刀鍛冶っぽいイメージってあるじゃないですか。
西京にやって来たのは、カサイBSLを攻略していた時期以来だから……ほぼ一ヶ月ぶりか。
仲間たちと合流する前に、せっかくだから今の西京を見ていこうと思った。
久々の退廃都市は相変わらず治安の悪そうな雰囲気をしている。
道端で変なNPCが謎の缶詰を売っていたり、妙にエロティックな雰囲気のドロイドが客引きしてたり、プレイヤー同士が殴り合っていたり。
それだけなら以前と同じだが、この一ヶ月間で変化している部分もあった。
UNOには、プレイヤーが自分の家を持つことができるというシステムがある。
そのシステムを利用して、街中に点在する空き家を購入、武器やアイテムを売買しショップ経営を行う、という”商人系”のプレイヤーも少なくない。
ただ、物件の購入費や維持費を用意するのに時間がかかるため、以前の西京にはプレイヤーのショップなど一軒もなかった。
だが今の西京には、NPCの経営する店以外にも、プレイヤー経営のショップがちらほらと出店されている。
そういう店を見て回ると、以外な掘り出し物に出会えたりするので面白い。
基本的に、NPCの店で売られているものはゲームシステムによって最初から用意されているアイテムのみだ。
一方、プレイヤーショップでは、例えば鍛冶師系のプレイヤーが製造したオリジナルの武器が並んでいたりする。
ゲーム的なバランスを考えて能力を設定されている通常武器と違い、オリジナル武器は製造者の趣味によってその能力が千差万別。
中にはとんでもなく偏った性能の、笑えるくらいに使いにくい武器があったりもする。
「剣と斧と槍と銃の機能を併せ持った四徳ウェポン……? どうやって使うんだこの形状……?」
俺はプレイヤーショップの店先に並ぶ奇怪な形状の武器を眺め、ウィンドウショッピングを楽しんでいた。
と、
「おや? アンタはいつぞやの……」
不意に声をかけられた。
振り向けば、いつかの廃坑道前で出会った”鍛冶師の姉御”の姿がある。
その格好は和服に変わっており、いまは鍛冶師というよりも”刀工の姉御”といった感じ。
俺は反射的に背筋をピンと伸ばし、腰を90度に折って姉御に一礼。
「ちーっす! ご無沙汰してます姉御!」
「だからなんなんだいその舎弟キャラ!? ……相変わらず変な子だねぇ、あの廃坑道の封鎖を解いた男とは思えないよ」
「あれは相手の戦術に対して相性が良かっただけッスから、メンタル的に」
あれはFDVRゲーム内の黒いアレが平気なら誰でも突破できる。
誇るほどのことでもない。
むしろ姉御の溢れ出る”侠気”みたいな感じの方がすごいと俺は思う、そうそういませんよこんな姉御感のある人。
姉御は顎に指当てた姉御力の高いポーズを取りつつ、そういえば、と。
「まだ名乗ってなかったね、アタシの名前。まあ頭の上のプレイヤーネームを見れば一発だけど、こういうのは礼儀ってもんだ。”バサラ”だよ、よろしく」
「うっす! 恐縮っす! 自分はカネツグっていいます! よろしくっす!」
「……むず痒くなるからやめてくれないかいそのキャラ」
「了解っす! えーと、それじゃあらためて、よろしくおねがいします、姉御」
バサラの姉御はポリポリと頬をかく。
「姉御呼びや敬語も苦手なんだがねぇ……まあいいか。んで、こんなところでどうしたんだい? 武器でもイカれた?」
「いえ、久しぶりに来たら色々とプレイヤーショップが出来ていたんで、見て回っていただけです」
「ああ、この一ヶ月で店を出すプレイヤーも増えたからねぇ。こことアレイスはいまやアイテムクラフトを嗜むプレイヤーのための街といってもいいくらいさ。なんといっても最初の方の街だから家賃が安い、自分の店がすぐ出せる。素材集めの効率なんかを考えて、金が溜まったら他の街に行くってプレイヤーも多いがね」
「なるほど。……そういえば姉御も店とか出してるんですか?」
「おっ? よくアタシが鍛冶師とわかったね? ……いや、鍛冶師向けの槌を装備してるから当たり前か。そうだね、ご多分に漏れず、アタシも店をやってるよ。よければ見ていくかい?」
「ぜひ!」
「ならついてきな、この辺からはちょっと離れたところにあるんだ」
姿勢良く歩くバサラの姉御に先導され、俺は西京の裏通りへと入っていく。
派手にネオン看板を輝かせている表通りと違い、裏通りは灯りも少なく、だいぶうらぶれた雰囲気だ。
姉御曰く、こっちは表通りより物件の価格や維持費が安いんだとか。
あと雰囲気が良い、とのこと。
「っと、ここだよ、アタシの店」
「ここが……」
外観は、ビルの谷間にぽつんと建つ、ボロボロの日本家屋。
都会の発展に取り残された歴史ある商店のような、どこかノスタルジックな感じの物件だ。
店先に掲げられた看板には”ぱらいそ”という店名が荒々しい筆文字で描かれている。
雰囲気あるなぁ。
いかにも刀工って感じの姉御、そしてこの趣ある日本家屋。
きっと店内に並ぶ品々は、現実世界の日本刀のような、美しくも切れ味抜群の名刀ばかりなのだろう。
「遠慮はいらないよ、入んな」
「では遠慮なく……おじゃましまーす」
俺は胸を高鳴らせながら、姉御を追ってのれんをくぐる。
店内には、ずらりと銃火器が並んでいた。
ライフル、ショットガン、ハンドガンにマシンガン。
行ったことはないけれど、たぶんアメリカのガンショップってこんな感じだと思う。
「……思ってたのとなんか違う!?」




