勝利の栄光を俺に!
アカツキの投擲攻撃で即死してから5分後、俺はゲームのシステムに従い惑星レグルスのリスポーン地点で蘇生した。
そこからまた宇宙船でR0に移動、先ほど歩いた森の道を再び歩く。
アホみたいなところで死んだが、死んだおかげでわかったことがある。
まず、アバターのレベルに関して。
R0の外に戻された際、俺のアバターレベルは元通りの高レベルに戻っていた。
そして再びR0に入った時、アバターのレベルが2に変わる。
このレベル2というのは、モヒカンたちとの戦いで得た経験値により、戦闘中に上昇した後の俺のレベル。
R0内で上昇したアバターレベルは、R0を出入りしても再度レベル1に戻されたりはせず、そのまま保持されるらしい。
レベルに関してはR0内の数値とR0外の数値で別々にセーブされているのだろう。
もう一つ、アイテムに関して。
最初にR0に入った時、俺の持ち物は全て倉庫に送られ、下着姿で行動するハメになった。
対して、再びR0を訪れた今の俺は、モヒカンたちとの戦いで得たアイテムや装備を所持したまま。
どうやらR0内で手に入れたアイテムは、外からアイテムを持ち込めないというルールの適応外らしい。
すなわち一旦外に持ち出したアイテムも、再訪する際にはそのまま持ち込める。
つまり、R0を攻略する途中で別のワールドに移動しても、レベルダウンや持ち物没収といったペナルティはないのだ。
攻略に飽きた場合も安心して他ワールドに気分転換しに行けます。
ユーザーフレンドリー、なんて言葉を思い浮かべながら歩き続けてしばらく、ようやく先ほどの戦いがあった場所まで戻ってこれた。
道端の切り株に腰を下ろしてボーッとしていたエニグマが、俺の帰還に気づいてひらひらと手を降ってくる。
「おかえりー」
「ただいまー、まったく記念すべきR0での初デスを決めてしまったぜ」
「見事なまでにクリティカルが出てたねえ。手斧が額にぐっさり。ハロウィンの仮装かって感じ」
「あいつ投擲は苦手なんだけどな……」
あいつとは勿論、アカツキのことである。
アカツキは射撃とか投擲とか、遠距離攻撃の類が苦手だ。
昔からFPSとかガンシューティングとかも下手くそだったので、狙って撃つという行為に向いていないのだろう。
なのに先ほどの投擲は、よりにもよってまぐれ当たりのクリティカル。
なお、UNOにおいてクリティカルとは弱点部位に攻撃がヒットすることを言う。
プレイヤーアバターの場合は頭、首、心臓のあたりが該当部位。
そこら辺に攻撃を当てると、ステータスや装備にもよるが、殆どの場合は即死級のダメージが入る。
さっきのモヒカン軍団との戦いで俺がほとんどの相手を一撃で葬れていたのも、クリティカルを狙って攻撃していたからだ。
正確に弱点部位を攻撃できれば多少のステータス差などひっくり返せるのである。
……無課金装備で廃課金勢を相手にすると、額に弾丸を直撃させても弾かれたり、首を剣で一閃したら剣の方が折れたりするので、クリティカル狙いもまったくの無意味なのだが。
しかし課金装備のないR0でなら俺の弱点狙いスキルもムダにはならない。
「エニグマ、もしかしたら俺はこのワールドだとそれなりに強いのかもしれない」
「良かったねぇ、ようやく努力が報われて」
ホロリと、エニグマは涙を流す顔の絵文字をモニターに表示させながら、どこからともなく取り出したハンカチで顔を拭う動作をする。
「これなら本気で一億円を狙えたりしちゃうかもしれないねぇ」
「それは無理じゃねえかなぁ……」
「あ、そこは冷静なんだ」
「どうやってもプレイ時間とかがね……まあ、俺の目標は一億円じゃないからな」
「……カネツグの目標ってさ?」
エニグマがはてなマークをモニターに表示させる。
「もしかして、あのアカツキさんに勝つこと、とかだったり?」
「んー、まあいまさら隠すようなことでもないから言ってしまうが、そうだ」
エニグマの予想を肯定する。
「俺は、あいつに勝たなきゃならないんだ」
「昔の相棒って言ってたよね? なにがあったんだい?」
「喧嘩した。喧嘩して決裂して、それからずっと絶交状態だ。三年くらい」
「三年も。さぞや大変な大喧嘩だったんだろうねぇ」
「そりゃあもう、死人が出たからな」
「死人!?」
「決闘になって当時の俺はボコボコにされHP0で死にました」
「あ、ゲーム内の話ね!? びっくりした!」
「いやさすがにゲームでリアルの人死は出ないって。ま、それで……アイツを見返したいから勝ちたい、のかな、たぶん」
そうだ、彼女に勝利したいから、俺は強くなろうと頑張って来た。
勝って、見返して、それから……あれ、なんだっけ?
まあいいや。
「……結局、無課金と廃課金の差を埋められるほど強くはなれなかったけどな」
「そいつぁ無理ってものですぜダンナ、無課金プレイヤーを1000人集めても、ガチガチの廃課金一人には勝てないよ、この世界では」
「わかってるよ。けれどR0でなら、課金アイテムが無効化されるこの場所でなら、マシな勝負はできるはず。相手にこっちのレベルまで落ちてきてもらって勝とうとするのも微妙な気分ではあるけれど」
「課金力の差が無いほうが正々堂々、平等なルールって気もするよ?」
「そう言われたらそんな気がしてきた」
「言われて揺らぐくらいのふわふわな信念をしている……でも勝負ならさっさとやっちゃた方がいいんじゃない? キャラが初期状態になってる今、あっちの準備が整う前に戦った方が有利だし」
「いやお互い得意武器とか装備しているそこそこ万全な状態で戦いたいじゃん?」
「妙なところで正々堂々としている……」
「ともかく、俺の目的は納得できる形でアカツキに勝つことだ。それがメインでここに来た、一億円にはあまり興味がない、ということは重ねて言っておくぞ? ……貰えたらそりゃ嬉しいけどね!」
「あいあい、ボクは楽しく遊べればそれでいいよん」
「というわけで急いで攻略を開始するぞエニグマ!」
「競争には興味ないって言ったばっかりじゃん!? 急ぐの!?」
「攻略速度でアカツキを上回れば少しは悔しがらせることができるかもだし! 俺たちは常にあいつの一歩先を行くぞ!」
「ま、待ってよカネツグ!」
そんなこんなで俺たちは、最初の町へ向けて走り出す。
TIPS:レベル
何らかのモノがどのくらいの水準にあるのか表現する単位。
RPGなどではキャラの強さを表現する単位として使われる。
UNOでは下限がレベル1、上限がレベル100というオーソドックスな設定になっている。
世界には下限がレベル0だったり、上限がレベル100を越えてレベル9999まで存在するゲームもあるとか。
なお筆者が知る限りではレベル100000000(10億)のゴッドでマキシマムなゲーマーがサブカル業界最高のレベルの持ち主。
これ以上のレベルの持ち主を知っていたら情報ください。




