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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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脳筋騎士と小賢しい忍者。

 アカツキの戦術は非常にわかりやすい。


 重くて威力の高い武器を力任せに振り回す、ただそれだけの超攻撃特化戦術――いや、戦術というほどのモノか、これ……?


 ともかく単純ということだ、しかしそれゆえに恐ろしい。


 並のアバターが大剣の一撃をまともに食らえば防具の上からでも致命傷を受ける。


 ましてや俺のアバター”カネツグ”は、防御を捨てた機動力重視の軽装備。


 彼女の攻撃を耐えられるわけがない。


 だから”回避”だ。


 振り下ろされる大剣をギリギリで避け、そのまま巨大な刃の真横を駆け抜ける。


 アカツキの懐へと一気に飛び込み、首を狙ってカタナを一閃。


 かつての彼女はその戦力の多くを課金力に依存していた。


 レベルアップによるステータス成長はSTRに注ぎ込み、攻撃力と装備重量の限界値を強化。


 代わりにVITやAGIが低くいので、脆く遅くなるはずなのだが、その欠点は課金アイテムによるステータス強化と課金装備の超性能により補う。


 これによりアカツキは一撃の火力も防御力もスピードも兼ね備えた最強の近接戦用アバターと化す。


 その高性能ですべての攻撃を真正面から受け止め、立ち塞がる敵を一撃で粉砕していくのが、彼女のやり方だ。


 そんな”普段”の彼女相手では、例えカタナで首を跳ねようとしても、逆にこっちの刃が折られてしまう。


 だが、今のアカツキは課金による強化を失っており、またR0のルールに従いアバターも初期化されてからの育て直し。


 ゆえに、性能は著しく弱体化しているはず。


 装備に関しては、果たしてどこで手に入れたのか、俺が使っているものよりも数段高品質な高級品を使っているようだが……課金装備ほどの性能はないだろう。


 この条件なら、俺がアカツキに負けるはずはない。


 初撃のクリティカルヒットで、俺の勝ちだ。



「ちッ!」 



 しかし、俺のカタナが肌に触れようとした直前、アカツキがわずかに上半身を動かした。


 狙いが逸れ、必殺の刃は彼女の鎧の首当て部分に弾かれる。


 あれ?


