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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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サイレントな丘。

 放棄された研究施設というだけあって、カサイBSL内部はなかなかの散らかりっぷりだった。


 壊れたイスの残骸が転がっていたり、割れたガラスが散乱しているくらいは当たり前。


 酷いところだと、剥がれた壁や崩落した天井で廊下が塞がれ、通行不能になっている。


 元は病院のような清潔感のある施設だったのだろうが、今や見るも無残な廃墟でしかない。


 俺はガラス片をジャリジャリと踏み砕きながら、その廃墟の探索を進めていく。


 切れかかっている電灯が、チカチカと点滅して鬱陶しい。



『なかなか雰囲気あるねぇ。おっかない』



 耳の通信機から不安そうなエニグマの声。


 ドローンアイの視界を通して、施設内に漂う不穏な雰囲気を敏感に感じ取っているようだ。



「ふと照明が消えて、次に明かりがついた時には目の前にバケモノがドーン! ってなるところだよな」


『やめてよそういうの。キミと違ってホラー耐性はないんだ、ボクにはね』



 エニグマは、俺の冗談に少し怒った声で返してくる。


 怒りマークをモニター顔に浮かべている姿が目に浮かぶ。


 と、唐突に施設内の明かりが――どころか、ドローンアイに装備されている暗所探索のためのライトまでもがふっと消えた。


 視界が闇に塗り潰される。



『ギャー!?』


「うるせえ!?」



 突然の異変に驚き、エニグマが悲鳴を上げた。


 幸い、施設の照明もドローンアイのライトもすぐに復旧する。



『び、びっくりした! いきなりライトが消えるんだもん!』


「この程度で驚いてちゃホラーゲームはやってられないぞ?」


『そうやってホラーゲーマーがエクストリームに恐怖を求め続けたからジャンル全体が衰退したんだよ?』


「耳が痛い」



 ホラーゲームが数を減らしたの、俺みたいな連中のために怖くしすぎて新規が減ったのが原因の一つだもんな……。



「でもなぁ、あまりにホラーに慣れすぎて、もう”こういうタイプ”の演出じゃ驚くことすらできないし……」



 俺は明かりが復旧した後、目の前に出現していたものを見て言う。


 

『えっ』



 エニグマのドローンアイが、俺の視線の先を見る。


 白すぎる肌をした半透明の人影。


 両目と口の部分に闇色の穴を空けた、不気味な顔を持つ者たち。


 いわゆる”幽霊”の群れがそこにいた。



『ギャアアアアアアアアアアアアアッ!?』


「うるせえッ!?」



 さっき以上の音量で、エニグマの絶叫が通信機から響いてきた。


 耳がキンキンする。



「うー……そんなに怖がることもないだろう、だってただのデータだぞ?」


『データで済んだらお祓いはいらないんだよ!! 怖いもんは怖いの!!』


「そうかなあ。慣れてくるとかわいく見えてくるもんなんだが。ほら、こっちに近づいてきた」



 幽霊たちが音もなくスーッと近づいてくる。


 俺は餌に寄ってくるかわいらしい小鳥の群れを見るような愛らしい気持ちで、その接近を迎え入れた。



「おーよしよしよしよしいい子いい子」


『幽霊を手懐けようとしないで?』



 そこまで嫌わなくてもいいじゃないか、幽霊だって元は人間なんだぞ。


 話してみれば意外と良いやつらかも知れないし、と、そんな穏やかな気持ちで彼らに手を差し出す。


 その手が彼らの半透明の手と重なった瞬間、俺のHPがものすごい勢いで減り始めた。



「ギャアアアアアめっちゃライフスティールしてくる!? 敵だコレッ!?」


『どう見ても敵だよ正気にもどれ』


「だってホラーゲームとかだとプレイヤーに敵対しない善良な幽霊系NPCがいたりするんだもん! こいつらもこの施設であった何かを訴えかけようとしている悲しくも心優しい幽霊の類かと思ったんだもん!」


『これだからホラーゲーマーは! いいから応戦もしくは逃げ!』


「フッ! こういう時のために買っておいたのさこちらの商品!」



 俺はバックステップでエネミーの群れから距離を取り、インベントリ内のアイテムを使用する。


 手にしたカタナ”弐型キルブレイド”の鍔に、小型の機械を装着、電源をオン。


 すると、カタナの刀身が青白い雷光を帯びて輝き始めた。



「属性付与完了! これでこいつはビリビリキルブレイド!」



 俺が帯電する刃の切っ先を向けると、幽霊たちは雷を恐怖するかのように後ずさる。


 こういう場面に備えて買っておいた甲斐があったというもの。


 幽霊系を始めとした”実体を持たないエネミー”に対し、カタナや銃による物理攻撃は効果がない。


 その手の敵は物理以外の、例えば炎や雷といった属性を持つ攻撃でしか倒せないのだ。


 では幽霊を前にした時、カタナ一本で戦うプレイヤーは逃げるしかないのか?


