違いのわかる女
何事にも終わりはある。
それはスクアロ強化のための素材集めの日々だって同じこと。
俺がうっかり死亡しアカツキが迷子になりアルが射撃を外しエニグマがその様子を見ておかしそうに笑う激闘の日々の果て、ついに、
「――よっし! できた! これがスクアロJ9の本来の姿でっす!」
ペスカの愛車が完璧な状態となった。
その外見は、
「……変わってないな、見た目」
「変わってないわね」
「前とおんなじだねぇ」
「変化が、ない」
俺たちが口を揃えた通り、前とまったく変わっていない。
完成した感がまったくなかった。
俺たちのガッカリな感想を聞いて、ペスカが唇を尖らせる。
「同じじゃないですー! 色々と変わってるんですー! というわけでウチの愛車の歴史を知ってもらうためー、このようなものを用意しましたー」
ペスカがタブレットPC型のアイテム――青色のEタブレットを取り出し、その画面を俺たちに見せてくる。
表示されていた画像は、魚類のような流線型のボディを持つ青色のバイク。
「これが最初のスクアロ」
ペスカがEタブレットを操作、次の画像を表示。
表示されたのは、魚類のような流線型のボディを持つ青色のバイク。
「これが改造した後のスクアロV3」
また次の画像、魚類のような流線型のボディを持つ青色のバイク。
「これがさらに改造したスクアロS1」
次。
魚類のような流線型のボディを持つ青色のバイク。
「スクアロRX」
次。
魚類のような流線型のボディを持つ青色のバイク……。
「スクアロ555」
次。
魚以下略。
「これがスクアロWで……」
「全部同じじゃねえか!!」
俺のツッコミに、ペスカはこれだから素人は、みたいな見下した表情を返す。
「ぜんぜん違うよ? スクアロV3はボディの側面に白いラインが入ってるの。S1はハンドルがちょっと大きくて、RXはこっちに黒いステッカーが……」
「詳しく解説されても誤差レベルの違いなんですけど!?」
「ハッ! そういうとこ無頓着だからツグ兄はダメなんだよ。ツキ姉なら違いがわかるよね? 今までのスクアロJ9と完成したスクアロJ9の差が」
「えっ!? 私!?」
急に話を振られて、アカツキはしばし目を泳がせた後、
「……え、ええ、わかるわ。い、色がね。ちょっと青色が濃くなっているわね」
「おまえ適当に言ってるだろ」
「さすがツキ姉! 大当たり! そうです、未完成のスクアロJ9と比べて完成版のスクアロJ9はボディカラーの青が濃いのです!」
「うそ、あたった!?」
「当てた本人が誰よりも驚いていますけど?」
「ツキ姉を見習って、ツグ兄も違いのわかる大人になりなよー?」
小馬鹿にした顔で俺の肩をぽんぽんと叩くペスカ。
変なマウントのとり方をしてきやがって……!
「ともかくこれでウチは準備万端! いつでもいけるよ」
「準備……? 何の準備だったかしら……?」
ペスカのセリフで、アカツキが小首をかしげた。
「いや、BDRに勝って二つ目の証を手に入れるために今まで色々と……」
「………………あっ。ええ、そうね。わかっているわ。BDRに勝つためよね、全て」
「お前、忘れてただろ」
「忘れてないわ」
「忘れてた」
「忘れてないわ」
「忘れてた」
「忘れてないわ」
「忘れてない」
「忘れてたわ……あっ!?」
「やーいやーい、ひっかかったー」
「滅べ!!」
「痛い痛い」
アカツキが俺の頭をガシッと掴み、アイアンクローをかましてきた。
STR極振りの腕力でHPがどんどん削られる。
そんな俺を誰も助けようとはせず、エニグマによって話が先へと進められた。
「それじゃペスカちゃんの準備はオッケーってことで、明日の夜のBDRにエントリーでいいかな?」
「ウチはオッケー」
「問題、ない」
「異論はないわ」
「俺もそれで大丈夫だ痛い痛い割れる割れる」
「あいあい。それじゃ、当日の作戦について説明するよ。えーと、まず――」




