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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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クソバカの戦い方。

 二度目のカサイBSL、俺としては特に障害もなく先へと進み、



「帰ってきたぜ最深部」



 再び、あの肉塊に侵食された不気味なフロアへと戻ってくることができた。


 一方、アカツキはすっかり疲弊した様子で、



「は、はぁ、はぁ……やっとついた……」



 と、荒く息を吐きながら、どうにか声を絞り出す。


 ここに来るまで触手ちゃんをはじめ色んなものから全力で逃げ回っていれば、まあそうもなりますよね。


 アカツキが回復するのを待ってから、先へと進む。


 戻ってきました、巨大ゲート前。


 俺は今度こそゲートを開くためのパスワードを打ち込もうと、コンソールの方へと移動し、



「……しまったぁぁぁッ!?」


『うわビックリした。どうしたのカネツグ?』


「そうだよ、さっきここに来た時もそうだった! 大事なことを忘れていた!」



 俺は頭を抱えて叫ぶ。



「パスワードがわからねぇ――ッ!」



 パスワードがわからなければ、ゲートが開けない。


 ここまで来て引き返すしかなくなってしまう。


 ちくしょう、しっかりとしたセキュリティめ!


 あまりの悔しさに、壁を拳で殴る。


 と、エニグマが当然のようにこう言った。



『パスワードなら予想ついてるよ?』


「なんで?」



 いつの間に?



『ここに来るまでに、血文字で描かれたあからさまに怪しい数字があったじゃん?』


「気づかんかった……」


『カネツグ、わりと探索中の注意力がないからね……。ま、それがたぶんパスワードじゃないかなーって。予想だけどさ』


「なるほど……ともかくでかした! これでパスワード探しに引き返さなくて済む!」


『あはは、褒めろ褒めろー! そんじゃパスワード言うね、えーとまずは……』



 エニグマに聞いたパスワードを俺が入力しようとしたその瞬間、金属が悲鳴を上げるような異音が響き渡る。


 何事かと音のした方を見れば、巨大ゲートに穴が空いていた。


 分厚い金属をぶった切り、無理矢理に開けられた通り道の前には、大剣を振り下ろしたアカツキの姿。


 俺がエニグマのドローンアイと一緒に呆然としていると、



「開いたわ、扉」



 アカツキは涼しい顔をして、そう言ってのける。


 ……いや確かに、このゲームのだいたいのオブジェクトは破壊可能で、高い攻撃力があれば分厚い扉をぶっ壊して進んだりもできますけど。


 そのあまりの力押しを前にすれば、叫びたくもなろうというもの。



「これだから脳筋は!」


「脳筋言うな!? 滅べ!!」



 何にしろ扉は開いた。


 扉に開いた穴をくぐって、俺たちは向こう側へと侵入する。


 そこにあったのは巨人が暴れまわれそうなくらいの広い空間。


 その中央にいたのは、バケモノだ。


 触手ちゃんを人型にし、そのまま巨大化させたような巨人。


 無数の触手と目玉を蠢かせる、見ているだけで正気を失ってしまいそうなデザインのバケモノ。


 その存在感からして、恐らくはここのボスだろう。


 アカツキが今にも気絶してしまいそうな青い顔をしている。



「大丈夫か?」


「へ、平気よ。気色の悪い触手にも慣れてきたわ」



 俺たちの会話が聞こえたのか、スーパー触手ちゃん(仮)の全身の目がぎょろりとこっちを見た。



「ごめんやっぱ泣きそう。帰りたい」


「がんばって!」



 こちらの事情などおかまいなしに、スーパー触手ちゃんは不気味な咆哮で空間を揺らすと、四つん這いの戦闘態勢に。


 恐怖の巨人は、そのまま獣の如く突撃してくる。


 戦闘開始。


 俺は床を蹴って素早く移動し巨人の突撃を逃れる。


 一方、アカツキはもう一本の大剣を呼び出し、お得意の二刀流の構えを取り、



「はぁぁぁぁぁッ!」



 斬撃でスーパー触手ちゃんを迎え撃った。


 二振りの大剣で頭部のあたりをざっくりと斬り裂かれ、怯んだスーパー触手ちゃんはその場で身悶える。


 動きが止まった今がチャンス。


 スーパー触手ちゃんの背後に回り込んでいた俺は、跳躍してその背中へと飛び乗って、



「おかゆいところございませんかッ!」



 触手の内にあるであろう本体に、カタナをブスリ。


 ……うーん、手応えはイマイチ。


 と、無数の触手がぶるりと震えた。


 俺は咄嗟にその場を飛び退く。


 直後、こちらを貫こうと、触手が槍のように伸びてくる。


 鋭く向かってくるその先端を、カタナを振るって切り払い。


 難なくしのいだ俺は、念の為にアカツキの方をちらりと確認。


 彼女は無数の触手の攻撃を鎧で受け止め、大剣で受け流し、首を傾けて回避しと、うまい具合に防御しきっている。


 ……本当に腕を上げた。


 心配なさそうだ。


 しかし、と。


 俺はエニグマに意見を求める。



「切った感じが触手ちゃんと同じなんだよな。あんまり効いている感じがしない。どう思う?」


『弱点以外の攻撃は無効か、再生力がとんでもないか、そういうタイプのボスなのかな』



 俺たちが話をしている間も、アカツキはスーパー触手ちゃんを切り刻んでいる。



「道中の障害扱いだった触手ちゃんと違って、こっちはボスキャラ。それなら倒せないってことはないと思うんだよな。エニグマ、まだ弱点サーチとかは使えないのか?」


『スキル習得条件をまだ満たしていないからね。ドローンアイを使っていればそのうち覚えられるはずなんだけど』



 アカツキは触手の反撃を防ぎつつ、とにかくスーパー触手ちゃんを切り刻んでいる。



「そっかー……これは一旦、退くべきか? 倒し方がわからないとどうにもな」


『カネツグみたいなクリティカルでの弱点特効アタッカーだと、この手の”弱点がわからない敵”を相手にするのは難しいからね。属性付与アイテムとか、色々と手に入れてから……』