 否。


 例えば、炎を放つカタナのような”属性を帯びた武器”が存在しているので、そちらに持ち替えれば良い。


 そういった属性武器を持っていなくとも、武器に属性を付与するアイテムがあるので、それを使えばオーケー。


 俺が使ったのは後者、”超電光システム”という、武器に雷属性を付与するアイテムだ。


 これを武器に取り付けるとあら不思議、手にした刃は雷光を纏って雷属性へと早変わり。


 ただし機械のバッテリーが3分間しか持たないということで、効果時間も3分の時限式である。


 よって、ビリビリキルブレイドが実体なき幽霊たちに攻撃を通せるのは3分間のみだ。


 行動は迅速に。


 俺はいつものようにカタナを構え、



「除霊開始だ!」



 と、幽霊の群れへと切り込んだ。


 敵集団のちょうど中心辺りで、円を描くようカタナを横薙ぎに振るう。


 五体ほどの幽霊が胴体を横一閃され真っ二つ、地の底に響くようなおどろおどろしい断末魔を残して消滅した。


 返す刀で残った幽霊の胸を一突き、首を跳ね、頭上から一刀両断に――と、流れるように殲滅していく。


 3分も必要なかった。



「除霊完了!」



 カタナを鞘へと戻す。


 カチンという鍔鳴りと同時、最後に斬られた幽霊があの世に送られた。



『おつかれカネツグ。うぅー、敵の断末魔が耳に残る……』


「なぁに、所詮は効果音さ。しかしこれでハッキリしたな」


『……そうだね、このダンジョンは』


「ホラー系だ」



 ダンジョンにだって世界観がある。


 ドラゴンが潜むファンタジー系の洞窟、暴走した防衛システムに守られるSF系の宇宙船、ホラーゲームの舞台のような妖しい洋館。


 基本的に、ダンジョンに出現する敵や行く手を阻むギミックは、その世界観にあわせたものだ。


 ファンタジー系ならゴーレムやゴブリンといった魔物がエネミーとして出現し、道にトラバサミのようなローテクトラップが仕掛けられていたりする。


 SF系なら銃火器を積んだドローンが敵として立ち塞がり、カードキーでセキュリティシステムを解除しないと扉が開かず先へ進めないような場面があったり。


 ダンジョンの世界観とは、探索をするにあたって非常に重要な情報の一つである。



『……っていうか、いま気づいたんだけどさ』


「うん?」


『ダンジョンの入口にブラッドマーク貼ってあったよ。考えずともホラー系だね、ここ』


「アカツキに気を取られて気づかんかった……」



 ブラッドマークとは、”このダンジョンには流血などのグロテスクな描写があるのでご注意ください”と、プレイヤーに警告するための標識のこと。


 赤背景に髑髏と水滴マークという、見るからにおっかないデザインをしている。


 それが貼ってあるダンジョンはだいたいホラー系なので、その表示に気づいていればここの世界観を事前に把握できていたのだ。


 ……まあ、その見逃しで致命的な事態を招いたわけでもなし、良しとしよう。


 さて、そんなわけでいま俺たちがいるカサイBSLはホラー系ダンジョンだと判明した。


 敵の種類は幽霊とかゾンビのような、いわゆるアンデッド系だろう。


 道中には心臓に悪いビックリドッキリ系のトラップが仕掛けられているに違いない。


 前者はいくらでも対策できる。


 アンデッド系は物理攻撃の通りが悪いが、幽霊なら属性攻撃全般、ゾンビも炎でよく燃えるなど、だいたいが属性攻撃に弱い。


 死後硬直のためか動きも鈍いものが多く、逃げるのも容易。


 それなりにUNOに慣れているプレイヤーならば苦戦する相手でもない。


 むしろ問題は後者のトラップだろう。


 プレイヤーの精神はゲームシステムで強化できず、ダンジョンのギミックが与えてくる恐怖への対策は存在しない。


 完全にプレイヤーのメンタル勝負だ。


 恐怖に耐えきれなかったプレイヤーは攻略を断念せざるを得ないだろう。



「……フッ、フフフフッ!」


『どうしたの? 気持ち悪い笑い方をして』


「気持ち悪い言うな! カッコいいでしょ! ……いや、勝利を確信したのさ。そう、アカツキとの勝負は俺の勝ちだ」


『カネツグ、ホラーは得意だからね』


「余裕オブ余裕! 対してアカツキは死ぬほどホラーが苦手! つまりこのダンジョン、俺のホームであいつのアウェー! 負ける理由が見当たらないぜ!」



 群虫アグロを相手にした時もそうだが、その手の恐怖系に対して仮想世界の俺はほとんど無敵。


 道中に襲い来るであろう恐怖トラップも俺にとっては子供騙しである。


 今は俺より先へ進んでいるアカツキだが、彼女はそのうち恐怖で足が止まるはず。


 よって、探索速度はこちらが上となる。



「見てろよアカツキ、俺の強さを見せちゃるぜ……!」



 意気揚々、俺は施設の奥へと進んでいく。

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