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将軍は将軍なので強い。

『ちょ、な……!? と、突如として立ち塞がった謎の金髪女騎士が、なんと最速で突っ走るRスターを大剣で一刀両断! 一撃でリタイアさせちまったぁ! なんちゅう筋力! なんたるゴリラ!』


「誰がゴリラだ!?」



 本当にうるさいわねあの実況。


 赤いマシンを上下真っ二つに両断した後、私はそのまま深く息を吐き、それから再び大剣を構える。


 前を見れば、何台ものマシンがこちらに向かって走ってきていた。


 ……一本じゃ間に合わないかな。


 私はインベントリを操作、もう一本の大剣を顕現させ左手に持つ。


 今まで持っていた大剣は右手で握り、二刀流に。


 直後、私の横を通り過ぎようとするマシンが二台。


 その二台それぞれに対し、左右の大剣を振るう。



「やあッ!」



 手応えあり。


 真っ二つになった二台のマシンは、高架道路の防音壁に突っ込み、爆発炎上。


 私の背後で炎が輝く。


 役目はまだ終わらない。


 私の仕事は道の封鎖だ。


 ようは、この道を通ろうとするマシンを片っ端から叩き斬る。


 現在、エニグマさんの作戦によりこの道以外のルートは通行不能。


 そして私がペスカちゃん以外の何者もこの先へ通さなければ、必然的に優勝するのは彼女となる。


 単純だ。


 問題があるとすれば、私の腕が二本しかないことだろう。


 さらに向かってくるマシン、今度は三台。


 右の大剣で一台を、左の大剣でもう一台を両断。


 それから急いで右手の大剣を構えなおそうとするが、間に合わない。


 マシンが一台、私の横を通り抜けていった。



「ちっ……!?」



 二本の腕では二本の大剣しか扱えず、同時に二台しか叩き斬れない。


 短時間に三台以上のマシンに接近されれば、討ちもらしがでるのは当たり前。


 無論、エニグマさんはそれも想定していた。


 どこか遠くで発砲音が鳴り響く。


 次の瞬間、私を突破したマシンが、なにかに殴られたかのように真横にふっ飛ばされた。


 そのマシンの胴体側面には大穴が空いている。


 アルの狙撃銃によって撃ち抜かれた痕だ。


 耳の通信機から、途切れがちな声がぽつぽつと聞こえてくる。



『こちら、アル。そっちの、討ちもらし、始末完了』


「ありがとう、アル」


『あんまり、数が多いと、狙撃しきれない、から、もっときばれ、イノピカ』


「イノピカ!?」


『ごめん、ミス……、頑張ってね、イノピカ、じゃなくて、アカツキ』


「イノピカって何!? あとでちょっと色々と話し合いましょうか!?」


『ひぃ。通信、終わり』



 逃げるように、アルは通信を終了させる。


 ……たぶん悪い子ではないのだろうけど、口がね。


 まあいい、今は目の前のことに集中しよう。


 つまり、私が取り逃がした相手はアルが狙撃で始末してくれるのだ。


 彼女の射撃の腕前を考えるとあんまり信用できないから、できるだけ討ちもらさないように、と、エニグマさんには言われている。


 私が斬り損ね、アルが狙撃を失敗した場合、最後はペスカちゃんのプレイヤースキル頼みだ。


 彼女の負担を減らすためにも、もっと敵を斬っておかないと。


 大剣を構え直す。


 敵のマシンを切り捨てる。


 私が逃した標的は、アルが狙撃でぶっ飛ばす。


 作戦通りにことが進む。


 次の選手が近づいてくる。


 ぱからっ、ぱからっ、という蹄の音と共に。


 ……蹄の音?


 見れば、侍っぽい格好をしたプレイヤーが、白馬に跨りコースを走っていた。


 そういえばいたわね、馬で参加している変な人。


 馬は車と並走するほどのスピードを出しており、確かにレースに参加できるだけの能力を持ってはいるようだが……将軍様みたいな白馬の侍が近代的な街の中を駆け抜ける姿はシュールすぎると思う。


 思わず笑ってしまいそうになるが、表情と気を引き締めて、仕事仕事。


 ここから先へは通しません。


 私の敵意に対し、侍は腰に差したカタナを抜く。


 左手で手綱を握り、右手でカタナを構える形。


 あれで私を斬るつもりだろうか?


 不可能よ、なぜなら私の装備している”アダマンタイトアーマー”は物理攻撃に対して絶対的な防御性能を誇る鉄壁の重装鎧。


 カタナでは、この鎧に傷一つつけられない。


 ならばと、鎧の防御が及ばない首から上を狙ってくるはず。


 当然、想定済み。


 そこが狙われるとわかっているから、私は頭部狙いの攻撃をほぼほぼ回避できるよう反射神経を鍛えてきた。


 真正面からの頭部狙いの攻撃ならば、容易くかわしてみせる。


 カネツグですら、私の首を刎ねることはできなかったのだから。


 迎撃準備は万全。


 あとは目標が私の射程に入るのを待って――――来た!



「えぇいッ!」



 侍ごと白馬を両断するために、私は二本の大剣を勢いよく振り下ろした。


 その瞬間、侍が手綱を引く。


 馬が素早く横へと跳んで、私の攻撃をひらりと避けた。


 ……今の馬の動き!?


 いやゲームだからありえないわけではないけれど!?


 驚いている間に、侍は愛馬と共に私に肉薄。



「成敗ッ」



 すれ違う瞬間、白刃が煌めいた。


 侍のカタナが狙ったのは、私の鎧の関節部。


 狙うのが難しいわずかな隙間に対し、侍は驚くほど正確な斬撃を打ち込んできた。


 一瞬のうちに、私の上半身に複数のダメージ判定が発生する。


 鎧を抜かれれば、私の防御力は極めて低い。


 HPが一瞬で0になる。



「……う、そ」



 やられた。


 身体に力が入らない。


 膝をつき、大剣を取り落し、私はその場に崩れ落ちた。


 背後、馬の蹄の音が遠くなっていく。


 ごめん、みんな、ペスカちゃん……。

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