 アカツキはそりゃあもう凄まじい攻撃力で、一心不乱にスーパー触手ちゃんを切り刻んでいる。



「アカツキさん話を聞いてます!?」


「聞いているわ! つまりは相手の弱点がわからないんでしょう!? だったら……」



 さも当然と言わんばかりに、アカツキは言う。



「弱点に当たるまで攻撃し続ければそのうち勝てるわ!」


「コレだから脳筋は!」


「ところでいま斬ったところに赤い宝石みたいなものが見えるんだけど何かしらこれ!」


「宝石?」



 俺は慌ててアカツキの背後へ周り、彼女が目にしたものを見る。


 触手の海と血肉の谷に埋まっている、なるほど確かに赤い宝石。


 もしや、と。


 俺はアカツキの肩を踏み台に、スーパー触手ちゃんの傷口へと飛び込んで。



「とうっ」



 赤い宝石に斬撃を見舞う。


 クリティカルヒットの確かな手応えと、腹の中身を吐き出すようなスーパー触手ちゃんの悲鳴。



「弱点だこれ!?」


『うそでしょ』



 適当に敵を切り刻んでいるだけで弱点に辿り着きやがった。


 恐るべし脳筋戦術。


 弱点を隠そうとしているのか、スーパー触手ちゃんの傷口が急速に塞がっていく。


 俺は慌てて離脱し、再びアカツキの背後へ。


 無茶苦茶だが、勝ち方はわかった。



「アカツキ! またひたすらに敵さんぶった切れ! 弱点が露出したら――」


「DEXの高いあなたがクリティカル攻撃でしょう! わかってる!」



 アカツキが両手の大剣と共に切り込む。


 対し、弱点を突かれたことで焦っているのか、スーパー触手ちゃんは全身の触手をアカツキに向けて集中攻撃を仕掛けようとした。


 一人で防ぎ切るのは不可能であろう、殺到する無数の触手。



「やらせんッ!」



 俺はアカツキの周囲を素早く動き回り、向かってくる触手をカタナで次々と斬り落とす。


 一本とて彼女に触れさせはしない。


 アカツキが攻め、俺が彼女を守る。


 役割を分担し、俺たちはスーパー触手ちゃんを少しずつ追い詰めていき、



「カネツグ! 敵の弱点が見えた!」


「了解!」



 俺は再びアカツキを踏み台にして、スーパー触手ちゃんの傷口に飛び込んだ。


 そうはさせんと言わんばかりに、触手が今度は俺を狙って伸びてくる。



「させないっ!」



 それを一撃でまとめて切り払うのはアカツキの大剣。


 俺が攻めて、アカツキが守る。


 咄嗟に役割を切り替えた俺たちは、それぞれのやるべきことを成す。



「これでどうだッ!?」



 俺のカタナが、スーパー触手ちゃんの弱点に深々と突き刺さった。


 その瞬間、スーパー触手ちゃんの動きがピタリと止まる。



「やったか!?」

「やったの!?」


『二人揃ってフラグを立てないで?』



 ……余計なセリフがフラグになったのかはともかく、スーパー触手ちゃんの身体がビクンと跳ねた。


 異変を察知し、俺とアカツキは慌ててその巨体から距離を取る。


 次の瞬間、ぶくぶくとスーパー触手ちゃんの全身が膨張していき、破裂。



「うわ!?」

「きゃあ!?」


『カネツグ!? アカツキさん!?』



 撒き散らされた血と肉の津波が、俺たち二人を飲み込んだ。


 勢いよくばらまかれたスーパー触手ちゃんの残骸には、わずかながらダメージ判定があった。


 ボスキャラなりの最後の抵抗なのだろう。


 その自爆攻撃は俺たちのHPをちょっとだけ削り、尻もちをつかせることに成功した。


 それだけだ。


 すっ転んだ俺たちはしばし呆然とした後、粉々になったスーパー触手ちゃんのだいぶグロめの残骸を見て、勝利したことに気づく。


 のろのろと、揃って顔を見合わせて、



「……ふふっ。カネツグ、頭の上で触手が跳ねてる」


「うわぁ本当だ気持ち悪っ」



 頭の上でぴちぴちしていた触手を放り投げてから、



「……勝ったわね」


「勝ったな」



 互いの拳を突きあわせた。


 久しぶりの、俺たち二人が揃っての戦いは、こちらの勝利。


 本当に、久々だ、彼女と一緒に遊ぶ時の、この感じ。


 心地よい疲労感と共に、俺はその場に大の字になる。


 床の血肉が頭の裏にぐちゃっとして気持ち悪い。


 慌てて起き上がった。


 と、スーパー触手ちゃんの残骸周辺をぐるぐると回っていたドローンアイが何かを見つけたらしい。



『カネツグ、敵さんの残骸の中央、見える?』


「残骸中央……あれか」



 見れば、血の海のど真ん中で何かが光っていた。


 それに近づき、拾い上げる。


 目玉模様のキーホルダー、としか言いようのない感じの物体。


 俺の視界にシステムメッセージが表示される。



《フィアーシンボル を 取得しました》



 フィアーシンボル……恐怖の証?


 恐らくだが、これが。



「これがR0攻略に必要な5つの証……の、1つ目みたいだな」



 こうして俺たちは、イベントのゴールに一歩だけ近づいた。

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