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うちのスナイパーがこんなにクソエイムなわけがない。

 とんでもなく高圧的なセリフを吐いた後、アルファルド――”アル”はハッとした表情をする。



「……失礼、ミス、ごめん、なさい。口、悪かった。こういうの、直したいと、思って、いるのに」



 なんだ、良い子じゃないか。



「あ、いや、びっくりしたけど大丈夫。気にしてない」


「なら、よし。話、進めろ」



 ……直している途中なので、やっぱ基本は口が悪いんですね。


 と、エニグマがはいはーいと話に割り込む。



「アルファルドさん、それではまず当社のメンバー募集に応募した理由をお願いします」


「なんで就職面接風なの?」


「……わかった。理由、そいつ」



 アルファルドはゆるっとした動きで俺を指差す。



「え、俺?」


「カネツグ、ちょっぴり、有名な、プレイヤー。カサイBSLを、最初に、クリアした、ヤツ」


「えっ!? あそこ突破したの俺が最初!?」


「他のプレイヤーが、確認している、限りでは、お前と、フォーハンドが、最初、だった」



 初耳だ。


 俺とアカツキが、カサイBSLを最初にクリアしたプレイヤーだったとは。


 俺はその事実を聞いて、おかしいなと首を傾げた。



「あそこそんなに難易度は高くないと思うんだけどな……?」


「……敵の強さ自体は、普通。ただ、ステージの、演出が」



 アルが白い顔をさらに青白くする。


 さらに、あのホラー系ダンジョンのことを思い出したのか、エニグマとアカツキも嫌そうな顔をしていた。



「……カネツグ、ボクが思うにあのホラーっぷりを平気な方がおかしいんだよ」


「……い、嫌なものを思い出してしまったわ。ひ、悲鳴が、悲鳴が」


「…………エレベーターに、いきなり、敵、乱入、してきて。トラウマ。おかげで、エレベーター、乗れなくなった」



 そんな大げさなと思い、俺はペスカに問う。



「そんなに怖かったか?」


「えー? フツー? ホラーゲームとしてはオメガヌルい演出だったし?」



 アカツキに、これだからホラーゲーマーは、と言いたげな顔で睨まれた。


 だって怖くないもんは怖くないんですものしょうがないじゃん!?


 ともかく、あのホラー演出に耐えきれる者がおらず、誰もダンジョンを突破できないでいたんだとか。


 そこをあっさり突破してみせたので、俺の名は掲示板でちょっとした話題になっていたそうな。


 さすがあのフォーハンドと、その”オマケ”と。


 ……アカツキのオマケ扱いかぁ。



「どうせ、仲間を作るなら、強そうな、ヤツが、良い」


「フッ、やっぱわかる人にはわかってしまうか俺の強さ!」


「調子に、乗るな」


「ペスカぁ、この子が俺のメンタルいじめでくるよぉー」


「あーよしよし泣かないでツグ兄ーいい大人がー」


「お前と2歳しか違わないんですけど?」



 ともかく、俺の名がアルの興味を引いたらしい。


 カサイBSLを誰よりも先にクリアできるほどの強者、仲間になるのにちょうどよさそうな人物。


 それで構わない、パーティに入ろうと思うきっかけなんてそんなもんだろう。



「よし、理由はわかった。それじゃ早速、フレ登録してパーティに招待を……」


「待って、カネツグ。まだ彼女の実力を確認していないわ」



 アカツキに言われて、確かにと頷く。


 まだアルの狙撃手としての腕前を確認していなかった。


 ここは重要なところである。



「えーと、それじゃ実技テストってことで、いいか?」


「問題、ない。さっさと、準備、しろ。……ミス、してください」



 とはいっても、実技テストなんてやるつもりなかったからなぁ。


 どうしようかと考えていたら、ペスカがはいはーいと手をあげた。



「思いついちゃった! まずツグ兄が、えーと、向こうのビルまで行ってくれる?」


「ん、わかった」



 言われるがまま、俺は身軽さを活かして高層ビルの屋上をぴょんぴょん渡っていく。


 指定された地点に辿り着いてから元いた場所を見ると、仲間たちの姿は豆粒ほどのサイズでしか見えなくなっている。


 かなりの距離だ。


 耳に着けた通信機から、ペスカートの声が届く。



『ツグ兄、そのままビルの端まで移動してー』


「端、端っと。ここかな。見えるか?」


『見える見える、そこでオッケー! それじゃアルっち、あのツグ兄を狙撃してください。攻撃を当てられたらごうかーく!』



 なるほど、俺をターゲットとしての狙撃テスト。



「ちょっと待って?」


『え? なにツグ兄? さすがにこの距離じゃ狙撃難易度が高すぎるから、もうちょい弾を当てやすい距離まで移動するって?』


「兄をいじめて楽しいの?」


『超楽しい!』



 そんなにはつらつとした返事を聞けて嬉しいよマイシスター。



「なんで俺が的なの!?」


『狙撃の腕を確かめるなら人型の的があった方がいいかなーって。ツグ兄、死避けのお守り持ってるから1日1回はヘッドショットされても死なないでしょ?』


「まあ死なないけど! 狙撃の的にされるの下手なホラーより怖いんですけど!」


『頑張って! ウチのオメガかっこいいお兄ちゃんならできるよ!』


「フッ、任せろ」


『チョロっ』



 妹に期待されて奮起しない兄はいないのである。


 ……後になって気がついたが、今日はすでに妹に轢かれた時に死避けのお守りの効果が発動しているので、ヘッドショット食らったら普通に死んでいた。


 ともかく、俺をターゲットにした実技テストが開始される。


 彼方のビルの屋上で、何かがキラリと輝く。


 狙撃銃の照準器が光を反射しているのだろう。


 ……うわ怖ッ! マジでホラーゲームより怖ッ!


 仮想世界とはいえ銃口を向けられているのはおっかない。


 しかし妹に啖呵を切った手前、いまさらやめてもかっこ悪いし、とか考えていたら、花火が炸裂するかのような轟音が轟いた。


 直後、俺のすぐ隣を何かが超高速で通り過ぎていく。



「怖くて泣きそう」


『頑張ってツグ兄! ……アルっち、もっとヘッド狙ってヘッド。もしくは左胸。ハートブレイクショット。殺意を込めて、はいどうぞー!』



 二度目の発砲音。


 今度は先ほどよりも離れた位置を弾丸が飛んでいく。


 三発目が放たれる。


 はずれ。


 四発目。


 はずれ。


 五発目――――、



「……もしかして、なんだけどさ」


『……うん、こっちのみんなもツグ兄と同じこと考えてるよ』



 39発目の狙撃が外れた後、俺たちはその事実に気づく。


 スナイパー、アルファルド。


 彼女は――、


「射撃がすごく下手だな!」

『射撃がオメガ下手だね!』

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