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歩く情報漏洩。

 俺とアルが話を終えたちょうどその時、ペスカが戻ってきた。



「たっだいまー! ……二人とも、なんで握手してるの?」


「特に、意味は、ない」


「言うなれば、長期契約成立の証?」


「よくわがんにゃい。っていうかツキ姉とグマさんは?」


「二人とも、明日は学校の登校日だから早めに落ちて備えるってさ。BDRの優勝祝いはまた今度やろうだと」


「そっかー。っていうかツキ姉が登校日ならツグ兄も登校日じゃん。大丈夫?」


「大丈夫じゃなさそうだからログアウトしようと思ったんだが、かわいい妹のことを待ってやろうという兄の心配りですよ」


「ツグ兄……! やさしい! 好き!」


「俺も好きだぞ妹!」


「それはそれとしてウチは別に明日が登校日ってわけじゃないから夜ふかししてもオーケーなのでもうちょい遊んでくよ。一人で寂しくログアウトしてな!」


「そんなっ!?」



 言われてみれば中学生のペスカさん、俺と同じ高校に通っているわけではないので登校日も別。


 明日に備える必要はなく、早めにログアウトする理由もない。


 盲点だった。



「うぅ、わかったよ、それじゃお兄ちゃんは一人でログアウトしますよ。でも明日もどうせあま――アカツキが朝に起こし来るだろうから早く寝ないと辛いんだからね!」


「はいはい、おつかれー……と、言いたいところだが! その前にこいつを見ていきなツグ兄!」


「なんだよ!? 一人で寂しくログアウトしろと言ったり引き止めたり!?」



 ログアウト操作を中止してペスカを見れば、彼女はキーホルダーみたいなもの手にしていた。


 かつて俺がスーパー触手ちゃん撃破後に入手したものと似たデザインのそれは、



「二つ目の証か!?」


「イエス! ゴールド・シンボルだって。所持してるとLUCがほんのりアップ! ついでに魔王城のバリアを破る鍵の一つだそうです。やったね!」


「ああ、これでR0攻略にまた一歩近づいたぜ!」


「ふふーん、実は一歩どころか二歩は近づいているんですよこれがな!」


「うん?」


「いやね、ゴールド・シンボルを受け取る時にこの街の市長さんに会ったんだけどね。ちょっとした情報をもらちゃってさ」



 ペスカは、聞きたいー? と小悪魔っぽく笑う。


 その仕草で俺から聞きたーい! という言葉を引き出した後、仕方ねえなと勿体ぶりながらその情報を教えてくれた。



「それじゃあ教えてあげましょう。魔王の討伐を目指していた勇者さん? なんでもここに来た時には片腕を失っていたらしいんだよね。市長さんが何があったのか気になって聞いてみたところ、海で釣りをしてたら釣れちゃったバケモノに食われたとのこと」


「勇者……ギャンブルで負けてゴールド・シンボルを取り上げられてたダメっぽい人か。隻腕って部分はカッコいいんだけどな……」



 釣りをしていたら片腕を失ったという経緯が微妙に情けない。


 強敵との死闘とかじゃないんですかそこは。



「で、その勇者の腕がどうしたんだ?」


「勇者さんね、なんだか所持していた”証”の一つも片腕もろともバケモノに食べちゃったんだって。……そういう”ストーリー”を、二つ目の証を入手した直後にNPCがわざわざ教えてくれたんだもん、どういうことかわかるよね?」



