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うちの仲間おかしい人ばっか! ~首狩りホラーゲーマーは変人だらけの仲間たちと気楽に楽しくゲームを遊ぶ!~  作者: 川里モノ
第一章:無課金勢は宿敵の金ピカ脳筋女騎士にお金をかけずとも勝てますか?
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姉御感。

 アレイスの町から森の中の道を通り、北へしばらく。


 やがて見えてくるのは岩壁にぽっかりと開いた坑道の入り口、そして坑道前の広場に設営された無数のテント。


 そのテントは、プレイヤーがとりあえずの拠点として設営することができる施設の一つだ。


 町から遠く離れた狩場などでは、移動の手間を省くために多くのプレイヤーがテントを設営し、ちょっとした町を作り上げることも珍しくはない。


 坑道前のキャンプ地では様々な姿のプレイヤーたち――剣や鎧を装備するファンタジー系の外見がやや多め――が、焚き火を囲んだり、アイテムクラフトを行ったりして、それぞれ好き勝手に過ごしている。


 しかし、一人として廃坑道の中へと向かう者はいない。


 最初の町から次の街へと向かう唯一のルートならば、もっと通過するプレイヤーが多いのが普通。


 ヤバいヤツに封鎖されているというのは本当らしい。


 ちょっとわくわくする。


 俺は鞘を握る左手にグッと力を込め、気を引き締めて坑道内に入ろうとした。



「ちょ、ちょっとアンタ! 止めといたほうがいいよ!」



 止められた。


 俺の腕を掴んで制止したのは、”姉御”って感じの顔をした、背の高い女性型アバター。


 髪を纏める頭巾に、革製のエプロン、背中のハンマー……たぶん鍛冶師系のプレイヤーだろう。装備やアイテム製作を楽しむのもUNOのプレイスタイルの一つだ。


 鍛冶師の姉御は青ざめた顔で俺に警告する。



「ここの現状を聞いてないのかい? とんでもないヤツに封鎖されているって」


「聞きましたよ」


「ならわかるだろう、ここはもうプレイヤーが通れる場所じゃない。いまね、ここで足止めを食らってるプレイヤーが集まって、山越えや迂回ルートを通る方法を模索中さ。よかったらアンタも協力しとくれ」


「フッ、そんなことせずとも、俺がここ封鎖しているヤツを倒して、ルートを開通させてみせますよ」


「……中の惨状を見ていないからそう言えるのさ。さっきも同じこと言って入っていったヤツがいるよ。知ってるかい? ”フォーハンド”って」


「フォーハンド……アカツキ!?」


「ああ。廃課金勢の中でも名の通ったプレイヤーの一人さ。課金額もプレイヤースキルも折り紙付きの」



 知ってます、三年前まで一緒に戦っていたので。


 そのアカツキが、一足先に廃坑道の中へと入っていったという。



「こ、こうしちゃいられねえ! 急がないとあいつが敵を倒しちゃう! 恐ろしい敵とやらを倒してどや顔したいのに!」


「どや顔って。……心配しなくとも、フォーハンドだってここは突破できないよ」


「えー? そりゃあないっすよー? あいつ、課金アイテム抜きでもわりと強いしー?」


「強いだけじゃダメなのさ、ここは……」



 ガチャリ、と、金属の擦れる音が廃坑道の中から聞こえてくる。


 見れば、暗闇の中から金髪の女騎士が出てくるところだった。


 顔を青くし、中ほどで折れた大剣を杖代わりにヨロヨロと。


 銀色の鎧をガチャガチャと鳴らしながら力なく歩くその姿は、まさに満身創痍。


 廃坑道の敵との戦いがどうなったのか、わざわざ聞かずともその姿を見れば一目瞭然だ。


 彼女は外の光に反応し、ふと顔を上げる。


 ちょうど坑道の入り口にいた俺と目があった。



「カネツグ!? なんでここに……!」


「ようアカツキ。……負けたのー?」


「ぐっ!?」



 俺は口に手を当てクスクスと笑う。


 アカツキは忌々しげに歯噛みするが、言い返す言葉が思いつかないらしい。


 しばしぐぬぬと唸った後、ようやく口から出た言葉は、



「負けてない! 撤退しただけ!」


「敗走の間違いじゃないのー?」


「うっさい! 滅べ!」



 額に青筋を浮かべながら、アカツキは俺の横を通り過ぎてどこかに行ってしまった。


 そうか、アカツキが負けたのか。


 ならば、攻略に成功したら俺の勝ちということでは?


 やる気が出てきた。



「よし! やるぞ!」


「話を聞いてたかい!? ちょっとー!?」



 鍛冶師の姉御を振りほどき、俺は坑道内に突撃していく。


 5秒後、大急ぎで元の場所に戻り、鍛冶師の姉御に問う。



「あの、たいまつとか売ってくれませんか?」



 坑道内は暗かった。


 UNOでは内部が完全に真っ暗闇なダンジョンも少なくない。


 そういう場所はたいまつや懐中電灯のような照明系アイテムを使うなどして、光源を確保しながら探索していく必要がある。


 アンセリス廃坑道はそういう灯りが必要なタイプの真っ暗闇ダンジョンだった。


 持ってませんでした、照明系アイテム。


 鍛冶師の姉御は呆れた顔をする。



「アンタ、準備不足はろくなことにならないよ?」


「いやーいつもは優秀なフレンドが光源を確保してくれるので……」



 いつもなら、エニグマが光源を内蔵したドローンアイを同行させてくれるのだ。


 なので俺自身は照明系アイテムを使うことが滅多に無い。


 しかし今日はエニグマ不在、自分で明かりを用意しなければならなかった。


 鍛冶師の姉御は顎を指先で抑え、んーと考えてから――うわ、思案姿がめっちゃ様になってる! イケメンだわこの姉御! 心が舎弟になっちゃう!――親指でテントの一つを指し示す。



「あっちに雑貨屋を開いてるプレイヤーがいる。そこで買うといいよ」


「あざます姉御!」


「姉御って」


「はっ! 姉御オーラがすごすぎてつい! すんません姉御!」


「なんだいその舎弟キャラ……まあいいか。ともかく、マジで坑道に入るのは止めといた方が良いと思うよ?」


「忠告あざーっす! 大丈夫っすー! 失礼しやーす!」



 俺は姉御の忠告をありがたく受け止めつつも、廃坑道に挑むための明かりを求めて雑貨屋へと向かうのだった。

TIPS:姉御

目上の女性に対する敬称の一つ。

こう呼ばれる女性は豪快だったり面倒見が良い性格をしていることが多い。

ゲームだと海賊の女親分、勇敢な女戦士など。


……男勝りだけど実は乙女だったりする。

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