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ネトゲのプレイヤーなんてだいたい野郎なんだよ!

 立派な滑走路を備える宇宙港など、まだR0には建設されていないらしい。


 宇宙船が着陸したのは、森のど真ん中にある開けた土地だった。


 俺たちを含め、この地を目指したプレイヤーたちがぞろぞろと船を降りていく。


 プレイヤーが森のど真ん中に放置されて途方に暮れないよう、船内アナウンスはとある目標を示してくれた。


 着陸地点から北に向かうと町があるので、まずはそちらで探索の準備を整えることをおすすめします、とのこと。


 そのアドバイス通りに、森の中の道を北へと向かって歩いていくプレイヤーたち。


 なお、全員下着姿である。



「下着姿の有象無象がぞろぞろと列を成すの、なかなか不気味な光景だな……」



 R0には外部からのアイテム持ち込みが不可。


 それは鎧などの装備も例外ではない。


 つまり、R0に到着した途端に全プレイヤーが装備を剥がれることになります。


 UNOでは装備を全て外してもアバターが全裸になったりはせず、見えたらR18な部位が隠れるよう下着姿になる。


 よってR0に到着すると同時、皆が平等に下着姿に。


 そしてひん剥かれたプレイヤーたちがまとまって同じ方向を目指し歩くので、俺が言葉にした通りの光景が展開されている。


 どうでもいいことだが、下着のバリエーションはやたら豊富だ。


 男性アバターはボクサーパンツ、ブリーフ、ふんどし。


 女性アバターなら見るからに下着って感じのアダルティなやつから、露出度の低いインナーウェアみたいなものまで。


 下着に関してはプレイヤーが好きなデザインのものを装着できるようになっている。


 そんなわけでこの場においては様々なアバター(女性率高め)の十人十色な下着姿をお楽しみ頂けるのだが、ここでちょっとしたデータの話を。


 UNOでは、男性が女性アバターを使ったり、逆に女性が男性アバターを使うことが可能である。


 なのでまず、女性アバターの中身が女性とは限らない。


 公式が行ったアンケートによると、プレイヤーの男女比は男性プレイヤーが8に対して女性プレイヤーが2の割合。


 一方、アバターの男女比は男性アバターが3、女性アバターが5、無性別アバターが2。


 プレイヤーの半数以上が男性だが、ゲーム内では半数のアバターが女性なのだ。


 よって、女性アバターのほとんどは中身が男である。


 また、女性アバターを使う女性プレイヤーは、アバターの下着に低露出度のものを選択する傾向があるという。


 つまり。


 いま北を目指して森を歩く一団の半分以上は女性アバターで、やたら露出度の高い下着を身に着けている者が多いのだが、そいつらほぼ間違いなく中身は男。



「そう考えると急に冷静になってきませんか?」


「いきなり何の話だい、カネツグ?」


「いや、中身が男の女性アバターが下着姿で森の中をゾロ歩く光景ってある種のホラーだよなと思って。……それにしても無性別アバターの、それも機人系となると下着姿が下着姿って感じしないな」



 隣を歩くエニグマの姿を見る。


 いつもとあんまり変わらない、金属骨格に機械の内臓、モニター顔のロボ。


 聞いた話では、胸の金属板に貼ってある黄色と黒のシマシマシールが下着扱いらしいのだが。



「ボクは直接戦闘系じゃないから防具をほとんど着けないもん、装備を剥がれてもいつも通りさ。これでも装甲がいつもよりちょっと減っているんだけどね?」


「そうなのか……」


「それよりボクはそっちの下着に関して問いたいね。なにそのデザイン」



 エニグマはなんともいえない表情の絵文字を顔に映しながら、俺の下半身を見る。



「なにと聞かれても、ご覧の通り皿に乗った豆腐――”冷や奴”の下に”Cool Guy”という筆文字が刻まれた、センスとユーモアに溢れた超クールなパンツであるとしか言えないのだが」


「ださっ!」


「なんで!? 超クールでハイセンスじゃん!? 冷や奴と書いてクールガイだぞ!?」


「ダジャレじゃん!」


「ユーモア!」



 センスの違いから足を止めぎゃんぎゃんと口論する俺たち。


 他のプレイヤーたちは歩き続けているので、



「あれ?」


「あっ」



 必然的に置いていかれてしまい、気づけばその場に二人きり。


 もしエネミーと遭遇した時、集団で動けば他プレイヤーと協力して戦える。


 しかし二人きり、装備もなしの現状で敵に出くわしたら……?