 ペスカの言葉でピンと来た。


 しかし俺が答える前に、話を聞いていたアルが先に言ってしまう。



「次の証の、入手法に関する、ヒント。勇者の、片腕を食った、バケモノを、探せ、ということ」


「俺の推理力を披露して妹の尊敬を集めたかったのに!?」


「いやちょっとゲームやってたら誰でもわかるようなこの程度の話で推理力とか言われても。ねぇ、アルっち?」


「そうだな、コンブ」


「コンブって何!?」


「ミス。そうだね、ペスカちゃん」



 コンブが何を意味するのかマジでちょっと気になるのだが、そっちにツッコむと話が脱線しそうなので、あえてスルーしておく。



「バケモノか。話を聞く限り次に目指すべきは海だな」


「釣りをしていたら釣れちゃったバケモノ、ってことは、やっぱり釣るのかなぁ?」


「釣り系コンテンツはあんまりやったことないんだよな。……最初の証はホラーゲームみたいなダンジョンの最深部でボス討伐、次はレースゲームの優勝賞品、三つ目は釣りか。入手法がバラバラすぎる。これ、ソロプレイヤーだとかなり厳しいんじゃないか?」



 最初の証はホラー耐性がなければ入手が難しい。


 二つ目の証はレース系コンテンツが得意じゃないと手に入らず、挙げ句に三つ目は釣りときた。


 ゲーム性がバラバラな複数のコンテンツをクリアできないと証は集められず、魔王城には乗り込めないわけだが、ホラーもレースも釣りも大丈夫なんて万能選手はそういないだろう。


 課金アイテムの力でゴリ押しもできないし。



「複数人で遊ぶのが前提のオンラインゲームだし、ソロに厳しいのも仕方ないのかもねー」


「言われてみればそうかもしれん。ま、今の俺にはもう関係ないけどな!」


「ツグ兄がすごい自信だ!?」


「フッ! 今の俺には仲間がいるからな! 俺に出来ないことも誰かが得意だったりするだろう! ペスカ、釣りは得意か!?」


「水辺にあまりにも近すぎるのはちょっと」


「そうだった! アル!?」


「……釣り系コンテンツ、触ったこと、ない」


「…………あ、アカツキかエニグマができるかもしれないし大丈夫だ!」



 もしダメだったら釣りのできるメンバーを探すか、あるいは釣りマスタリーを鍛えるかだな……。



「ともかく、確かにR0攻略に二歩くらい近づく情報だった! えらいぞペスカ! えらいっ!」


「ふへへへ褒めろ褒めろ!」


「しかも二つ目の証を入手しないと得られない情報だからな! レア!」



 そう、ゴールド・シンボルの入手時に教えてもらえる”釣れるバケモノ”の情報は、今のところ俺たちだけしか知らないレア情報だ。


 R0の最速攻略を目指すなら、これは大きなアドバンテージである。


 もしや本当に狙えちゃうのではないだろうか、一億円。


 そんなレア情報を入手する立役者となったペスカは、それはもう本当に上機嫌。



「いやーもうマジでね、レース優勝したのもあってね、嬉しすぎて掲示板に書き込んじゃいましたよ」


「……掲示板?」


「えーと、これこれ」



 ペスカは自分のEタブレットの画面にゲーム内掲示板を表示させ、その書き込みとやらを俺たちに見せてくる。



《タイトル:BDR優勝したった!》

《ゴールド・シンボルゲット! やったね! 市長さんと一緒に記念撮影してきたっすわ!》



 書き込みに添付されているのは、ちょっと化粧の濃いお姉さん――ナイトベールの市長さんだろう――と一緒に撮った、ペスカのスクリーンショット画像。


 いい笑顔の画像の下にはさらに本文が続く。



《あとなんか三つ目の証、海で釣れるバケモノが飲み込んでるとのこと!》

《明日からは釣り三昧っすかねうひひ!》



 読んでいるだけで嬉しいのが伝わってくるハイテンションな文章だが、それはそれとして。



「これ、他のプレイヤーにも三つ目の証の取り方を教えちゃってませんか?」


「……あっ、言われてみればそうだね」



 情報アドバンテージ消失!



「こ、この歩く情報漏洩――――ッ!!」


「つい嬉しくて。ごめんぬ! てへっ!」


「かわいい! 許す!」



 俺たち兄妹の仲睦まじい姿を見て、アルが呆れた顔でため息を吐いていた。

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