二人目 爆殺ロボ少女 エンネア が なかまになった!
エニグマから実は女の子ですと告白された次の日。
俺たちはその日もグランマーレのカフェテラスに集まっていた。
俺、アカツキ、ペスカ、アルの四人が揃っており、あとはエニグマを待って今日の行動を開始する予定。
それまでは暇なのでだらだらと談笑しているわけだが、目の前でペスカがうーむと小難しい顔をしている。
「しかし、エニグマさんが女の子だったとはね。しかも、あのはてなちゃんとは。未だに驚きが抜けてませんぜ」
「ああ、俺も冷静を装っていたけどそりゃあもう驚いたぜ……」
俺と話した後、エニグマは仲間たちにも自分の正体を明かした。
性別どころか本名までバラすとは思わなかったが。
俺たちを信頼してくれているのだろうが、正直なところ不安でしょうがない。
理由は拡声器を擬人化したような我が妹の口の軽さである。
「……ペスカ、何度も言うけどエニグマの正体を他の人に言っちゃダメだからな!?」
「大丈夫だってツグ兄。さすがに私もグマさんの正体がバラしちゃダメな情報だってわかってるから。有名人だしなー……」
ファッション雑誌の大人気読者モデル、九鬼丸はてな。
日常的にファッション雑誌を購読する女性には勿論、その可愛さから男性人気も高い。
なので下手に正体を知られるとゲーム内外で大変な目にあうかもしれない。
そうならないよう、俺も情報の取り扱いには注意しないとな。
と、狙撃銃をカチャカチャと弄っていたアルが、会話に割り込んでくる。
「……よく、わからん、けど、有名なのか、エニグマの、中の人」
「え? アルっち知らないのはてなちゃん? よくファッション雑誌に出てるじゃん?」
「ファッション雑誌、読まない、し」
「いけませんなーアルっちー? 流行に敏感にならないとツグ兄みたいなファッションセンスの持ち主になっちまうぜー?」
「どういう意味だ妹」
「ツグ兄のTシャツコレクションを見たら百人中百人がこいつヤベーやつだって思うってこったぁ」
「俺のハイセンスなTシャツコレクションに対しなんて失礼な物言い! そのうち着たくなっても貸してあげませんからね!」
「あのTシャツを着て街を歩くか全裸で街を歩くか選べって言われたら私は全裸を選ぶよ」
「そこまで言わんでも!? あ、アカツキ! お前ならわかるだろう、あのTシャツコレクションのセンスの良さ!?」
アカツキは興味なさそうに一言。
「クソダサ」
「四文字で切り捨てるんじゃねえよチクショウ!」
そんなにか、そんなにアカンのか俺のファッションセンスは?
さすがに自信が揺らいできたぞ。
そのうちファッションの専門家たる九鬼丸さんに判定してもらおう……。
と、
「ごめーん、おまたせ、遅くなっちゃった」
噂をすればというわけでもないが、俺が彼女のことを思い出していたちょうどその時、エニグマっぽい口調で話すそいつがやって来た。
その姿を見た時、俺たち四人は揃って首を傾げることになる。
一応はエニグマと同じ機械の人、機人系アバターだ。
しかしその頭部は無性別のモニターフェイスではなく、愛らしい女性型の顔。
工業的に製造された繊維の髪はピンク色、樹脂で出来た肌色の人工皮膚が機械的すぎる中身を隠している。
さらに、女性的なシルエットの外付け装甲服を身に纏って。
機械で美少女を作りました、みたいな、女性型の機人アバターがそこにいた。
彼女の頭の上に浮かぶプレイヤーネームは”エンネア”である。
「「「誰?」」」
揃って同じことを聞くと、知らない人はあははと笑う。
「やっぱわかんないか。えっと、フレンドリストを見てくれる?」
言われるがまま、俺たちはフレンドリストに目を通す。
相変わらず登録してある名前は少ない。
だから、すぐその異変に気づくことができた。
「……あれ? エニグマの名前が」
昨日まで”エニグマ”で登録されていたフレンドの名前が、いつの間にか”エンネア”に変わっている。
プロフィールを確認すれば、エンネアのプレイヤーIDはエニグマと同じ。
よって、エニグマとエンネアは同一人物であることがわかる。
……え、同一人物?
俺たちは再びそのロボ少女・エンネアの顔を見た。
彼女はモニターに表示された絵文字ではなく、自らの顔でにこりと笑う。
「わかった? そんなわけで、元エニグマです。アバター、イメチェンしました。今日からエンネア、よろしくね!」
まあ確かに、UNOにはそういう機能がありますけど。
こうして、実は女の子だった俺のフレンドは、アバターまでも女の子になりました。
……これは、非常に、マズイことになったぞ……!




