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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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働きすぎには注意しましょう。

 俺の実力を持ってすれば、ベルゼブの使役するミニオンの掃討など1分と経たずに終了する。


 虫さんたちの攻撃はこっちに1ダメージしか通らず、対してこっちはワンパンで撃破。


 それこそ無課金勢と廃課金勢並の能力差があるのだ、負けるわけがない。


 虫の軍団を殲滅し終えた俺は、最後にベルゼブを討ち取ろうと、彼に刃を向けた。


 ミニオンを主力としたストラテジスト系の戦闘スタイルを取るプレイヤーは、ミニオン召喚スキルを習得するのに必要なステータス――DEXとINT、それとLUCに、成長のためのポイントを全てつぎ込んでいる場合がほとんどだ。


 結果、アバターの能力は低STR、低VIT、低AGI――弱く、脆く、遅いという、直接戦闘力が著しく欠如したものになってしまう。


 そんな性能のアバターで戦っても無意味と、武器すら持たないストラテジストも少なくない。


 案の定、ベルゼブもミニオン以外の戦闘力は持っていないようだった。


 配下を失った黒ローブの男は、刃を突きつけられても抵抗すらせずに、ただ力なく笑っている。



「く、くく。まさか我がダーク・クリーパーズが破られるとはな……」


「言い残すことは?」


「……昔話を聞いていけ」


「うん?」


「あるところに一人の男がいた」


「急に語りだしたぞこいつ」


「男はとある会社に勤務していた。害虫駆除系の商品で日本国内シェア1位を誇る会社だ」


「害虫駆除商品シェア日本1位でどこの会社か特定できるんですけど!?」



 うちも毎年、蚊取り線香などでお世話になっています。



「男の仕事はあの黒い虫対策の商品開発だった。恐ろしく生命力の高いその虫を討ち滅ぼすための研究はやりがいのある仕事だった。男は気の遠くなるほどの長い時間、仇敵たる黒い虫と向き合い続けた。何ヶ月も、何年も。具体的に言うと4年と3ヶ月」


「言うほど気の遠くなるほど長い時間か?」


「しかし、奴らを滅ぼすことはできなかった。奴らはすぐ薬物に耐性をつける。新たな薬を開発しても、次の年には効かなくなる。そう、男がどれほど努力しようと、奴らは絶対に滅ぼせない。男は苦悩した。自らの仕事の意義を見失いかけた。それでも日々を生きるため、ひたすらに仕事を続け――、ある日、気づいたのだ」



 カッと、ベルゼブは目を見開き、こちらが気圧されてしまうほどの魂を込めた声で、叫ぶ。



「あの虫こそが神なのだとッ!」


「なに言ってんのこいつ」


「古より幾度もの絶滅危機を生き延びて永劫に存在し続ける究極の生物! 滅ぶことなき不滅の種族! それを人の言葉で表現するならば! ……そう、神」


「なに言ってんのこいつ」


「俺の戦いは神に挑もうとする愚かな行為だったのだ。俺は己の所業を悔いた。そして、俺はもう一つ気づく。神に歯向かう愚かな種、すなわち人間こそ、俺が駆除すべき真の悪であったということに!」


「なに言ってんのこいつ」


「だから俺は人間駆除剤を作り上げるため、この戦いに参加した。勝たねばならなかった。賞金の一億円を人間駆除剤の研究費用とするために。そして人間を完全に駆除し、この母なる地球の支配権を黒き神へと返すために。……しかし、キサマ、そう、カネツグよ」


「いきなり俺に話をふらないで?」


「我が神の軍団をたやすく葬るお前の姿を見て目が覚めたよ。――やはり、黒いアレは神ではないのだなと」


「そりゃそうだよ」


「……カネツグ、俺は一億を手にするに値しない男だった。しかしお前ならば……! 俺に勝利したお前ならば、一億を手にすることができるかもしれん!」


「買いかぶらないで?」


「頼む、カネツグ。一億を手にしてくれ。そしてその一億を元手に、俺の、俺たちの夢である、究極の害虫駆除剤を作り上げてくれ。それだけが俺の望みだ……!」


「自分の夢に俺を巻き込まないで? っていうかまだイベントも始まったばかりだろう、頑張ればあんたでも一億を取れるって。がんばって」


「フッ、無理だな。俺には時間がないんだ。……病院に、行かねばならない」



 黒いアレが神とか言ってた時とはうって変わって、ベルゼブは弱々しい表情を浮かべて首を横に振る。


 ハッと、俺は彼の事情を察した。



「まさか何かの病気で余命幾ばくもなく……!?」


「いや、仕事のしすぎでノイローゼになっていそうだから心療内科でカウンセリングを受けてこいと、上司に厳命されているのだ。そのせいでUNOにログインできる時間も減るから頑張っても一億に手が届くかどうか……」


「上司の判断が的確すぎる」



 ここまでの発想と発言、仕事に疲れて頭がおかしくなってる人のそれだったもんな……。



「……そういうわけだ。俺たちの夢、頼んだぞ、カネツグ」



 語り終えると、ベルゼブは憑き物が落ちたような穏やかな表情へと変わる。


 自らの運命を受け入れたのだろう。


 俺は、そんなベルゼブを、



「お断りします!」



 の、一言と共に切り捨てた。



「そんなー」



 ベルゼブが死体に変わる。


 5分後にリスポーンするその時まで、この場に転がっていることだろう。



「強敵だった」



 戦闘そのものより、その後の会話の方が凶悪だとは思わなかった。


 とにかく、道を塞いでいた障害は排除できたので、俺は再びたいまつ片手に先へと進む。


 道の途中で出現するエネミーは、やはり簡単に倒せる程度の相手ばかりだった。


 特に問題なく歩き続けて、およそ10分。


 ついに俺は廃坑道の出口へと辿り着き、長い暗闇を抜け出した。



「……よし! 抜けた!」



 俺は外の空気を吸って軽く深呼吸した後、ここからでも次の街は見えるだろうかと目をこらす。


 道の先、近代的なおもむきのビル群が森のど真ん中に悠然とそびえ建ち、一つの都市を作り上げていた。


 ……廃坑道まではファンタジーな雰囲気だったのに、



「どうなってんだよこのワールドの世界観……!?」



 まあ混沌カオスはUNOのお家芸ですけど。

TIPS:働きすぎ

勤労は美徳かもしれませんが、働きすぎは体と心によくありません。

ほどほどに休みを取るようにしましょう。


自分を大切にね。

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