表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/101

全選手入場ってやつ?

 電灯の明かりできらびやかに輝く街の中には、高架道路が血管のように張り巡らされている。


 その東端部――これより始まるデスレースのスタート地点には、400人を越える出場選手たちが、自らの乗り物と共に待機していた。


 ある者はバイクに跨り、ある者は車のハンドルに手を添え、ある者は馬の手綱を握り――姿も愛車もバラバラの彼らだが、その目的は同じ。


 バーン・デッド・レーシングでの優勝、賞品である”証”の入手。


 証の入手はR0の攻略を進めるために必須。


 ゆえに、このサーキットは一億円へと続く道でもあるのだ。


 俺たちじゃ一億円までは取れないと思うけど、しかし、このレースに優勝することは不可能ではない。


 むしろ、必ず勝てるという心持ちで、俺はレースのスタート地点を付近のビルから見下ろしている。


 エニグマの提案した戦略は陰湿……もとい的確だった。


 ”ルール無用”というルールに則った必勝の策。


 あいつの想定通りに事が運べば、ゴールに最初に飛び込むのは間違いなく我が妹である。


 俺は通信機を使い、遙か下方のスタート地点にいる彼女に声をかけた。



「ペスカ、そっちは問題ないか?」



 少しだけ、震えた声が返ってくる。



『問題ないない。……ちょっと緊張してるけど』


「そりゃ誰だって緊張するさ、この雰囲気じゃ」


『まあ、ね。ツグ兄、ウチ、勝てると思う?』


「妹の勝利を信じない兄はいないぞ」


『そっか。そうだね。しょうがない、兄の信頼に応えてやるか!』


「そうしてくれ。俺たちもサポートするからさ。なあ、みんな?」



 俺が呼びかけると、それぞれ別の地点に待機している仲間たちの声が、すぐに通信機から聞こえてきた。



『その通りよ、ペスカちゃん。あなたの道は私が切り開くわ』


『そうそう。作戦通りのルートを通って、前だけ見ていればオッケーだよ』


『勝てる、に、決まってんだろ。……ミス、勝てます、きっと』


「……とのことだ。安心しろ」


『あいよ! 諸々はみんなに任せて、その他大勢にウチの華麗な走りを見せちゃるぜ!』



 意気揚々と答えるペスカ。


 その声からは、緊張の色が消えていた。


 これで彼女は100%の力を発揮できるだろう。


 できることはやった、あとはレース開始を待つのみ。


 と、いつかも聞いた実況の声が響き渡る。



『紳士も淑女も子供も大人も悪党どももこんばんわ! 今宵もスタートの時が迫るナイトベール名物、バーン・デッド・レーシングゥ! 本日の実況もこの俺! 生きる騒音公害、DJノイズでよろしくぅ!』



 相変わらずうるせえなこの実況。



『さてさて今日に至るまでいまだ完走者ゼロのこのレース、今日こそ一人くらいゴールしてほしいところですね解説の俺! そうですね実況の俺! なお本日の参加選手は588人で過去最多となっておりまーす。それじゃあ注目選手を紹介していくぜ! まずぅ――』



 実況に合わせて、町中の街頭モニタの映像が切り替わる。


 そこに大きく映し出されるのは、砲身をキラリと輝かせる迷彩柄の戦車。



『暴走タンク、グリーンインフェルノ! ドライバーはサージェント・スミス! 陸上戦艦用の高出力エンジンをぶち込んだ魔改造戦車をアクセル全開でかっ飛ばし、体当たりと砲撃で周囲のマシンを次々と灰に変えていく問題児! 未だこのレースが完走者0なの3割くらいはこいつのせいだッ!』



 そいつは、過去のレース映像からエニグマが要注意と判定した選手の一人だ。


 レースの勝利よりもレース中の撃墜スコアを優先している節すらあるという、とにかく攻撃的な選手。


 愛車のグリーンインフェルノは砲身以外にも無数のミサイルランチャーやマシンガンが搭載されており、それらを全方位に乱射しながら走り回るのだから、周囲からすればたまったものではない。


 その攻撃に巻き込まれれば、ペスカのバイクなど一瞬で葬り去られてしまうだろう。


 

『続いて目を引く赤いマシン! サーキットの赤い流星、Rスター! ハンドルを握るのは貴公子レオナルド!』



 再び切り替わった街頭モニタに映し出されるのは赤色のスポーツカー。


 運転席には金髪のイケメンが座っている。



『過去のレースを見てきたものなら誰もが知ってるその速さ! とにかく速い! 以上! もっとも優勝に近い男の異名は伊達じゃないぞッ!』



 エニグマ曰く、要注意その2。


 攻撃力で危険な相手がグリーンインフェルノなら、Rスターは純粋なレーサーとして危険な相手だという。


 実況の言った通り、とにかく速い。


 ただ速いだけではなく運転技術も一流。


 妨害なしのレースならばとっくに表彰台の頂点に立っているであろう男は、スピードの勝負においてペスカの強力なライバルとなる。



『そして忘れちゃいけないこの男! サムライジェネラル・シンノスケ! 今日も愛馬の白米号が荒ぶっておいでだ!』



 次にクローズアップされたのは、白馬に跨った着物のお侍。


 威風堂々たる騎乗姿は一国を統治する将軍の如き威厳を感じさせる。


 実はわりと有名なプレイヤーらしい。


 ”戦闘中に傷を受けたことがない”とか”グッとカタナを構えただけで敵が平伏した”とか真偽不明の逸話を複数持っており、それに違わぬ実力者。


 プレイヤーが独自に行っているUNO最強プレイヤーランキングにおいて常に上位10位にいる”暴れん坊なショーグン”とは彼のことなんだとか。


 ちなみに、UNOの上位10人とかマジで人間卒業レベルの強さをしている。


 そんなショーグン様だが、エニグマによると、この人は大丈夫だろう、とのこと。


 彼の愛車、もとい愛馬は、確かにその辺の車やバイクよりよっぽど速いが、しかしRスターほどのスピードは出せない。


 武器は腰に差した刀のみ、その攻撃力や射程はグリーンインフェルノに遠く及ばない。


 何より、そういうロールプレイなのか、彼は困っている人の声を聞けばレースを放棄してそちらに行ってしまうんだとか。


 何度もゴール直前まで行っているが、そのたびに人助けのためリタイアしているらしい。


 勝ちよりも美学を優先するタイプ、脅威ではないと、エニグマは言っていた。


 ……それはともかく、キャラが濃すぎませんかこの人。


 車両がメインのレースに馬ですよ。


 たしかに自分の美学を優先している。


 個人的には嫌いじゃない、そういうの。



『まだまだいくぜッ、次に紹介するのはこいつだァ――ッ!』



 以降も、実況が今までのレースで活躍した選手たちをピックアップしていく。


 レース開始直前まで続く紹介に、ペスカの名はあがらない。


 当然だ、あいつは今回がBDR初参加。


 そして、初参加にして優勝をかっさらう女だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