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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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まともに会話をするのも久々だった。

 死亡したタイミングが同時ということは、復活するタイミングも同時ということである。


 そしてリスポーン地点も同じ場所を登録していたらしく、



「あっ」


「うっ」



 俺とあま……もとい、アカツキは、西京の中心にそびえ立つ西京タワーなる赤い電波塔の前で、5分ぶりに顔を合わせることになった。


 ……なんか、戦闘の疲労で頭が回らなくなって、こっ恥ずかしいことを口にしていた気がする。


 アカツキもその自覚があるのか、顔を赤くしてうつむいていた。


 気まずい。


 クソ気まずい。


 向かい合ったまま、お互いしばらく沈黙していたのだが、



「……あの、カネツグ。久しぶりに、話をしない?」


「……ソウデスネ」



 俺はコクンコクンと機械的に首を縦に振り、アカツキの提案に賛同した。


 人通りの多い場所で話すつもりもなかったので、俺たちはひとまず静かなところへ場所を移す。


 西京に建つビルの半分くらいは、誰にも使われていない廃墟である。


 それらの廃墟の屋上は、ゲーム的には大した意味のない、強いて言うなら風景を楽しむためだけの場所。


 よって、あまり人は訪れない。


 二人きりで話をするにはちょうどよかった。


 とあるビルの屋上の端、錆びついてボロボロの転落防止柵に背中を預け、俺たちは並んで空を見上げている。


 しばらく雲を眺めていたら、先にアカツキが口を開いた。



「……ねぇ、カネツグ」


「うん?」


「さっきの戦いの最後の方、私は確実にあなたのHPを0にできる一撃を見舞ったはずなのだけど、あなたのHPは1だけ残ったわ。しかもその後、やけに力強い動きでこっちに一撃を入れてきた。あれはどういう仕組み?」


「え? この流れで最初に聞くのがゲーム的な話?」


「だって、気になるじゃない。自分がなににやられたのか」



 アカツキは少し不機嫌そうにしている。


 まあカラクリを知らないと理不尽さを感じる場面だもんな、あれ。


 俺は彼女の質問に答えた。



「俺のHPが1だけ残ったのは、これの効果」



 左手首にチェーンを巻きつけ装備していた”お守り”をアカツキに見せる。



「それは……」


「”死避けのお守り”、1日に1回だけ、HPが0になる攻撃を受けてもHP1でギリギリ耐えてくれるという装備品だ」


「微妙な効果ね……」


「うん、まあ……」



 1日1回、死を回避できると言えば強そうに感じるかもしれない。


 しかしUNOにおいては、例えば小石につまずいたり、頭を木の枝にぶつけたりといった些細な衝撃でもわずかにダメージを受けてしまう。


 HP1というのは、タンスの角に小指をぶつけたら即死する状態なのだ。


 また、毒や炎上といった状態異常を受けていると、ギリギリ生き残った次の瞬間にスリップダメージで死んだりするので意味がない。


 これより高性能な死亡回避アイテムもあるので初心者帯での保険くらいにしか使えず、愛用する者は滅多にいない装備品、それが”死避けのお守り”だ。


 俺は外のワールドでも愛用しているが。


 HPを1”だけ”残すという点が良いのだ。



「最後の俺がやたら力強かったのは、覚えているスキルの効果だ。”窮鼠の牙”っていう……」


「聞いたことないわね」


「俺も使ってる人を俺以外に知らない」



 そのスキルは、習得条件の厳しさと、効果の使いにくさゆえに、使う者が殆どいない。


 まず習得条件は”残りHPが1の状態でエネミーを100体撃破”である。


 UNOにおけるHP1という状況がどれほど危険かはすでに語った通りだが、”窮鼠の牙”はそんなタンスの角に小指で死する状態のまま戦い続けてようやく覚えられるスキルなのだ。


