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ドロイドドンドコ。

『おおっとどうしたぁ!? 優勝候補グリーンインフェルノ、スタート直後に防音壁に激突! 爆発炎上リタイアだァ!』



 実況がやかましく状況を説明するのとほぼ同時。



『エニグマ、予定通り目標をリタイアさせたぞ』



 カネツグが第一目標を撃破したと通信で報告してきた。


 さすが、と、ボクはフレンドの戦果を称賛する。



「いいね! さすがはボクのフレンド! この後は作戦通り、他の要注意マシンの操縦者も暗殺して可能な限りリタイアさせていって!」


『任せろ! ……っつっても走っているマシンに飛び乗るの結構おっかないんですが!』


「キミならできるよたぶん!」


『たぶん!? ちっ、しょうがねえな! やったらぁッ!』



 口ではたぶんと言ったけど、やってくれると信じてるからね。


 いまボクは12基のドローンアイを街のあちこちに浮かべている。


 手にしたEタブレットはそれぞれが送ってくる映像を12分割画面で同時に映し出しているのだが、そのうち一つはカネツグの動きを追っていた。


 高架道路上、夜闇に紛れるよう駆け回りつつ、高速で走るマシンにうまい具合に飛び乗って、運転席へとカタナを突き立てる。


 その暗殺行為でライバル、特に”攻撃型”の敵を減らすのがカネツグの役割だ。


 どんなマシンも――それこそ周囲の攻撃をものともせず、近寄る者を全て灰に変えるような重装甲重火力のマシンですらも、その操縦者はただのプレイヤー。


 中身だけなら簡単に殺せる、マシンを破壊するほどの攻撃力は必要ない。


 必要なのはマシンにうまく飛び乗る機動力のみ、よってこの役目はカネツグが適任。


 カネツグがその機動力で重装甲マシンに飛び乗り操縦者を暗殺、一方でスナイパーが高速で走り回る軽装甲のスピードマシンを狙撃、というのが理想的な連携だが、アルの射撃精度に後者を要求するのは酷というものだろう。


 とりあえずは序盤に攻撃型のマシンを減らし、ペスカちゃんが被弾してリタイアしてしまう可能性を減らす。


 どんなに早くてもゴールできなければ勝てないのだから。


 ペスカちゃんには外野や攻撃型マシンの標的にならないよう、最初は目立たぬ後ろの方へと言っておいた。


 ドローンアイからの映像で確認すれば、彼女はちゃんと後方グループに紛れて走っている。


 よしよし。


 さて、次の作戦に取り掛かろう。


 ボクは自らのスキルを発動させる。



「スキル発動、スーサイド・ドロイド・アセンブル」



 後方で、バチバチという電光の音と、ガシャガシャと機械が組み上がっていく音が鳴る。


 いま後ろを見れば、一体の人型機械が顕現する瞬間を確認できるだろう。


 ボクのアバターと似たような外見の機械系ミニオンだ。


 ボクの指示通りに動く使い捨ての手駒。


 その戦力は仲間たちに遠く及ばないが――、



「さらに、スキル発動、スーサイド・ドロイド・アセンブル、以下連続でスキルを発動……」



 ミニオンの長所は数を多く用意できるところ。


 召喚コストとなるアイテムの在庫がインベントリ内にある限り、そしてプレイヤーごとの同時召喚数の上限に引っかからない限り、同時に何体でも呼び出して使役できる。


 一体の戦力がプレイヤーアバターの10分の1程度なら、10体を揃えればプレイヤー一人と同等だ。


 ボクの現在のスキルでは、一度に召喚できるミニオンの数は50体。


 すでに12体分の枠をドローンアイのために使用し、8枠は別のミニオンのために割いているので、残るは30枠――30体のミニオンしか呼び出せない。


 その全てを使い、”スーサイド・ドロイド”というミニオンを召喚。


 スキルが発動するたび、ボクの背後で次々と人型機械が組み上がっていき、やがて30体のドロイド軍団が誕生する。


 ボクはくるりと振り返り、忠実なる手駒たちに命令を出した。



「オーダー! 1番から10番はJ3地点、11番から20番はH6地点、21番から30番はI7地点へ集結! GO!」



 ナイトベールのマップを元に、座標で移動先を指示。


 ドロイドたちは指示に従い、整然と移動を開始。


 陸上選手のように綺麗なフォームで走り、機械の脚力で跳躍し障害物を乗り越える。


 できる限りの最短ルートを通って目標へと向かうドロイドたちを見送った後、ボクは再びEタブレットの画面に視線を戻す。


 BDRは、ナイトベール内に張り巡らされた高架道路をサーキットとし、東端部をスタート、西端部をゴールとして設定したレースである。


 スタートからゴールまでのルートは明確に指定されておらず、なんなら空を飛んでも良い。


 まあ空を飛ぶとほぼ確実に外野の狙撃で撃ち落とされるか、密集したビル群を避けきれず建造物に突っ込んでリタイアする羽目になるので、実質的に飛行系マシンでのゴールは不可能なのだが。


 高架道路上を走る場合、スタート地点からゴール地点に辿り着くまでのルートは大きく分けて四つ。


 移動距離のもっとも短い最短ルートをA、次点をB、C、もっとも遠回りになる南のルートをDとしよう。


 優勝を目指す場合、普通なら最短のAルートを走るのが最適解だ。


 これは誰でもわかること、だから選手のほとんどはAルートを目指すし、その走りを妨害するため多くの外野もAルート周辺に陣取りマシンを待ち構える。


 だからもっともマシンが密集し、かつ外野からの攻撃が激しいのもAルート。


 最近ではそんなAルートを通ってゴールするのを不可能と考え、次点のBルートやCルートを通る選手も増えてきている。


 それを想定し、BとCに陣取る外野も増加傾向。


 しかし、Dルートを走る者は少ない。


 ライバルのマシン、外野からの攻撃、共に少なく走りやすいが、それを差し引いても遠回りすぎるのだ。


 最速でゴールに飛び込むという優勝条件が達成しにくい。


 さらに、ゴール地点は共通、ゴール周辺には結構な数の外野が待機している。


 なのでDルートを通っても最終的には外野からの攻撃に晒されてしまう。


 メリットをデメリットが上回っているから、Dルートを選ぶのは悪手。


 だが、ボクがペスカちゃんに指示した道はDルートである。


 メリットをデメリットが上回っている?


 ならば、そのデメリットの一つを潰してしまえばいいのさ。

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