……めでたし?
八坂家三人と天音、四人揃った状態での朝食は三年ぶりだ。
「そんでさー、スイカは野菜か果物かって話で喧嘩になってんの。スイカをサラダに入れてドレッシングで和えて食べますかっての。果物だよねえ?」
「どう考えても果物だな。もし果物じゃなかったらスイカの木の下に埋めてもらって構わないよ」
と、俺と奈緒はわいわい談笑しつつ箸を進め、天音は黙々とごはんを口に運んでいる。
母は箸を持ったまま固まっており、起きてるんだか寝てるんだかわからない状態だった。
と、そんな母の姿を見ていて、そういえばと気になっていたことを思い出す。
「そういえば、母さん」
「……んー? なぁにぃ?」
「UNOってゲーム、知ってる?」
「兼続ちゃんの遊んでるぅ、ゲームぅ……でしょう?」
「それそれ。それでさ、母さん、最近になってUNO関連の仕事を受けたりした?」
カサイBSLのエネミーや最深部のグロい風景になんとなく見覚えがあったのだが、母の顔を見て気がついた。
あれは母さんのデザインに酷似している、と。
母さんの仕事はイラストレーターだ。
描くジャンルは主にホラー系、目玉を多用したデザインは”不気味”とか”気色悪い”と業界内で一定の評価を得ている。
ゲーム関連の背景やクリーチャーデザインなんかを手掛けることもあり、俺は母さんがUNOの開発から仕事を依頼され、あのダンジョンのデザインを担当したのだろうと予想した。
俺の質問に、母さんは少し考え込んだ後、
「……あぁ~、受けたことあるわね~。人体実験で怪物化したクリーチャーや、生体組織に侵食されている研究施設を描いてほしい、って」
「やっぱり」
「でもぉ……」
「ん?」
母さんは不思議そうに小首をかしげる。
「私が仕事を受けたのは、UNOが正式サービスを開始するもっと前だから、もう10年以上も昔の話よ~?」
「10年以上前……? 変だな……」
カサイBSLは最新のアップデートで実装されたR0内にあるダンジョンの一つ、ゲーム内では最新のコンテンツだ。
しかし、母がそのダンジョンのデザインを手掛けたのは10年以上前。
さらに、母は記憶を探りながら言葉を続ける。
「それにぃ、その時に納品したデザインを使うコンテンツ、実装中止になった、って、後から連絡があったし~」
「実装中止?」
「よくあるのよ~? 作るには作ったけどお客さんからの評判が悪そうだからボツになるってコンテンツ~。あの時は確か……FDVRゲームでやるにはグロすぎる上に怖すぎる、って理由だったかしら~?」
「確かにFDVRゲーでホラーは耐性ないとキツいもんな……、しかしそうなるとなんで今頃になってそのダンジョンが実装されたんだ……?」
「ん~、よくわからないけど~、あの時のデザインの権利はQゲームズさんに譲渡してあるし~、昔ボツになったコンテンツを後々になって素材流用して実装、なんて話も珍しくはないから~? たぶん、そういうことじゃないかしらね~?」
「なるほど」
俺よりよっぽど業界事情に詳しい母さんがそういうのなら、たぶんそうなのだろう。
疑問の答えが出てスッキリした。
というわけで朝食再開である。
「ところで兼続」
「なんだ、天音?」
「スイカって分類上は野菜よ。もっと言うと”果実的野菜”っていう、実質果物扱いの野菜」
「今頃になってさっきスイカの話!?」
「……つぐ兄、スイカの木の下に埋めていい?」
「埋めるなら半分だけにして!? 果実的野菜なら半分くらい果物扱いでいいでしょ! セーフセーフ!」
「……それと、スイカは木には生らないわよ、二人とも」
「マジで!?」
「マジで!?」
等々、俺たちがどうでもいい話をしている一方。
母さんは、不思議そうな顔でなにやらぶつぶつと呟いていた。
「……でも、ボツ素材をやっぱり使う、ってなったら、私に一言くらい連絡を入れてきそうなんだけどな~? あの子の性格的に……」
TIPS:めでたし?
もうちょっとだけ続くんじゃ。
いやもうちょっとっていうかこっからが本番ですわ。
ギアを一つ上げていくぞ!
ここまで読んで頂きありがとうございました! 今後は変人が増えます! 覚悟して引き続きお楽しみください!




