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友達少ないやつは掲示板なんて使わない。

 俺とアカツキはひーこら歩いてグランマーレへと戻り、ペスカたちと合流。


 そこからファストトラベルで再びナイトベールへと飛んだ。


 到着後、ペスカはBDRがどういうレースなのか見ておきたいと言い出した。


 今日のBDRはすでに終了しているが、レースの中継映像は録画されており、セントラルタワー内の資料室で視聴できるようになっているらしい。


 そんなわけでセントラルタワーの二階へ。


 ずらりと並んだ記憶媒体から目的の映像を引っ張り出し、ペスカはタブレットPCのような板状の端末を手に視聴を開始する。


 スタート開始直後に巻き怒る爆発、次々と吹っ飛ぶ選手、外野からの猛攻。


 地獄のようなレース風景を見て、ペスカは爆笑していた。



「あっはっはっは! なにこれなにこれオメガウケるんですけどー! やりたい放題、カオスすぎ! レースになんのこれ!?」


「いまだ完走者0人だそうですよ我が妹」


「レースになってねぇー! うわ戦闘機が爆発した! 戦場かよー! あはははは!」



 楽しそうで何よりです。


 映像は選手が全滅、完走者なしで優勝者もなしと決まったところで終了した。


 ペスカはさんざん笑い転げた後、呼吸困難になりつつも所感を述べる。



「ひひひ、ひぃー! あーおもしろ、ふひぃー……っと。うん、とりあえず見た感じだと、ウチでも勝てると思うよ、このレース」


「いけるか!」


「うん。ルート選択次第だけどコース自体はそんなに難しくないもん。ウチなら最速でゴールに突っ込める。妨害の攻撃もある程度は回避できると思う」


「頼もしいなぁ俺の妹!」


「ふへへもっと褒めろ、甘やかせ。ただ、さすがに全部の妨害を回避するのはキツいかも。その辺はツグ兄たちにどうにかしてもらわないと。外野のスナイパーや攻撃系の参加マシンを排除したりとかさ」


「任せろ、戦闘系はこっちの本職だぜ」


「頼もしいなぁウチの兄貴! あとはアレだね、マシンの性能の問題」


「性能?」



 ペスカは頷くと、インベントリを操作する。


 彼女の隣で光のエフェクトが固まって、青いバイクが顕現した。


 室内で出されるとちょっと圧迫感がある。



「これがウチの愛車ね。”スクアロJ9”、二輪系のライディングビークル――ようはバイクっすわ。コーナー性能はいまいちだけど、直線での加速は誰にも負けないよう調整してある。……けど、まだ完璧じゃないんだよねぇ」


「完璧じゃない?」


「R0にはアイテムとか持ち込めないでしょ? ビークルも同じでさ、ウチが外のワールドでいつも使ってる方のスクアロは持ち込めなかった。だからこの子はR0内で新しく調達したマシンで、本来のスクアロに比べるとまだまだ改造途中の未完成品。本気で勝ちに行こうと思ったら、もうちょい強化しておきたいわけですよ」


