将軍が将軍たる理由。
『レースも終盤! トップを独走するのはサムライジェネラル・シンノスケ! 愛馬の白米号も絶好調だ! っていうか本当に馬かアレ!? 何だあの速度!?』
街頭モニターには高架道路を疾走する白馬が映っていた。
このままだと将軍が一位になるのは間違いない。
その結末を変えるため、将軍を止めると言いはしました、俺。
「……成功するかなぁ、この作戦」
しかし、俺が思いついたのは、自分自身でも成功するか半信半疑な策だった。
将軍がエニグマに聞いた通りの人物なら成功するだろうが、この場で優勝を優先するお方だったら失敗する。
なにせ一億円へと繋がる勝利だ、まともな精神をしていたら間違いなく優勝を取るだろう。
……やっぱダメそう。
しかし、何もやらなければ負けるだけ。
ここに至るまでの仲間たちの苦労を無駄にはしたくない。
ダメで元々、やってみるか。
俺はカタナを抜刀し、ナイトベールの裏路地を駆け抜ける。
人通りが少ない道、助けなんて誰も来ないような場所。
そんな道を、一人の女性プレイヤーが歩いていた。
俺は心の中で謝罪する、巻き込むけどごめんね。
刃を輝かせながら、俺はその女性の目の前に立ち塞がった。
「へい姉ちゃん! 命が惜しけりゃ金目のものを置いてきな!」
「えっ!? なに!?」
「見ての通りの悪党さ!」
恐れおののく女性の首筋に、俺はカタナを突きつける。
「聞こえなかったか? 金目のもんを寄越せ!」
「い、いやああああああ!? 誰かー!」
女性の悲鳴が響き渡る。
しかしここは人通りのない裏路地。
叫んだところで誰も助けには来ないだろう。
それこそ、勧善懲悪の時代劇で悪党どもをばったばったと切り伏せるヒーローでもない限りは。
『――っと、どうしたことだぁ!? トップを走り続けていたシンノスケが、急に進路を変え高架道路を飛び降り……優勝争いから脱落ぅ!』
困惑する実況。
……俺もいま困惑してます。
まさか、
「待ていっ!」
振り返る。
白馬に乗った将軍がそこに居た。
射抜くような視線で、将軍は女性を襲う悪党を見据えている。
まさか、一億円よりも正義の味方ロールプレイを優先するなんて!?
「な、なんだてめえは!?」
「かようなめでたき祭りの夜に、闇夜に紛れての狼藉千万、恥を知れい! 貴様のような悪党、例え天が許しても、このシンノスケが許しはせん!」
思わずノリをあわせてしまった。
カッコいい。
超カッコいい。
ああいう名乗り、日常的に使ってみたいくらいに憧れる。
……いや、感動してる場合じゃない!
将軍を止めるという俺の目的自体はひとまず果たされた。
しかし、このままだとすぐさまレースに復帰されてしまうかもしれない。
後顧の憂いを断つため、将軍にはここで倒れてもらう。
ちょうど殿様とか斬ってみたいお年頃だったし!
「はっ! てめえがあのシンノスケか! 話は聞いてるぜ、よくも俺のかわいい手下をやってくれやがったな!」
なお手下とはアカツキのことを指す。
「下郎の名など覚えてはおらん」
「ほざきやがってぇ! 死ねぇぇい!」
俺は黒刃モードの四色刀で、将軍に真正面から斬りかかる。
狙うは首へのクリティカル。
その一撃は、並のプレイヤーでは反応不可能、最高にして最速の斬撃だった。
しかし、
「ふっ」
「んなぁ!?」
俺の攻撃を軽々と回避すると共に、将軍はカタナで神速の居合斬り。
恐るべき速度で振られた刃は、こちらの胴体を横一文字に斬り裂いた。
「がはっ!?」
一撃で俺はHPを失い、冷たい地面へと無様に転がった。
視界が暗闇に閉ざされる直前、将軍の勇ましい声が耳を打つ。
「成敗ッ!」
く、くそ、最後までカッコいいなこの将軍……!
時代劇のザコキャラみたいに成敗された俺は、そのまま死亡した。
まあ、やることはやった。
あとは任せるぜ、妹よ……!




