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飽きるまで竜退治させられそう。

 ペスカとアルを仲間に加えた次の日、俺たちはスクアロJ9を強化するのに必要な素材を集めるため、とある洞窟の中に居た。


 壁や地面が青白く発光しており、時には電流をビリリと撒き散らす、雷の力に満ちた空間。


 洞窟と言っても中は広く、具体的に言うと巨大なドラゴンが翼を広げて飛び回れるほど。


 というわけで俺たちは現在、洞窟の中で雷の力を操る巨大なドラゴンと戦闘中である。


 俺は壁面を駆け上がり、壁を蹴って跳躍、空を飛ぶドラゴンの背後から攻撃を仕掛ける。



「そらよっと!」



 カタナによる斬撃。


 しかし刃はドラゴンの硬い鱗に弾かれた。


 反撃に、ドラゴンは空中で身体をくねらせ、長い尻尾をムチのように振るって俺を叩き落とそうとしてくる。



「危なっ!」



 ドラゴンの背を蹴って跳び、ギリギリで回避。


 俺はそのまま地面に着地。


 痛い、足がビリビリする。


 高所からの落下により、ダメージ判定が発生、俺のHPが3割ほど削れた。


 エニグマの声が通信機から聞こえてくる。



『カネツグ、そいつ斬撃耐性、っていうかだいたいの攻撃に耐性を持ってるね。カタナじゃ効果が薄いよ』


「マジかよ。弱点部位は?」


『ちょい待ちー、スキル発動、ウィークサーチ。頭、首、心臓が弱点だけど、斬撃は鱗で防がれる。カタナで攻撃できる弱点は……目玉くらいかな』


「空を飛び回っているヤツがぐねぐね動かしている頭の、それも目玉を狙えって?」


『今のままだと無理だね。あ、目の前でフラッシュ・グレネードを炸裂させれば怯んで地面に落ちてくるかも』


「オーケー、試して……」


「必要、ない」



 俺がエニグマの提案した戦術を試す前に、洞窟内に発砲音が反響した。


 次の瞬間、ドラゴンの右の翼が、根本から千切れ飛ぶ。


 巨大な竜が、痛々しい鳴き声をあげながら地に落ちた。


 広大な空間の端っこで大型の狙撃銃を構えた真っ白い少女が、小さく笑う。



「……ふふ、デカブツ相手なら、はずさない」


「……頭をぶち抜いたら一発だったのでは?」


「空を飛んで、首、ぐねらせてるやつの、頭になんて、当てられるわけ、ないだろ、この、イカスミが。……ミス、当てられないです」


「イカスミ!?」


「……黒いから、服とか」


「できれば闇とか影とかそういうカッコいい系の表現でお願いします!」


「前向きに、検討」



 昨日、新たに仲間に加わったスナイパー、アルファルド。


 彼女の手にする狙撃銃”AMSRハイドラハウル”は、その物々しい見た目と重量に違わぬとんでもない威力を秘めていた。


 射撃攻撃に対しても高い耐性を持つドラゴンだが、その防御を軽々と突破し、一撃で翼をもぎとってしまうほど。


 当たれば強い、なので目を瞑ってでも当てられるような大型の敵に対してなら、彼女の力は非常に頼りになる。


 まあ、狙撃する部位を選択できるほどの腕前はないようだが。


 アルはボルトアクション方式の愛銃に次の弾丸を装填、地面を転がるドラゴンに次の一撃を撃ち込もうとする。


 発砲音。


 ドラゴンの向こう側の壁がひび割れる。



「いまほとんど止まってる大型目標を相手に攻撃を外してましたよね?」


「……威嚇射撃に、決まってる、だろ、イカスミ」


「またイカスミ言うた!! 泣くぞ!!」



 ……あまり彼女の狙撃をアテにしない方がいいようだ。


 と、どこからともなく響いてくるエンジン音。


 直後、青いバイクがものすごい速度で俺たちのいる空間に突入してきた。


 急ブレーキ、数十メートルほど横滑りしてから、バイクが止まる。


 それを運転していた黒と青のライダースーツの女――ペスカが、ぴしっと敬礼。



「隊長ー! 洞窟内で迷子になってたツキ姉、拾ってきましたー! 重すぎてウチの愛車が悲鳴をあげたぜ!」


「ご苦労!」


