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うちの仲間、おかしい人ばっか!

 質問です。


 あなたは初めてお邪魔するお家で、現実世界では初対面のメンバーに囲まれた状態で、いつもどおりに食事ができますか?


 たぶん、多くの人は無理と答えるのだろう。


 しかし変人は違う。


 お友達が来るなら今夜はパーティね~、と、母さんと天音が気合を入れて準備した料理の数々がテーブルの上に並んでいるのだが。



「あら、このコロッケ、美味しいですね。箸が進みます」



 見るからに育ちが良さそうな食事姿勢の花月かづきさんが、猛烈な勢いで料理を平らげていく。



「……うま。家庭料理、久々に、食う。最近、ずっと、コンビニ飯、だったし」



 一方、育ちが悪そうな食べ方で、あかりが肉ばっかりをもぞもぞ口に運ぶ。



「やっべウチの食べる分がなくなる! 負けてらんねぇつぐ兄ちょっとソース取ってソース!」



 俺から受け取ったソースにエビフライをべちゃ漬けし、ご飯と一緒にぱくぱく食べる奈緒なお



「これ、天音のとこの新商品?」


「そうよ、はてな。正確には子会社の、だけれど。ドーファンの新作アドリア海の塩クリームケーキ」


「へぇ、塩ってわりにはあんまりしょっぱくないね。っていうかむしろめちゃあま? 美味しい」


「……って、一人ですでに半ホールも食べてるわよはてな!? 大丈夫!? モデルの仕事とか!?」


「あ、太らないかって? 大丈夫大丈夫、ボク、食べた分がぜんぶ胸に行くタイプだから」


「……滅べッ!」



 と、おしゃべりしながらケーキをパクつく天音とはてな。



「そんなに美味しそうに食べてもらえると、頑張って作った甲斐があるわね~」



 母さんがあらあらと嬉しそうに言う。


 いやー本当に、皆さん遠慮の”え”の字も知らなさそうな食欲ですね。



「少しは加減して食えよ俺が食う前におかずが一つ二つ完全消失してるんだけど!?」


「ふふふ、つぐ兄、こういう時は早いもの勝ちだぜ。弱肉強食」


「ちっ、ちくしょう! っていうか奈緒おまえいま俺の皿からエビフライ持ってっただろ!?」


「皿の上にあると思って油断したねぇ! 哀れなつぐ兄には尻尾だけくれてやろう!」


「いらねぇ!」



 そんなこんなで戦場のような食事風景である。


 初めて集まったメンバーとは思えない。


 いや、ゲーム内ではほぼ毎日のように一緒にいるけどさ。


 ともかく、あっという間に食べるものはなくなって、あっという間に食事は終わる。


 食後、後片付けは任せてとキッチンにこもる母さんの言葉に甘え、俺たち六人はあらためてリビングのテーブルを囲む。



「いやーしっかし聞いてた通りアルっち……じゃなくてあかりっちマジで背が高いね! 何センチ!?」


「おい奈緒、本人から聞かされたんだろう? 身長はコンプレックスだって」


「……いや、別に、いい。仲の良い、相手に、聞かれる、くらいなら、別に、嫌でも、ない」


「そ、そういうものか?」


「そういう、もの。私の、身長だが、193センチ」


「俺より20センチくらい高いのか……ゲーム内だとパーティで一番ちっこいんだけどなぁ」


「……ちなみに、お前ら、年齢は?」


「俺は17、高校2年」


「私も17歳で兼続と同じよ」


「ボクも右に同じー」


「ウチは15の中学3年。夜に盗んだバイクで走り出すお年頃さ!」


「盗みはやめろよ妹!」


「ゲーム内でしかやらないっすよ兄上ー」


「私は18歳、高校3年生です。兼続さんたちより一つだけ年上ですね」



 俺たちの年齢を聞いた後、灯がにやぁと笑う。



「私、21歳、大学3年。ダントツの、最年長。お前ら、敬え、年上を」


「「「えっ!?」」」



 灯以外の全員が驚愕の声を発した。


 恐らくみんな同じことを考えている。


 あなた21歳なのにそんな感じなの……?



「俺、アルはずっと年下のひねくれた中学生なんだろうと思っていたよ……」


「失礼、な。中学二年生に言われたくない」


「いやだから俺は高校二年だって……」



 ふと見れば、はてなも天音も奈緒もうんうんとうなずいていた。



「まあ、中学二年生だよね、兼続」


「中学二年生ね、精神が」


「中学二年生だよ、つぐ兄」


「どういう意味だ貴様ら」



 こんなに大人な中学生がいるもんですか。


 と、花月さんがくすくすと笑う。



「ふふっ。皆さん、本当に、ゲームの中と変わりませんね」


「そりゃあアバター動かしている本人ですし……?」


「いえ、その、お恥ずかしい話なのですが、不安だったんです。ゲーム内と現実のプレイヤーは別人というくらいに違うと、妹に聞かされたことがあったので。皆さんが普段の皆さんとまったく違う感じの方だったら、うまく話せるかわからなくて。だから、安心しました」


「この俺以外は変人ばっかのメンツが、そんな表裏のあるキャラできるわけありませんよ……」



 現実世界の”本当の自分”を隠そうとしても、行動や言動から溢れ出る変人感は誤魔化せませぬぞ。



「……兼続、何度も言うようだけれど。というか、みんな同じことを考えていると思うんだけれど」


「なんだ、天音? ……っていうかどうした、みんなして俺に注目して。照れちゃうでしょ!」



 仲間たちは俺に視線を集中させ、声を揃えてこう言う。



「あなたに変人と言われたくないわ」


「兼続に変人と言われたくないよ」


「つぐ兄に変人とか言われたくないね!」


「お前に、変人と、言われたくは、ない」


「兼続さんに変人と言われたくないですねぇ」


「まるで俺も変人の一人だぞみたいに言いやがって!?」



 本当に、うちの仲間、おかしい人ばっか!

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