 そして肝心の効果は、”窮鼠の牙”を覚えているプレイヤーはHPが1になると全ステータスが大幅アップ……早い話がHP1の時だけめちゃくちゃに強くなれるスキルである。


 HP1の状態で戦闘を行うのが無謀ということくらい、いまさら言わなくてもわかるだろう。


 覚えるのが面倒くさい、効果は強力だが使いにくい、だから使用者が少ない、それが”窮鼠の牙”である。


 でも俺は使っている。


 なぜならピンチになると能力が覚醒する感じがカッコいいからだ。


 俺の回避主体の戦闘スタイルともそれなりに相性が良い。


 死避けのお守りを装備しているのも、窮鼠の牙の発動条件を満たしやすくするためである。


 普通に戦っていると、HPが1だけ器用に残るなんて場面は滅多に無いのだ。


 ……と、さっきの勝負の最終局面におけるカラクリを説明すると、アカツキはなるほどと頷いた。



「色々と考えているのね。戦闘中の目眩ましといい、昔のあなたより小賢しくなってる」


「この三年間、廃課金勢を相手に勝てる方法を模索していたからな。それに、変わっているのはそっちもだろう?」


「え?」


「昔より、戦うのがうまくなっていた。俺の攻撃をギリギリで避けたりさ。課金装備の差がないのに、引き分けに持ち込まれるとは思っていなかったよ」


「……この三年間、課金装備の力がなくとも戦えるよう、色々と頑張ったから」



 褒められたアカツキは、軽く頬を赤らめ視線を逸らし、金色の髪を指先でくるくるといじり始める。


 そういう反応されると褒めたこっちも恥ずかしくなるんですけど。


 また、しばらくの沈黙。


 ……いかん、これじゃいつもと変わらない。


 どうにかこうにか、俺はセリフを捻り出す。



「……さっき戦ってて、どうしてお前に勝ちたかったのか、そもそもの理由を思い出したんだ」


「……理由?」


「三年前、俺とお前の間には絶対的な差があった。金のかけ方が違っていたからな。俺はいつも足手まといだ。だから、アバターの性能差なんてものともしないくらい、実力だけでお前に勝てるくらい、すげえ強くなれれば、また一緒に遊べるようになるんじゃないかと思っていたんだ。ああ、そうだ。思い出した」



 忘れていた、最初の気持ちを。



「俺は、またお前と並んで一緒に遊びたくて、だからお前に勝たなきゃと思っていたんだ」



 そのために、出来る範囲でアバターを強化し、実力を磨いて。


 俺の話を聞いていたアカツキは、くすりと笑う。



「馬鹿みたい」


「ひでぇ!?」


「ふふっ、いえ、あなたじゃなく……あなたもかなりの馬鹿だと思うけど……私のことよ。なんで課金に手を出したのか、思い出した」


「他の廃課金勢に負けたくないから、だろう?」


「それもあるけど、一番の理由はあなたよ、カネツグ」


「俺?」


「私はゲームが下手だった。あなたと一緒に遊んでいると、いつもこっちは足手まとい。その差を少しでも埋めたくて、少しずつ課金でアバターを強化し始めたの。そうでもしないと、私の実力じゃあなたと並べなかったから」


「知らんかった……」


「言ってないから。その後、廃課金勢に負けたのが悔しくて課金額が増えて、ギルドメンバーの期待に応えようとして、また課金額を増やして……そうしていたら、あなたが私から離れていってしまった」


「そりゃお前、あの頃はギルドメンバーの目とかあったし。なんで無課金勢がこのギルドのサブリーダーやってるの? みたいな。それに、リアルの方でも色々あって少し弱ってたんだよ」


「……リアルで何かあったなんて、聞いてないわ」


「言ってないもん。……あんまり思い出したくないんだけどな、小学5年生くらいの頃から、他の生徒に色々と言われてたんだ。あいつは東雲の飼い犬だ、ってな」


「飼い犬……?」


「金持ちにしっぽ振って餌を貰ってるから飼い犬、なんだとさ」


「なによそれ!? 私はそんなつもりは……!」


「わかってるよ。俺だって金持ちだからって理由でお前の友達やってたわけじゃないしな。……けど、小中学生レベルのメンタルには周囲の陰口がキツくってな、あの頃の俺はお前に対して、えーと、れ、れい、れ……」


「劣等感?」


「それ! 劣等感を感じていたらしい。それが三年前に爆発して……」


「……あの時のあなたがトゲトゲしかった理由がわかったわ」


「あれは、今にして思えば完全に八つ当たりだったな。ごめん」


「いいわ、三年前の話だし。それにあの時は私も色々と言っちゃったし」


「嫉妬深い貧乏人がっ! て言われました」


「うぐっ! ……わ、私も廃課金勢相手にギリギリで戦ってたから、イライラしてたのかも。ごめんなさい」


「許した」



 二人一緒に、昔みたいに笑い合う。



「……今にして思うとさ、確かに馬鹿だな、俺たち」


「……そうね」



 ふと後悔の滲んだ表情を、アカツキは右手で覆う。



「お互い、一緒に楽しく遊んでいたいだけだった。それなのに……」



 アカツキは、少し恨めしそうな目をしてこっちを見る。



「本当に、なんで三年間も仲違いする羽目になってるのよ、私たち?」


「……お互い、意地とかあったんじゃないの?」


「他人事みたいに言うわね」


「三年ぶりに本気で戦って……いや、遊んでみて、こうして話をしてみて、それで色々とスッキリしたというか。おかげで客観視ができている」



 友達とずっと一緒に遊びたかった。


 そのために、対等な力を身につけたかった。


 お互い、最初に考えていたことは同じ。


 長らくまともに喧嘩せず、ろくに話をすることもなかった。


 だから、決裂の時の感情を延々と引きずり続けてしまっていたが。



「……なあ、天音」


「……なに、兼続」


「良ければ、また俺と一緒に遊ばないか?」



 俺は彼女に手を差し出す。


 彼女は、久々に俺に笑顔をみせて、



「返事、必要かしら?」



 その手を握り返してくれた。

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