ねんがんの ユニークぶきを てにいれたぞ! →別にいらないです。
思わず叫んだ俺の感想を聞き、バサラの姉御は豪快に笑う。
「はっはっは、よく言われるよ。見た目のイメージと違うって」
そんな刀工っぽい見た目で、こんな和風な外観の店を持ってるのに、しかし売っているのは近代的な銃火器。
「もはや詐欺っすよ……」
「そ、そこまでがっかりしなくても。あくまで銃を並べてるのは趣味だよ。一応、カタナ系の武器も作ってるさ」
「ほんとにぃ?」
「ほんとほんと。というか、アタシはあらゆる武器を作っている。ソード、ランス、アックス、ハンマー、カタナ、ボウにガン、なんでもね。一番好きなのが銃ってだけさ」
言って、姉御は店の奥へと引っ込んでいき、しばらくするとたくさんの箱を抱えて戻ってくる。
姉御が床に並べた箱を開ければ、なるほど剣に槌に弓にと、様々な種類の武器。
それらには全て”BASARA”と、作者名を示す文字が刻印されていた。
「確かになんでも作っている……あれ? でも鍛冶師系の技能スキルって武器種ごとに別ですよね? 剣を作るには鍛冶マスタリーに加えて剣系製造のスキルが必要だし、銃を作るには銃系製造のスキルが……」
「全部習得して全部鍛えてる」
「すげぇ……」
「ま、特定の武器種一本に絞って鍛冶師のスキルを鍛えてる連中にゃ、さすがに品質で勝てないけどね。その辺はコストパフォーマンスとバリエーションで勝負さ」
確かに、店に並ぶ銃火器や、箱に収められていた刀剣類の価格は、武器ステータス画面で確認できる性能に対してなかなか手頃なお値段。
NPCが店売りしている武器と比べれば、性能は同程度でも価格が安い。
初心者や中級者がバランスの良い武器を求めているのなら、NPCよりもこちらで買った方がお得だろう。
姉御は、初心者中級者相手の、普通に繁盛しそうな商売をしているようだった。
「……売上を度外視でひたすら品質の良いカタナを打ち続ける頑固一徹職人肌の刀工みたいな雰囲気をしているのに……!」
「ははは、そこまで求道者プレイやる気にはなれないねぇ。……っと、そうだ。アンタに渡そうと思っていたものがあるんだ」
「え?」
ぽんと手を叩き、姉御は再び店の奥へ。
がしゃがしゃと何かを探す音を響かせつつ、声だけ飛ばしてくる。
「ほら、一ヶ月前、アンタのおかげで廃坑道を通れるようになったわけだからさ。そのお礼にと思って」
「俺もあの道を通りたかっただけだから、お礼をされるほどのことは」
「じゃ、いらないかい?」
「貰えるなら貰っときます」
「ははは、素直でよろしい。……あったあった、こいつだ」
姉御が戻ってくる。
その手には、一振りのカタナが握られていた。
「四色刀。この店で一番、アレなカタナさ」
アレってなに!?
困惑しつつも、バサラの姉御に手渡されたカタナ”四色刀”を、鞘から抜いて見定める。
四色刀という名前の割に、その色は鞘も柄も、どころか刀身までもが黒一色。
正直、カラーリングはかなり好みだが、
「なにが四色なんです?」
「柄にスイッチがついてるだろ? 四つ」
「あ、これですか?」
「それそれ。押してみな」
言われるがまま、俺はスイッチの一つを指で押す。
すると、刀身が赤く赤熱し始めた。
「うわ熱っ!?」
「そいつが第一の色、赤熱刀モード」
次のスイッチをオン。
刀身が青く輝き、電光を放つ。
「第二の色、青雷刀モード」
さらに、次のスイッチ。
刀身が白い霜に覆われていく。
「第三の色、白雪刀モード。そして最後のスイッチを押すと、元の黒刃刀モードに戻る」
言われた通りのスイッチを弄れば、カタナの刃は黒色に戻った。
バサラの姉御は得意げに笑う。
「これぞ四色刀。三種の属性付与のシステムを内蔵し、炎氷雷と物理的な斬撃という四つの属性を使い分けることができる特殊機巧刀さ!」
「か、かっけぇーッ!」
「だろう? アタシはこの手のロマン武器を作りたくて鍛冶師やっててねぇ……」
ボタン一つで刀が燃え、帯電し、凍りつく、素敵なギミックを備えるカタナ。
カッコ良すぎた。
男の子ならそりゃあ目を輝かせるに決まってる。
しかもこれなら斬撃が通じない敵には炎を付与して攻撃、炎が効かなければ雷を、と、様々な敵に一つの武器で対応できるのだ。
便利。
「い、いいんすか!? これ貰って!?」
「ああ、持ってきな。……どうせ売れないし」
「え?」
と、ボタンをカチカチとやっていたら、唐突に四色刀の刃がバキンと音を立て、粉々に砕け散った。
「え!? 壊れた!?」
「……属性付与ギミックを発動させてるだけで武器の耐久値が減少しちまうのさ、そいつ。無理にギミックを組み込んだせいか武器の耐久値も低めでね。いずれかの属性を付与して戦ってるとあっさり壊れる。あと、結構な数のレアアイテムを素材として使っているから、修理する時にすごい金がかかる。壊れやすくて修理費が高い武器なのさ、そいつは」
「なんて財布に優しくない……!」
「だから普段は属性付与ギミックは封印しといた方が良いよ。黒刃刀モードなら、そこそこ性能の良いただのカタナとして使える。脆いけどね」
「う、うーん……」
この世界は、そう簡単に万能最強の武器なんて作らせてくれないらしい。
斬撃以外に三属性を使い分けられるという長所と引き換えに、欠点も多い四色刀。
しかし、それを差し引いても――超カッコいい。
「……ありがたく頂戴します! サンキュー姉御!」
「あはは、いいっていいって。……売れ残りだし」
「え?」
「なんでもないよ。ところで、さっそく壊れちまったわけだが……修理してくかい? 安くしとくよ?」
言われて、俺は粉々に砕け散った刃を見る。
このままでは使い物にならない。
なので修理しなければならないのだが、
「……いくらくらいかかります?」
「素材代と技術料で……こんくらい?」
「高っ!?」
属性付与ギミックを持たない同程度の性能の刀と比べ、10倍くらいお高い修理費を提示された。
内訳として、技術料は割安だが、素材代がとにかく高い。
どんだけいい素材を使っているんだこのカタナ。
「くっ! 財布に痛い……! けどこいつを実戦で使ってみたい……! 修理お願いします!」
「あいよ、まいどあり! 20分くらいで仕上がるから待ってな!」
結局、タダで貰うはずがかなりの出費を強いられるハメになってしまった。
というか今後、修理のたびにこの金額を払うことになるのでは?
バサラの姉御、商売上手だな……。




