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ネトゲでのキャラビルド、悩みますよねぇ~?

 フレンドリストで所在地を確認したところ、仲間たちは岩肌丸出しの荒々しい山岳地帯で狩りを行っているらしい。


 それを追いかけるとなると山登りをする必要があるわけで――すげぇ疲れる! 精神的に!


 行動範囲が広がって、ひたすら徒歩移動もキツくなってきた。


 移動手段のこと、もうちょい考えた方が良さそうだな。


 思案しつつも黙々と足を動かしていたら、エニグマの姿が見えた。



「おーい」


「あ、カネツグ。落下耐性習得おつかれー」


「しばらく高いところには登りたくないです……」


「だろうねぇ……あれ? 武器を変えた?」



 エニグマは、俺が左手に携える黒いカタナを見て首を傾げた。



「ふふふ、まあ、な。その名も四色刀ししきとう。このカタナの恐るべき性能はいずれご覧に入れよう……!」


「絶対に変な武器を買ってきたなって気がしてるんだけど。……っと、アル、六時方向からロックビートルが接近中。狙撃よろしく」


『ん』



 俺の新たな武器に関してそれ以上は聞かず、エニグマは手に持つピンク色のタブレットPCのような端末に視線を戻す。


 それは”Eタブレット”というアイテムだ。


 メニューウィンドウとして使ったり、ドローンアイから送られてきた映像を映したりと、ゲームプレイを補助する様々な機能が詰め込まれた便利な一品。


 店で普通に売っており入手は難しくなく、値段もそれほど高くはない。


 それでいて有用なので、愛用するプレイヤーのもっとも多いアイテムの一つと言えるだろう。


 エニグマはそのEタブレットの画面を確認しつつ、通信機で遠隔地の仲間たちに指示を出しているようだ。


 横から端末を覗き込んで見れば、戦闘中の仲間たちを上空から見下ろす映像。


 岩のような甲殻で身を守る巨大カブトムシに対し、アルが狙撃銃を向けている。


 あ、初弾を外した。



「あのデカくて遅いターゲットを相手に狙撃を外すのか……」


「彼女、本当に驚くほど射撃が下手だねえ。親近感を感じるよ。あ、ペスカちゃん。二時方向からソフトシェル・ロックビートル。適当に蹴散らしといて」


『任せなさーい!』



 画面内、ペスカが愛車を急発進させる。


 加速し、勢いをつけ、付近にあった凹凸おうとつをジャンプ台代わりに大ジャンプ。


 スクアロJ9の青いボディが宙を舞う。


 そのまま中型の敵甲虫の頭部に向かって放物線を描きながら降下、高速回転する前輪を押し付けてタイヤキック。


 脱皮したてで殻が柔らかいという設定を持つエネミーは、バイクの前輪による一撃で頭部をえぐられる。


 愛車と共に敵の頭の上に立ったペスカはにやぁっと笑い、左手を真下に向けた。



『スキル発動! サンダーボルトォ!』



 その言葉で、ペスカが記憶していたらしい魔法系のスキルが起動する。


 ライダースーツの手袋に覆われた左手で、青い雷弾が渦巻く。


 輝く雷弾は掌を銃口として、それが向けられた先へと発射される。


 射線上には傷ついた敵の頭。


 着弾、感電。


 雷に焼かれたソフトシェル・ロックビートルは、全身から黒煙を吹いてその場に崩れ落ちた。


 ぴょんっと、ペスカは体重移動で愛車と共に後方へと跳び、見事に地面に着地。



「我が妹ながらなんて器用な……なんていうんだっけ、凸凹でこぼこしたコースを飛んだり跳ねたりする、あの、えと、も、もり、もり……」


「モトクロス?」


「それ! ……モトクロスやってるみたいにバイクで器用に動き回るよな、あいつ」


「あれだけのライディングテクを持ってるプレイヤー、そういないだろうね。すごいと思うよ、キミの妹」


「そうだろうそうだろう。もっと褒めろ俺の妹を。……にしても、魔法を覚えてたんだな、あいつ」


「メカニックスキルは習得に必要な要求ステがDEXとINTだからね。低ランクの魔法系スキルとなら両立するのは難しくないよ」



 俺は魔法系スキルを使わないので聞いた話になるのだが、UNOにおいて魔法使いをやるのに必要なステータスはまず賢さ――INTらしい。


 ある程度のINTがあると”魔術書”なるアイテムを利用して魔法系スキルを習得できるようになる。


 そのスキルを発動させることで炎を出したり雷を飛ばしたりするのが、UNOでの”魔法”だ。


