性癖デストロイヤー。
「おい、カレン。アタシの金づる……客を持っていく気かい?」
「いま金づるって言いましたよね姉御!?」
「気のせい気のせい」
絶対に気のせいじゃなかった気がする……!
いや、俺自身は損をしているというわけでもないので構わないんだけど。
……しかし、宣伝のために武器を使ってくれ、か。
「見込んでもらったのはありがたいんですけど、持ち合わせが……もう四色刀もありますし」
カレンさんが作ったという”蛇鴉”は、パッと見ただけでもかなり性能の良い武器だ。
性能が良いということは、相応に高級品だろう。
そんな品を買えるほどの懐の余裕、今の俺には……。
「あ、ええんよええんよ、お代は。宣伝して貰うのにお金を取るわけにはいかんやろ?」
「え!? タダ!? このレベルの性能の武器を!?」
「そ、タダ。どう? 悪い話やないやろ?」
「なら断る理由はな――」
ゾクッと、刺すような姉御の視線を背中に感じた。
「まさかアタシの四色刀があるのにそいつの武器に乗り換えたりはしないだろう、カネツグ?」
「そ、それは……」
「気にしたらあかんよ、カネツグちゃん。より良い武器を使うのは当たり前やろ?」
正面からも「まさかウチがここまで言うとるのに”いらん”なんて言わんよね?」みたいなカレンさんの圧。
前門のはんなり、後門の姉御。
どっちを取っても相手を怒らせそう。
では実用面でと考えると、属性を使い分けられる四色刀は便利だし、普通に性能の良い蛇鴉も欲しいっちゃほしいしで、甲乙つけがたく。
こういう場合はどうすればいい?
ちらりと、助けを求めるように仲間たちの方を見るも、誰一人としてこっちに気づいていない。
アカツキは釣り竿を見るのに夢中だし、アルは銃の照準器を覗き込んでいるし、ペスカはよくわからない機械部品を手にとってあらゆる方向から眺めているし。
……アカツキ。
金色の脳筋騎士を見て、俺は解決策を思いつく。
「……二刀流! 四色刀と蛇鴉を二刀流で使って宣伝するということでどうでしょう!?」
「二刀流? アンタ、二刀流スキル持ってたのかい?」
「これから取ります!」
「これからかい! いや無理して両方を使わなくていいんだよ!?」
「うふふ、ええやないの、姉さん。やってくれるいうんならそれで。それに、一緒に使えばどっちがより優れた武器かもわかりやすいやろ?」
「それはそうかもしれないけどねぇ……」
「大丈夫っす姉御! 問題なくカタナ二刀流できる程度のSTRとDEXはありますし!」
武器を二刀流で扱うために必要なステータスは、まず武器二本分の重量を持てるだけのSTR、それと二刀流スキルを習得するためのDEX。
二刀流自体はSTRだけでもできるのだが、二刀流スキルがないと左右の武器の性能を十分に発揮できないのだ。
その点、俺のステータスなら問題ない。
比較的重量の軽い武器種であるカタナの二刀流ならギリ可能なSTR水準、DEXも二刀流スキルの習得条件を満たす数値。
あとは俺自身が二刀流での戦い方になれれば良し。
それでこの場が丸く収まるし、何より二刀流、カッコいいので機会があればやってみたかった。
誰も損をしない良い作戦だ。
「それじゃあ、はいこれ、死式刀・蛇鴉。大切にしたってな?」
「もちろん!」
カレンさんから蛇鴉を受け取る。
改めて確認すると、四色刀より全体的な性能が二周りほど高い。
耐久値などのパラメーターも上々。
何より色が良い、黒いので。
さて、二刀流をするなら鞘を左手に持つ今までのスタイルは不可能だ。
俺は四色刀を右腰に、新たに手に入れた蛇鴉を左腰に差す。
我ながら、いい感じではないだろうか。
「格好ええよぉ、カネツグちゃん」
「良いですよね、良いですよね二刀流……!」
「ほんま、片方が姉さんの作ったおもちゃとはいえ、とってもええ感じ。惚れてまいそう」
いいながら、しなっと、カレンさんが俺の体に寄りかかってきた。
細い指が俺の胸元を艶かしくなぞる。
彼女のあまりにも色っぽいその仕草に、俺は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
「か、カレンさん!?」
「うふふふふ、カネツグちゃんのアバター、なかなかウチの好みやし。カネツグちゃん自身もええ子やし。ほんまええ感じ――――あ痛っ!?」
と、姉御がカレンさんに拳骨を落とした。
カレンさんは頭を抑えてその場にうずくまる。
俺はカレンさんが離れてくれて安心したような、ガッカリしたような……。
「いい加減にしな、カレン。カネツグが困っているだろ」
「いたたたた……いかんなぁ、姉さん、暴力はいかんて。それにカネツグちゃん、そんなまんざらでもない顔しとったし。なぁ?」
「え!? い、いや俺は……」
いかん! このままだとむっつりスケベだと思われる!
クールなシノビでやってるのに!
しかし嫌だったと言うとカレンさんが傷つきそうだしどうすれば、と、焦っていたら、姉御が衝撃的な一言。
「騙されるんじゃないよカネツグ。こいつ、中身は男だよ」
へぇ、男なんだ、中身。
「………………………………は?」
「ついでに言うと、恥ずかしながらアタシの弟だ、こいつ。身内がすまないね、本当に。もっと言うとそいつの出身地、京都じゃないからね。京都弁もエセ。そとづら通りの京美人じゃないよ」
「あー、またそうやって人のリアルを勝手にバラすんやから姉さんはー」
ああ、”姉さん”って姉御的な意味で呼んでいたのではなく、マジのお姉さんってこと
……いや、え、確かにUNOの女性アバターの中身はほとんど男ですけど。
俺はカレンさんの姿をじっくり観察する。
美人すぎる外見は作り物だとして、そよ風に揺られる花のように色っぽい仕草は、とても中身が男だとは思えない。
「……え、マジっすか姉御? この中身、弟さん?」
「マジだよ。ねえ、カレン?」
「んもう、バラされたらしゃーないなぁ。そ、ウチの中身はこの人の弟。うふふ、改めてよろしゅうな、カネツグちゃん」
ふわっと立ち上がると、カレンさん――くん? カレン? は、にやぁと笑って握手を求めてくる。
呆然と握手に応じつつ、俺は思う。
そっか、男なのかぁ……。
性癖おかしくなりそう。




