うちの なかま おかしいひとばかり。
はじめに。
この作品に興味を持って頂きありがとうございます。
タイトルやあらすじの通り、この作品は変人プレイヤーたちがVRMMOを気楽に楽しく遊ぶだけの、ギャグ多めのお話です。
主人公もヒロインもそれ以外の登場人物もだいたい変人です。ご期待ください。
それだけです、諸注意とかはないです、変人どもと一緒に気楽にこの作品を楽しんでくれたら本当に嬉しいです。
それでは本編をどうぞ↓
うちのパーティメンバーはおかしい人ばっかりだ。
例えば、俺たちの前に強力なモンスターの群れが立ち塞がったとする。
その中には重装鎧を装備し、半端な物理攻撃など軽々と受け止めるような防御特化のエネミーがいるのだが、
「脆いッ! 滅べッ!」
うちのパーティメンバーの脳筋金ピカ女騎士は、何の属性も付与されていない物理100%の大剣で、カッチカチの重装鎧ごと敵を頭から真っ二つにしていく。
魔法攻撃で敵の物理防御力を無視しよう、とか、そんな小細工は一切なし。
クソバカの戦い方だ。
脳筋以外になんと呼べばいいのか。
しかし、小細工という言葉を真っ向から否定するようなその戦い方は、強力っちゃ強力だった。
次、敵の中にはバカデカいドラゴンみたいなヤツが混じっている。
こちらも生半可な攻撃が通用しない重装甲エネミーだ。
ところが、うちのパーティメンバーの小柄な白色スナイパー少女は、身の丈にあわぬごっつい狙撃銃の弾丸でそいつの鱗を問答無用にぶち抜く。
さらに、彼女は武器をごっつい狙撃銃からごっついガトリングガンに持ち替え、瀕死のドラゴンに弾丸をたっぷりとごちそうし、粉砕。
「……ふふ、爽快感」
重厚な射撃音と敵の爆発音にうっとりしつつ、接近戦じゃないとろくに射撃を当てられないクソエイム白色スナイパーは次のターゲットに銃口を向ける。
さて、この世界の敵は種類が豊富だ。
中にはとんでもない素早さで大地を駆け抜ける四足歩行の猛獣がいたりもする。
対し、うちのパーティメンバーには青いバイクに跨り、疾走する獣を追いかけ回すスピード狂がいた。
「待て待てのろまなワンちゃんどもめー!」
彼女は地面の起伏と体重移動を利用して、愛車と共にジャンプ。
高速回転するバイクの前輪で敵の頭に強烈なタイヤキック。
マシンの重量と速度を乗せたその一撃で10メートルほどふっ飛ばされた敵に、彼女は右の掌から雷の魔法弾を発射して追撃、トドメを刺す。
「よっし撃破っ! ツグ兄! こっちは任せといて!」
魔法とバイクを組み合わせた奇怪な戦術で戦う彼女は、もはや逃げ惑っているようにしか見えない獣たちをどこまでも追いかける。
あっ、ちなみに俺の妹です、あいつ。ゲーム内でもかわいいでしょ。
妹自慢は置いておいて、速いといえばもう一人、俺の仲間には顔の良い剣客男性アバターがいる。
波の模様の和服を着こなすそいつは、カタナで敵を次々と斬り伏せていくのだが、その殲滅速度が尋常ではない。
サムライが瞬間移動しているようにしか見えないほどのスピードで動けば、通り道にいた敵がいつの間にかバラバラになっているのだ。
さらに、上空に敵の姿を見つければ、サムライは武器をカタナから弓へと持ち替え、天に向かって矢を放つ。
次の瞬間には、敵は地へと落ちている。
「……ふぅ、倒しても倒してもキリがありませんね」
そう口にしつつも、疲れた様子は微塵もない。
鬼神の如き戦いっぷりを見せるサムライは、さらに加速し敵を葬っていく。
恐るべき”速さ”だ。
なお、男性アバターを使っている”彼女”だが、その中身は女の子である。
えっ? お前のパーティ女の子ばっかりじゃねーか?
自覚してます。
仕方ないでしょ気づいたらこうなってたんだから!
ついでに、もうひとり女の子を紹介しておく。
俺たちの遙か後方にピンク色のメカ少女がいる。
彼女はそこから俺たちに指示を出しつつ、自らも機械兵士の軍団を使役することで戦闘に参加しているのだが、
「みんな! そろそろドカンと行くから気をつけてね! オーダー! 総員炸裂!」
警告の直後、彼女は自らの操る機械兵士に自爆命令を出す。
すると機械兵士たちは全速力で敵へ駆け寄り、ガシッと抱きついて大爆発。
爆風が吹き荒れる。
炎と煙が晴れた後、そこに居たはずの敵は跡形もない。
自爆なんていう外道戦術の行使も躊躇しない彼女は、うちのパーティの頭脳役だ。
脳筋金ピカ女騎士、ピンクの爆殺魔、狙撃下手な白色スナイパー、青きスピード狂、波模様のチート剣客男(女)。
そんな彼女たちが、俺の仲間たち。
……うちのパーティメンバーはおかしい人ばっかりだ。
少しは俺を見習ってほしい。
カタナ片手に素早く動いて敵の首を次々と跳ね飛ばしていくだけの、それとゾンビとか幽霊とかその手のホラーエネミーに強いだけの、ごく一般的な高速クリティカルアタッカーの俺を。
……と、いうような話を仲間たちにしたら、お前におかしい人扱いはされたくないと言われた。
失礼な。
ともかく、そんなのが俺のパーティなのだ。
本当に、どうしてこんなに変人ばかりが集まってしまったのだろうか。
俺は普通に遊んでいただけなのになと、色々と思い出してみることにした――――……
TIPS:変人
おかしな人のこと。
オンラインゲームではよくいる。
だいたいの変人は自分を変人と思っていない。