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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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超序盤で登場する(理論上は)最強の敵!

 たいまつの炎を頼りに、坑道内の暗闇を少しずつ進んでいく。


 普段は左手に鞘を持ち、右手で抜刀するというスタイルなのだが、たいまつで片手が塞がっているとその”いつもどおり”ができない。


 仕方がないので、鞘はサムライのように腰に差し、左手にたいまつ、何かあったら右手で抜刀。


 このスタイルで闇の中から飛び出してくるエネミーにも問題なく対処できているのだが、やはり普段と違うやり方は落ち着かない。


 あらためて、サポートしてくれるフレンドのありがたみを噛みしめた今日このごろ。


 と、暗闇の先に光が見えた。


 坑道の出口、そこから差し込む太陽光……にしては、少し頼りない輝きだ。


 実際にその光に近づいていけば、すぐに正体が判明する。


 トロッコや石材など、鉱山関連の資材が置かれた空間に出た。


 恐らくダンジョンの中間地点なのだろう、広めの空間は見通しも良く、ここで休憩していってくださいと言わんばかりの場所。


 光の正体は、その空間の壁面で輝くカンテラの炎だ。



「くくく……また愚かな人間が一人、我が領域に紛れ込んだか……」



 邪悪な笑い声。


 見れば、積み上げられた木材の上に腰掛ける男が、けたけたと笑っていた。


 顔にどこかの民族の呪術師のようなメイクを施したイケメンアバター。


 自らを闇と同化させるための黒いローブを身に着けており、いかにも魔術師といった風貌。


 そいつは正気なのかもわからないぐるぐるとした目で、俺の顔を凝視している。


 俺はそいつに問う。



「あんたがここを封鎖しているプレイヤー?」


「くくく……そうとも。俺の名はベルゼブ、この地を支配する者……」


「うわ超名前かっけえ! 悪魔じゃん! 七つの大罪じゃん!」


「くくく……そうだろうそうだろう……カッコいいだろう……!」



 ちょっと上機嫌になりつつ、悪魔の名を持つベルゼブさんはスッと立ち上がり、ビシッと俺を指差す。



「さて、愚かなる人間よ! この地を通ることは叶わん! 大人しく引き返すが良い!」


「断る。俺はこの先に行かなきゃならないんだ」



 効率的なレベル上げのために!



「くくく……愚かな、実に愚かな。ならば、これ以上の言葉は不要……! 恐怖を操る我が手にかかり、闇の中に沈むが良い!」


「フッ、やれるもんならやってみな……!」



 明かりのあるこの空間ならばと、俺はたいまつを投げ捨て、左手に鞘を持つ。


 レベルの上昇により成長したAGIを活かして敵の懐に飛び込み高速の抜刀、首を斬りつけクリティカルダメージでベルゼブを撃破――と、頭の中でこれからの動きをシュミレートしていた。


 しかし、その時。


 カサ、と。


 背後から不意に聞こえた物音に反応し、俺は意識をそちらに向ける。


 何もいない、あるのは闇だけ。


 カサカサ。


 再び、今度は複数の物音。


 咄嗟に飛び退き、音の発生源から距離を取る。


 しかし、やはりそちらには何もいない。


 なんだ、何が起きている?



「くくく、もはや逃げられん。キサマは我が恐怖の軍団の掌中にある……ふははははは!」



 ベルゼブが、勝ち誇った高笑いを響かせる。


 軍団、ということは――この男、エニグマと同じミニオン使いか?


 ならばさっきから聞こえる物音は、男の使役するミニオンの発したもの。


 だが、パッと見、敵の姿はない。


 いったい、何のミニオンを……?