「迷子じゃないわ! なにか有用なアイテムとか落ちてないかと独自に探索していたら道がわからなくなっただけよ!」



 バイクの後ろに乗っていた金色の鎧の女、アカツキが声を上げる。


 彼女の言い分を聞いた全員が思う。


 迷子じゃん。


 四人とドローンアイのパーティで洞窟を探索していたらいつの間にかいなくなっていたので、ペスカに探しに行ってもらったのだ。


 方向音痴から目を離してはいけない。


 こほんと、アカツキは咳払いを一つ、バイクから降りる。


 背負っていた大剣を両手で構え、彼女は敵と向かい合った。



「……で、この竜が目当ての相手ね?」



 ドラゴンはいつの間にか体勢を整え、四本の足でしっかりと地面を踏みしめている。


 目の前に立ち塞がる金色の女騎士を睨みつけ、大音量の咆哮で威圧。


 しかしアカツキは揺るがず、まっすぐに敵を見つめている。



「アカツキ、そいつ斬撃耐性持ちの上に防御力がクソ高い。近接武器だと――」



 俺の注意も聞かず、アカツキは大剣を縦一閃。


 力任せに振るわれたその斬撃は、硬い鱗に弾かれることなく、ドラゴンの首から胸にかけてを軽々と切り裂いた。


 傷口から血の代わりに電光を撒き散らし、ドラゴンは絶命する。


 アカツキは大剣を背中に戻すと、一言。



「近接武器だと、何?」


「なんでもないです……」



 そういえばこの前、防御貫通スキルを覚えたって言ってたな。


 確か”鎧砕き”だったか。


 重い武器を使用しての攻撃時、相手の防御力を一定割合無視してダメージを計算する、とかいう。


 物理攻撃は硬すぎる相手に通じにくいのだが、そのスキルがあれば問答無用で攻撃を通すことができる。


 弱点を突きましょうとか、魔法攻撃を試しましょうとか、そういうチマチマとした戦い方を真っ向から否定してくるような、恐ろしい脳筋スキルだ。


 なお、覚えるためにはかなりのSTRが必要となるので、選ばれた脳筋しか習得できない。


 そんなスキルを愛用しているアカツキさんは、本人がなんと言おうと間違いなく脳筋プレイヤーなのでした。



「……なによ、その顔」


「動物園のゴリラを見る時と同じ表情」


「誰がゴリラか! 滅ぼすわよ!?」



 と、俺たちがわいわいやっている間に、ペスカはドラゴンの骸に駆け寄りアイテムを回収する。



「えーと、あったあった。ツグ兄ー! あったよ、”電光竜の雷心臓”が!」


「でかした!」


「これで後は鎧虫の体液が30個と冷却液が10個、高品質グラスファイバーが10個と万能ボルトと特殊ネジを100個ずつ、中級機械兵の装甲と中級機械兵のコードと壊れたドローンのパーツがそれぞれ5個、欠けた電子回路が3個に雷妖精の粉が10個、スライムリキッドを20個、蓄電スライムコアと冷却スライムコアと発熱スライムコアが5個ずつにきれいな鮫肌を10個、絶縁塗料を3個、超電光システムと超冷却システムを10個ずつ、ミスリルインゴッドが10個、メガチタニウムとハイパーカーボンを10個ずつに壊れたライトニングリアクターも3個、それと雷光竜の翼膜があと3個に雷光竜の雷心臓も1個で――ウチのスクアロを完璧な状態にできるよ!」


「ちょっと待って予想以上に必要素材数が多い!?」


「ふふふ、メカ系ビークルの強化は修羅の道なのさ……先々、完璧な状態のスクアロをもっと強化するプランもあるんだから、この程度で音を上げてもらっちゃ困るっスよー? 頑張って、おにーちゃん!」


「く、くそ、しょうがねえな!」


「チョロっ」



 妹の邪悪な笑顔も見て見ぬ振りをするのが兄ってもんだ。


 と、通信機越しにエニグマの声。



『あ、そうだカネツグ、ちょっと良い?』


「ん?」


『さっき落下ダメージ受けてるの見て思い出したんだけど、カネツグ、まだ落下耐性スキル取ってないの?』


「あっ」



 忘れてた。

PV数増加作戦、24時間に20話投稿の荒行完遂!

増えたらいいなうふふ。

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