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たまーに活躍する男。

『うおっまぶしっ!? なんだなんだぁ!? スタート地点に光が……これは……閃光弾による妨害かぁ!?』



 実況の声を聞き、なるほど、と、俺は閃光弾をばら撒いたヤツの考えに感心した。


 BDRでは、まずスタートを切ることが難しい。


 レースが始まる瞬間、全てのマシンが静止しており、かつスタート地点に密集しているという状況は、選手に攻撃を仕掛けようとする外野にとって非常に都合が良い。


 止まっている目標は狙撃しやすく、密集しているマシンは爆撃で複数台を吹っ飛ばせる。


 選手の数を減らすにもっとも適したタイミング。


 だからBDRがスタートする瞬間、スタート地点には外野プレイヤーから激しい攻撃が浴びせられる。


 生き残るために必要なのは運か、あるいは全ての攻撃を受け止める防御性能。


 そう、この俺”サージェント・スミス”のマシン、タンクタイプビークル”グリーンインフェルノ”のような重装甲があれば、周囲の蚊の刺すような攻撃など脅威ではなく、小細工を弄する必要もないのだ。


 しかし、火力と防御力よりもスピードでこの戦いに勝とうとするプレイヤーの場合はそうもいかない。


 速さを求めて軽量化されたマシンでは攻撃に耐えきれず、運が悪ければ外野の攻撃で即リタイア。


 無事にスタートするためには祈るしかない、普通なら。


 だが、スタートの瞬間に閃光弾を炸裂させ、視界を撹乱するとどうなるか?


 スタート地点には外野連中が蹴落としたいライバル選手と共に、外野連中が優勝させたい仲間の選手もいる。


 視界が塞がれた状態で攻撃を強行すれば、その仲間を巻き込んでしまうかもしれない。


 だから外野は攻撃を躊躇する。


 レースを妨害しようとする外野に対しての妨害。


 また、閃光弾で視界を塞がれるのは選手の方も同じで、強烈な閃光は彼らのスタートも一瞬だけ遅らせることができる。


 スタートの瞬間に閃光弾が炸裂すると予め知っている仲間以外の選手に対する妨害。


 非殺傷のアイテム一つで、すべての敵を牽制できるのだ。


 小賢しい、よく考えたと褒めてやりたい。


 だが無意味だ。


 なぜならば俺はファッションのためサングラスをかけている。


 黒いレンズが光を遮ってくれるので、閃光弾の輝きなど無意味なんだよ!


 俺は足元のアクセルを踏み込んで、愛車を発進させた。


 同時、手元のコンソールを操作。


 グリーンインフェルノは走り出すと同時、前に居たマシンをキャタピラで踏み潰して圧砕し、周囲に居たマシンをミサイルの雨で爆砕する。


 さらに加速、一気にトップスピードへ。


 こいつに積んであるエンジンは超高性能なレアパーツ。


 その超出力が、鈍重そうな外見に見合わぬスピードをグリーンインフェルノに与えてくれる。


 さすがにスピード特化のレース用マシンほど早くはないが、もし俺の前を走ろうものなら主砲の一撃で粉微塵。


 コツコツとギャンブルコンテンツで稼いだ金を全額突っ込んで強化した愛車だ。


 こいつの力があれば、今日こそ勝てる。


 思わず、口の端をニヤリと吊り上げてしまった。


 俺は今、この世界でもっとも一億円に近づいているプレイヤーだ――!


 と、頭上で変な音がした。


 上からの攻撃でも受けたのかと、ちらりと操縦席の天井を仰ぎ見る。


 赤く赤熱した刃が天井版を突き破り、金属装甲を豆腐のように切断しているところだった。



「なんだ!?」



 ちょうど俺が驚いた直後、天井版が四角く切り取られ、密閉されていた操縦席の天井に穴が開く。


 身軽そうな格好をした男性アバターが、カタナを片手にこちらを覗き込んでいる。


 目があった



「あっ、どうもこんばんわ」


「あっ、はい。……じゃない! 何者だキサマ!? どうやってそこに!?」



 言ってから、そんなことを聞かれてペラペラと話すバカはいないか、と思い直す。



「フフフッ、よくぞ聞いてくれました……ではまず名前から教えてやろう! 俺の名はカネツグ! お前の爆走を止めに来た男さ!」



 あ、こいつバカだ。


 カネツグと名乗ったそいつは、顔半分を手で覆う変なポーズを取りながら、ご丁寧に解説し始める。


 その隙に、俺はインベントリを操作、護身用の銃をこっそり手の中へ。



「どうやってこのマシンの上に? フフフ、簡単なこと。フラッシュ・グレネードの光で全員の視界が塞がり攻撃が止まっている隙をついて、ビルの上からぴょいっとジャンプし飛び乗ったのさ! ……予想以上にこの戦車が動き出すの早くてびっくりしたけど運転手がサングラスしてたらそりゃフラッシュ・グレネード効果ねえわな!」


「解説ご苦労! 死ね!」



 ノリノリで解説しているカネツグの顔面に銃口を向け、引き金を引いた。


 弾丸が発射される。


 俺は命中を確信していたが、そうはならなかった。


 カネツグはカタナを高速で抜刀、なんと飛来する弾丸を切り払い、攻撃を防いだのだ。



「馬鹿な!? この至近距離で!?」


「フフフフフ、これぞUNOプレイヤー100万人のうち3000人ほどしかできるヤツのいないと言われている神技・弾丸斬り! 今日の俺は妹の勝利ためにちょっぴり本気! 弾丸くらいじゃ止まらんぜ!」


「意外と使えるやつ多いよな」


「……うん。頑張って練習して習得したけど、できる人がわりといてガッカリしたよ。いやそれはともかく!」



 黒い刃が煌めいた。


 俺の手にした拳銃が両断される。


 ……のみならず、俺の首に熱い感覚。


 斬られたと、気づいた時にはもう遅く。



「攻撃型マシンの早期撃破は完走成功率を高めるための絶対条件! サージェント・スミス! 恨みはないがおさらばだ!」



 カネツグが車体から飛び降り、俺の視界から姿を消した。


 HPが0になり、力の抜けた俺の身体では、それを追うことはできない。


 操縦者を失ったグリーンインフェルノはでたらめに蛇行し始める。


 いずれ壁にでも激突し、爆発するだろう。


 ……ごめんな、グリーンインフェルノ。


 今日もお前を優勝させてやれなかった。

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