 新たなワールドについて早々、死にたくない。



「やべぇ急いで追いかけるぞエニグマ!」


「オーケー! あとでパンツ履き替えようね!」


「やだ!」



 俺たちが慌てて走り出そうとした、その瞬間。



「ぐわああああぁぁぁ!?」



 先に歩いていった一団の方から、悲鳴が聞こえてきた。



「うわびっくりした!? なんだなんだ!?」


「なんかあったみたいだね」



 不穏な雰囲気に追いかけるのを躊躇していると、先行したプレイヤーたちが引き返してきた。


 彼らは一様に恐怖の表情を浮かべ、来た道を逆走していく。


 何かから逃げているようだ。



「なにがあった?」



 俺は逃げ惑うプレイヤーの一人を呼び止めて問う。



「先行組の新規狩りだ! ちくしょうヤツら、これ以上ライバルが増えないようにしたいらしい!」


「新規狩り?」


「ここで待ってりゃわかるさ! 死ぬだろうけどな! 俺はもう行く! お前もさっさと逃げ――」


「ぐぅふふふふふぅ! 待たんか新参どもぉぅ!」


「うわぁ来たぁ!?」



 俺と会話していたプレイヤーが、その場に腰を抜かしてへたり込む。


 その視線の先には、追う者たちの姿があった。


 モヒカンの群れである。


 ある者はナイフを、ある者は斧を、ある者はハンドガンを手に。


 ある者は上半身裸で、ある者はトゲのついた肩パッドを着け、ある者は皮の鎧で守りを固め。


 そして全員、ヘアスタイルがモヒカンヘアー。


 彼らの先頭に立つ大男が、馬鹿でかい火炎放射器を構えながら叫ぶ。



「ぐぅふふぅ~……逃さんぞぉ~! 貴様らはこの俺モヒカンキングにぃ~! 我らギルド”グロリアス・フリューゲル”に狩り殺される運命なのだぁ~!」



 そいつが、俺から九十九式カグツチを奪っていった因縁の相手であるということすら忘れて。


 俺とエニグマ、そして逃げ惑っていた他のプレイヤーたちも、心を一つに叫ぶ。



「「「ギルド名ムダにかっけぇ!?」」」



 ”しねしね団”とかそんな名前で活動していてもおかしくないような集団が、自分たちのギルド名に設定して良い文字列ではない。


 ”グロリアス・フリューゲル”だぞ?


 イケメンの騎士団員とかが所属していそうな名前なのに、実際はいかついモヒカンの群れ。


 名が体を表していないにも限度がある。詐欺。


 と、あまりのネーミングに動揺していた俺の姿を見つけて、モヒカンキングがぐふふと笑う。



「むぅぅ~? きさまぁ、昨日も見たぞぉ? フロンティア・セブンでレア掘りをしていた無課金プレイヤーだなぁ~?」


「あ、はい、昨日はどうも」


「あ、いえいえ、こちらこそ」


「……じゃなくて! こんなところで何をしてるんだ、モヒカンキング!」



 ……思わずアニメの主人公みたいなちょっとカッコいい感じのセリフを吐いてしまった。


 言ってから思うが、何をしていると聞かれて答えるバカはいないだろう。



「ぐぅふふふぅ~! よかろう、教えてやるぅ~!」



 なんてノリがいいんだ、モヒカンキング……!

TIPS:オンラインゲームのプレイヤーの性別

一つ、オンラインゲームのプレイヤーは全体的に男性率が高い。

一つ、オンラインゲームでは現実の自分と違う性別のキャラで遊ぶことができる。


この二つの要素が合わさって、”中身が男性の女性キャラ”がたくさんいる世界が生み出される。

女性プレイヤーはそもそも数が少ないので”中身が女性の女性キャラ”は滅多にいないらしい。


この事実を忘れていると、オフ会などで対面した”聖天使☆ゆかにゃん”の中身が”黒田五郎(男・42歳)”だったりしてショックを受ける羽目になったりする。

気をつけよう。

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