「さあゆけ! 我が漆黒の悪魔たちよ!」



 ベルゼブの指揮に従い、闇の一角からそいつがカサっと姿を表した。


 それは、虫だ。


 虫が苦手な方のために具体的な名前は避けるが、黒いアレである。


 しかも人の顔くらいのサイズ。


 仮想世界だから存在できる、かなりデカいやつだ。


 そんな虫が、先ほどのヤツに続いて闇の中からわらわらと出てくる。


 ベルゼブの従えるミニオンの正体、それはデカい虫の群れだった。



「ま、まさか、これは……!」


「ふはははは! キサマも聞いたことくらいはあるだろう! UNOにおいて理論上最強とされたこの戦術……”群虫アグロ”を!」



 群虫アグロ。


 ベルゼブの言う通り、それはUNOにおいて理論上最強とされる伝説の戦術だ。


 不快害虫という言葉がある。


 農作物に被害を与えたり、毒を持っていたりする害虫とは異なり、それらの虫は人間に直接的な被害を与えない。


 けれど見た目がキモくて人間の精神を強烈に害してくる不快な虫、それが不快害虫。


 そう、見た目がキモい害虫なんて概念ができるほどに、虫というヤツは外見だけで人間の精神にダメージを与えてくる存在なのだ。


 この虫の持つ精神攻撃力に着目した戦術こそが群虫アグロ。


 プレイヤーが使役できるミニオンの中には虫系も多くいる。


 その多くは蝶やカブトムシのような、男の子に人気のあるタイプの昆虫をモデルとしたもの。


 しかしごく少数、例の黒いヤツのようにアレなのをモデルとしたミニオンも存在している。


 群虫アグロとは、それ系の見るだけで精神ダメージを受けるような虫系ミニオンの軍団をけしかけ、敵対プレイヤーを恐慌状態に陥らせたまま一方的にボコり倒し勝利をもぎ取るという、恐るべき戦術なのだ。


 どれだけレベルをあげても、どれだけ強力な課金アイテムで武装しても、アレな虫を見た時のプレイヤーの精神ダメージを防ぐことは出来ない。


 よって、初心者も上級者も、無課金勢も廃課金勢も、群虫アグロの前には等しく無力。


 あらゆる敵を蹂躙する最強にして最悪、まさに”伝説”の最強戦術。


 ……そう、”伝説”に過ぎない。


 群虫アグロはあくまで伝説上の存在、理論で語られるのみの戦術である。


 この戦術を実行できたものは未だかつて一人もいない。


 なぜならば、この戦術には致命的な欠点があったからだ。


 それは、群虫アグロを実行する側もキモい虫の群れを見なければならないという点。


 虫を見た時の精神ダメージは、初心者にも上級者にも、無課金勢にも廃課金勢にも、そして敵にも味方にも等しくばらまかれる。


 敵対者が恐慌状態に陥るほどの虫の群れは、召喚した側の精神にも深刻なダメージを与える諸刃の剣だ。


 この自らに降りかかる精神ダメージに耐えられる者がおらず、それゆえに群虫アグロは実行することの出来る者が一人としていない机上の空論と化し、UNOの歴史の闇に埋もれていった。


 だが。


 いま俺の周囲を取り囲む黒いアレの群れは、その伝説の戦術を行使するものが現れたという証明に他ならない。


 戦慄と共に、俺はベルゼブを見た。



「ま、まさか、お前は……!」


「ふはははは! そう、我こそは!」



 群虫アグロを行使するために必要なたった一つの素質、それを備えた人間。


 その者は、恐れと共にこう呼ばれる。



「”虫が平気な人”か!?」

「”虫が平気な人”だ!!」



 ”虫が平気な人”ベルゼブ。


 彼の使役する虫の大群は、存在するだけで他者を恐怖させる最恐の軍団だ。


 廃坑道を突破できる者がいなかったのも当然だろう。



「さあ、キサマも他の人間どもと同じく! 闇に潜みし者たちの贄となるがいい! かかれ我が暗黒のサーバント!」



 俺を取り囲む黒い虫が、ガササと一斉に羽を広げた。


 そのうちの一体が、俺の顔面をめがけて飛びかかってくる。


 飛来する黒き弾丸。


 あらゆる敵をキモさで撃退する最強の一撃。


 その脅威に対し、俺は空いた右手を伸ばして。



「ほい」



 ガシッと、黒いアレを素手でキャッチした。


 一般的に触るどころか見ることすら嫌がられるアレを巨大化させたものを、素手で。


 その行為に、周りを囲んでいた黒いアレたちがピタッと動きを止めた。


 ベルゼブは高笑いを止め、呆然とした後、



「……馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!?」



 信じられぬと絶叫した。


 俺は右手でガッチリホールドしたアレを握りつぶす。


 なんかアレな感じの汁が飛び散った。



「馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ! ありえん! 素手で!? 現実のものより巨大なアレを!? そんなことが可能な人間、俺以外にいるはずは……ッ!」



 いや、と。


 ベルゼブが、まさか、と呟く。



「まさか……まさかまさか! キサマ、キサマは、キサマも――ッ!?」



 俺は、キメ顔で応じる。



「フッ。そうとも、俺は――」



 俺たちは、同じ言葉を口にした。



「”虫が平気な人”かッ!?」

「”虫が平気な人”だッ!!」



 そう、俺たちは同じ力を持った者。


 群虫アグロの精神ダメージを無効化できる、唯一の素質を持った同類。


 俺もまた、限定的ではあるが虫が平気な人である。

TIPS:(理論上)最強

使いこなすのが難しいけど使いこなせれば誰にも負けない、みたいな”条件付きの最強”のこと。

最強状態になるための条件が厳しすぎて最強になれない場合がほとんど。


UNOでは群虫アグロがまさにそれ。

巨大な黒いアレの群れと一緒に行動しても平気だぜ! という方はUNOで理論上最強のプレイヤーになれるかも?

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[良い点] 笑いしか出てこない
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