 魔法系スキルはタダで使用できるわけではなく、発動するにはコストとして”触媒”と呼ばれるアイテムを消費しなければならない。


 炎の魔法を使うなら炎の力が宿った灰、雷の魔法なら雷の力を閉じ込めた結晶などから力を引き出して、魔法を発動させている、ということらしい。


 わかりにくければ、触媒とは”魔法を撃つための弾丸”である、とでも思っておけば良いだろう。


 無論、手持ちの触媒を使い切れば魔法が撃てなくなってしまうので、できれば大量に持ち歩きたいところ。


 しかしここにゲームシステムによる制限がかかる。


 プレイヤーのインベントリには重量による所持制限があり、筋力が――STRが低いと多くの荷物を持ち歩けないのだ。


 なので魔法使いといえどSTRを強化し筋肉を鍛えねばならず、しかしSTRに振りすぎてINTが疎かになると覚えられる魔法の種類が減る。


 どころか、低INTはスキル記憶枠の減少という事態を招いてしまう。


 魔法は一種類につきスキル記憶枠を一つ消費するので、INTが低いと覚えておける魔法が少なくなるのだ。


 また、魔法の威力を強化する”マジックマスタリー”や”炎熱強化”といったスキルを習得しなければ、魔法での攻撃力も伸び悩んでしまう。


 強力な魔法を行使する魔法使いをやりたければ、高いINTでスキル記憶枠を増やすのは必須。


 ならばSTRとINTを集中的に強化すれば良いと思うかもしれないが、しかし器用さ――DEXが低いと、魔法が発動するまでにかかる時間が増えてしまう。


 VITがなければ最大HPが減り死にやすくなるし、AGIを捨てると移動速度が落ちて攻めるも逃げるも難しく、かといってLUCを捨てると敵からのアイテムやお金のドロップが減って金策が難しくなり、魔法のコストとなる触媒集めが……。


 つまるところ、どのステータスにも重要な役割があるので、魔法使いの皆さんもステ振りには頭を悩ませているんだとか。


 ところで、魔法とバイクを操るペスカのアバターはどんなステ振り・スキル構成なのか?


 いつの間にやら本人から話を聞いていたというエニグマによると、まずステータスはDEXとINTを優先。


 これはペスカが自分のマシンを自分で作る主義であることが関係しているらしい。


 アイテムクラフト系スキルの一種に、”メカニック”というものがある。


 名前の通り機械いじりに関する技能だ。


 これを習得して鍛えておくと、バイクや車のようなメカ系ビークルを自作可能になる。


 ペスカは自分専用のオリジナルマシンを作るため、まずこのメカニックスキルの習得と強化に必要なDEXとINTを伸ばしたのだ。


 そしてINTをあげたらスキル記憶枠に余裕が出来たので、そこにいくつかの魔法系スキルを詰め込み、かくしてマジカルライダー・ペスカ爆誕! ――とのこと。


 ちなみに、DEXとINTが高めというステータスはエニグマも同じ。


 ただエニグマの場合、メカニックスキルや魔法の代わりにミニオン関連のスキルを習得しているので、似たようなステータスながらもアバターの性能はまったくの別物である。


 別の例を出すと、脳筋のアカツキと大型狙撃銃を扱うアルファルドは、共にSTRを重点強化しているアバター。


 だが二人の戦い方は格闘戦と狙撃で似ても似つかない。


 ステータスの振り方、スキル構成、装備選択によって、様々な個性を持つアバターが生み出されるのがUNOの面白いところなのだ。


 ……そして課金アリだと全ステ最大の上に大量のスキルを習得しており格闘も魔法も射撃も自由自在、おまけに超性能の武器防具で固めた”万能無敵の究極アバター”が誕生しちゃったりするのがUNOの恐ろしいところ。


 よかった、R0が課金不可能ワールドで。



「……どうしたのさ、カネツグ。急に青くなって」


「いや、無課金で廃課金勢を相手にしようとしてたの、今にして思えばマジで無謀だったなって」


「何を今更。ま、ボクは無謀なことに一生懸命だったキミが好きだよ」


「サンキューマイフレンド。俺も肯定してくれるキミが好き」


「あはは」



 エニグマはけらけら笑ってから、再び仲間たちの指揮に意識を戻した。



「……ところでアカツキの姿が見えないんだが」


「迷子になってる」


「またかよ!?」

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