「……なるほど、その強化のために必要な素材調達とかを手伝えってことだな?」


「イエス! 必要なアイテムには戦闘で敵を倒さないと入手できないものも多いからね。ウチ一人じゃ効率オメガ最悪で困ってたんですのよー?」


「わかった、手を貸そう。アカツキ、エニグマ、それで構わないか?」


「オッケーだよ、カネツグ」

「問題ないわ」


「やりぃ! さすがツグ兄の数少ないフレ、心オメガ広い!」


「数少ない言うな」


「うぐっ」



 妹の一言に、俺とフレンド数が同数のアカツキも地味にダメージを受けている。


 ともかく、これでBDRを走るレーサーは決定、これからしばらくの行動方針も決まった。


 ペスカの愛車”スクアロJ9”の強化、そのための素材集め。


 戦闘は俺たちの得意分野である。


 エネミーからのドロップアイテムならいくらでも取ってきてみせましょう。



「それじゃ早速、アイテム集めに――」



 言って、行動開始しようとしたその時。


 ピコンと、俺の視界にシステムメッセージが表示される。


 掲示板の書き込みに、一件の返信がありました、と。


 来た来た。


 ニヤリと笑う俺に、エニグマが首を傾げて問うてくる。



「どうしたの、カネツグ?」


「いや、な。もう片方の必要な人材も集められそうだぞ。掲示板で募集をかけといたんだ」



 UNOにはゲーム内掲示板というものがあり、主にプレイヤー同士の交流に使われている。


 書き込まれる話題は攻略に関するものからどうでもいい雑談、リアルでの愚痴、夕飯を何にするかの相談まで幅広い。


 その中にはパーティやギルドのメンバーを募集するものも多数存在している。


 俺もBDRで勝つために必要な”スナイパー”を掲示板で募集していたのだ、ペスカをスカウトしに行く前に。


 それを聞いて、エニグマはぽんと手を叩く。



「そういえばできたね、ゲーム内掲示板での仲間募集」



 続けてアカツキが、



「すっかり忘れていたわ、使ったこと無いし」



 ……貴重な交流の場を利用しないどころか、忘れていただなんて。


 この子たちにフレが少ない理由の一端を垣間見た気がしますわ。


 まあ俺も今回が掲示板での初メンバー募集だったのだが。



「……さて、せっかくメンバー募集に乗ってくれたんだ。待たせるのも悪いしな、早めに返信しとこ」



 俺はウィンドウを指先で操作し、掲示板画面へ。


 ”スナイパー募集、初心者歓迎”という件名の、俺自信の書き込みをピックアップ。


 そこに連なった返信には件名がなく、”無題”の二文字。


 本文に目を通す。



《スナイパー募集、興味あり。返信待つ》



 必要なことだけを伝える、非常に簡素な文章だ。


 質実剛健、あるいは仕事人、そんな言葉が脳裏をよぎる。


 スナイパーっぽい。


 俺はその返信を書き込んだ者の名前を見た。



《アルファルド》



 それが、まだ見ぬ新たな仲間候補の名前である。


 意味は知らないが、なんだかカッコいいプレイヤーネーム……!


 勝手に相手への期待を膨らませつつ、返信する。


 まず会ってみたい、待ち合わせ場所を決めよう、いまどこにいるのか、等々。


 返事はすぐに返ってくる。


 なんと、アルファルドさんもナイトベールに滞在しているらしい。


 ちょうど良いと、俺は近くのビルの屋上を待ち合わせ場所に指定した。


 なぜビルの屋上かというと、夜空の下、高層ビルの屋上で待ち合わせというシチュがカッコいいからです。


 アカツキは不満そうな顔をしていた。


 そんなわけで俺たちは指定の場所へ移動し、待つこと数分。


 カンカンと、非常階段を登る音が聞こえてきた。


 ……エレベーターがあるのになぜ非常階段を?


 ともかく、階段を登りきって、そのプレイヤーが姿を表す。


 真っ白くて小柄な女の子だ。


 肌は白、髪も白。


 服装は雪原迷彩柄の白いコート。


 左目には医療用の白い眼帯。


 右目はジト目気味に開かれており、赤い瞳がどんよりとこちらを見つめている。


 そんな少女が背中に担ぐのは、身の丈に合わない大型の狙撃銃。


 恐らく彼女が、俺たちの待っていた人物スナイパー



「アルファルド、さん?」



 俺の声に、少女はこくんと頷いた。


 あらかわいい。


 けれど忘れるな、UNOの女性アバター、中身はだいたい男という事実を。


 まあ重要なのは性別ではなく人間性と腕前だ。


 アルファルドはとことことこちらに歩み寄ってくると、濁った右目でこちらを見上げ、



「アルファルド。アルで、良い。スナイパー、募集を、見た。手を、貸してやる。ありがたく、思え」



 あらやだ思ったより口が悪いわこの子!?

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