 昔の彼女の反応速度なら、今の一撃を回避できなかったはず。


 俺は素早く体勢を整え、今度はアカツキの額を貫こうと突きを繰り出す。


 これも昔の彼女相手なら確実に当たるはずの一撃。


 しかし、



「遅いッ!」



 アカツキは首を横に倒して、きらめく刃を避けてみせた。


 カタナは彼女の金髪をわずかに切断しただけ。


 今度はこちらの番だと言わんばかりに、アカツキの瞳が鋭く光る。


 先ほどの振り下ろしで切っ先が地面に埋まった大剣。


 それを無理矢理に横方向へ振り回す、俺の胴体を狙っての斬撃。



「やばっ!?」



 俺は慌てて地面を転がる。


 頭上を刃が通り過ぎていく。


 まだ安心できない。


 アカツキは重量と慣性をものともせずに、腕力によって無理やりに大剣を制御、頭上へと振り上げる。


 そして、



「はぁッ!」



 掛け声とともに、重力と腕力に任せ、その刃を俺に目掛けて一気に振り下ろした。




「っと!?」



 俺は後ろへ跳んで、致命的な威力を秘める一撃をギリギリで回避。


 わずかに切っ先がかすった。


 バリアスーツの前面が縦に切り裂かれ、わずかに肌が露出する。


 HPが少しだけ減少したが、致命傷には程遠い。


 問題なし、まだまだ戦える。


 開戦直後と同様、俺たちは再び距離を取って向かい合う。


 少しだけ、お互い笑みがこぼれた。



「……ははっ、驚いた。俺の攻撃、少しは見切れるようになったんだな」


「ふふっ、当然じゃない。この三年間、私が何をしていたと思っているの?」


「課金」


「……否定はしないわ。しないけど、それだけじゃない。私だって、自分の実力を磨いていたのよ。アバターの性能に頼らなくとも、あなたに勝てるように」



 なるほど。


 課金により強化されたアバターの性能に頼るだけの廃課金勢とは――三年前の彼女とは、違うらしい。


 ならば、こちらもこの三年間で身につけた、彼女の知らない手を使おう。



「奇遇だな、俺も前とは少し変わったんだ。課金装備との性能差を覆すために、金をかけずともお前に勝てるように――」



 腰のポーチから”それ”を取り出し、



「――こういう小細工を弄するようになったのさ!」



 勢い良く、地面に叩きつけた。


 次の瞬間、それは――フラッシュ・グレネードは、辺りを真っ白に染め上げる。



「きゃあっ!?」



 悲鳴。


 フラッシュ・グレネードが炸裂する瞬間に瞼を閉じた俺が次に目を開いた時、そこには閃光に怯むアカツキの姿。


 いつか廃課金勢に勝利するために――アカツキを倒すためにと使い始めた搦め手。


 結局は性能差を覆せず、廃課金勢相手では逃走手段の一つとして機能するだけだったが、今は違う。


 閃光による視界への奇襲は、俺の攻撃が通じる相手に致命的な隙を作らせる一手となった。



「この勝負はもらったぞッ!」



 すかさずアカツキに斬撃を叩き込むため、俺は前方へと跳ぶが、



「この……程度でッ!」


「なっ!?」



 アカツキの予想外の行動に意表を突かれ、間抜けな声を漏らしてしまった。


 彼女は、あろうことか俺と同様、前方へと突撃してきたのだ。


 それにより距離の詰まる速度が加速、俺は斬撃を打ち込むに絶好のタイミングを逃してしまった。


 破れかぶれに振るった刃は、運良く彼女の首筋を切り裂き、ダメージを与えることには成功。



「痛ぅ!?」



 しかし、俺もアカツキの体当たりをまともに食らってしまう。


 勢いと装備重量を乗せた重い一撃。


 俺の身体はその威力によって、後方へと勢いよくふっ飛ばされた。



「がはっ!?」



 肉の壁が俺の身体を受け止めると同時、血管を破裂させ血しぶきを撒き散らす。


 俺自身が大量出血したかのように、身体が赤色に染まった。


 FDVRの世界は痛覚をも再現する。


 その痛みは現実とは比べ物にならないほど鈍感だ。


 剣で切られようが銃で撃たれようが、感じるのは最大でも”おかんの拳骨並”と表現される程度の痛み。


 それでも痛いものはやっぱり痛い。


 全身を苛む鈍痛に顔を歪めながらも、追撃に備え慌てて立ち上がる。


 一方、アカツキの方も動きを止め、斬られた首筋を手で抑えていた。



「く、ぅ……ッ」



 深く息を吐き、呼吸を整え、痛みを落ち着かせて――それから元通り、大剣の柄を両手で握り、構える。


 彼女の頭の上に浮かぶHPゲージは、今の一撃で半分ほど消し飛んでいた。


 やはりVITが低いらしく、HPは非常に低い。


 防御の隙間から攻撃を打ち込めれば簡単に倒せる。


 まあ俺の方も体当たり一発でHPゲージが3分の2ほど吹っ飛んでおり、人のことは言えないくらいに脆いのだが。


 ……それにしても、あの体当たりには驚いた。


 昔のアカツキなら、目を潰された時点で完全に動けなくなっていたはず。


 咄嗟に行動を決定しこちらを迎え撃ったあの状況判断力も、昔の彼女にはなかった力だ。


 本当に、課金装備なんてなくても、強い。



「……閃光手榴弾ね、確かに私の知らない手だわ。昔のあなたはもっと単純だったのに」


「成長期なのさ、俺は」



 動揺を悟られないよう、俺は軽口で応じた。



「……これじゃ、ますます遠くなるじゃない」


「え?」



 ふと、アカツキの表情に影が差す。


 何かを思い悩んでいるような顔だったが、すぐに首をぶんぶんと振って、元の目つきを取り戻した。



「やっぱり、本気でやらなきゃ勝てなさそうね」



 本気。


 とうとう来るか。


 それをやられる前に決着をつけたかったのだが。


 アカツキが大剣を地面に突き刺した。


 肉の床が撒き散らす血の噴水に濡れながら、アカツキは指先でメニュー画面を操作。


 自らのインベントリから、あるものを取り出す。


 彼女の背中に光が舞った。


 エフェクトと共に電子データが形を得ていく。


 やがて光が収まった時、彼女が背負っていたのはもう一本の大剣。


 今まで使っていた大剣を右手に、新たに出現した大剣を左手に取り、左右の刃を肩に担ぐように。


 極端な筋力特化のステータスが可能とする、脅威の大剣二刀流。


 それがアカツキの、本気の姿だ。

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