですか?」


「いや、だって、絶対にちゃんとしたパーティとかに所属していそうな人格者の雰囲気をしていますし……」


「じ、人格者だなんて、そんな。……そんなことはありませんよ。私はごくごく普通の人間です」



 それはもう謙虚に丁寧に、セイガイハさんは俺の言葉をやんわりと否定する。


 侘び寂びを感じさせる奥ゆかしさ。


 まさにサムライ。


 か、かっけえ……!


 俺が目を輝かせていると、カレンがくすくすと笑う。



「んふふ、交渉成立したみたいやね。良かったなぁ、カネツグちゃん」


「ああ! これでむっつり疑惑も回避できるぜ! ありがとうカレン!」


「ええってええって。あ、せーさんもありがとうな? 急にパーティ誘われてびっくりしたやろ?」


「いえ、そんなことは。それに、私も自分を受け入れてくれるパーティを探していたところですから」


「えっ? そんなに引く手あまたっぽい感じをしているのに?」


「はい。……何度か、他の方のパーティにお邪魔させて頂いたこともあるのですが、どうもご縁が続かなくて」



 そう言って、セイガイハさんは悲しそうな顔をする。


 パーティに長くいられない?


 追い出されたのか、自分から抜けたのか……どちらにしろ、集団行動をする上で問題を抱えているのだろうか?


 そうは見えないんだがなぁ。


 あと、他の原因として思いつくのは……、



「あっ、もしかして壊滅的にゲームが上手くないとか?」



 あまりにゲームが下手でパーティの足を引っ張ってしまうようなら、いくら人格者といえど――いや、人格者だからこそ、自分からパーティを抜けようとするだろう。


 俺の言葉に、セイガイハさんはこくんと頷く。



「はい。私は未熟者です、強いと言えるほどの技量は持ち合わせておりません」



 と、本人は言うのだが、カレンがいやいやとその言葉を否定する。



「せーさんが弱い言うたらこのゲームのプレイヤー、ほとんどがへなちょこってなってまうよ? 謙遜しすぎやって」


「そ、そうなのか、カレン?」


「たぶん、この子が戦ってるとこみたら、カネツグちゃんも驚くと思うよ?」


「そ、そんなことはありませんよカレンさん! あまり過大評価されても困ります!」



 カレンはすごいと言うし、本人はそんなことはないと否定する。


 たぶん、謙虚なセイガイハさんが謙遜しているだけだろう。


 結論として、セイガイハさんは見た目も立ち振舞もサムライって感じでカッコよく、おまけに実力まで兼ね備えたすごい人なのだ。


 そんな人がなぜ今まで仲間に恵まれなかったのかは少し疑問だが……とにかく、



「セイガイハさん。改めて聞くんですけど……うちのパーティに加わってくれますか?」



 彼は嬉しそうに笑い、首を縦に振った。



「はい。ぜひ、お仲間に加えて頂ければと思います。あ、セイガイハって、ちょっと呼びにくいですよね? 私を呼ぶ時は、せー、で構いませんよ」


「わかりました、せーさん。それじゃこれから――」


「よろしくおねがいしますね、カネツグさん」



 こうして、セイガイハさんが――せーさんが、パーティに加わった。



「……あっ、カネツグちゃんにあのこと言い忘れとる。まあ、ええか」

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