主人の朝
本編は3000~5000文字くらいで1話としていましたが、こちらではサクサク読めるように1話1500文字くらいでいこうかと思っています。
俺の名はジュリアス・シザーランド。今は17歳で、銀河帝国軍大佐の地位にある。まだ未成年の俺がどうして大佐なんて高い階級に就いているかという話はまた機会があれば。
とにかく、俺は眠いんだ。それじゃあお休み~。
「・・・さ・・・たい・・・起きて、・・・ですよ」
夢の世界に浸っている俺の耳に、幼い女の子の声が聞こえてくる。でも、その声は遥か遠くから発せられているのか、とても小さい音で、どこからしているのかはっきりしない。尤も、仮にどこから発せられているのか分かったとしても、それに応じるつもりはない。なぜなら、まだ起きたくないからだ。
でも、そんな俺の気持ちを踏みにじるかのように、声の主はどんどん近付いてくる。
「大佐!もう朝です!起きて下さい!」
遂に声がはっきり聞こえるようになってしまった。
その時だ。俺は身体がすごい勢いで揺すられるのを感じた。それは夢の世界に引き篭もっていた俺を一気に現実世界へと引っ張り上げる。
重たい瞼をゆっくりと開ける。俺の視界に入ったのは、まるで線上にいるかのような険しい表情をした女の子の姿だった。
ショートヘアの明るい茶髪と青い瞳を持ち、愛らしい容姿した幼い少女。それが誰なのか俺はよく理解している。
「ん、んんん。ね、ネーナ?」
「あ!大佐!おはようございます!朝ですよ!」
この子の名前はネーナ。俺に仕えている奴隷だ。その証として彼女の首には、頑丈そうな分厚い鋼鉄の首輪が嵌められている。
「んん、ネーナ。おはよう。そしてお休み~」
俺は再び意識を手放して、夢の中へとダイブしようと試みる。
「ちょ!大佐!もういい加減起きて下さい!」
「あと、1時間だけ・・・」
「そこは5分じゃないんですか!?いくら何でも長過ぎます!」
本当ならあと半日は寝ていたいくらいなんだ。これでも俺はかなり譲歩しているんだぞ。
「大佐、朝食の用意ができていますよ」
「んん、飯?」
あー。そういえば、何だか腹が減ってきたな。
そう思った時、俺は自ら夢の世界から現実世界へと這い上がってきた。
「ふぁああ~」
目を開けて、大きな欠伸をする俺。
「おはようございます、大佐!!」
嬉しそうに挨拶をするネーナ。これは事実上の勝利宣言という奴だ。
「んん。ああ。おはよう」
俺は敗北を認めて大人しく上半身を起こす。
俺の休日の朝はいつもこんなスタートだ。ネーナに強引に起こされるところから始まる。ネーナが俺のところに来てくれたばかりの2年前はボコボコ叩かれたりもして、文字通り叩き起こされるという感じだったのだが、1年くらい前にネーナはある人物から、俺の起こし方というものを伝授したらしく、以前よりは快適な朝を迎えらえるようになっていた。
ふとネーナの顔を見ると、「ふう」と息をついていた。どうやら俺を起こすのに疲れてしまったらしい。いつも朝起こしてくれるネーナには感謝しているが、一方で面倒ばかりかけて申し訳ない気もする。
俺は労を労ってやろうと右手を伸ばしてネーナの頭を撫でた。
「た、大佐?」
ネーナが不思議そうに俺の方を見た。
「いつもありがとうな。ネーナがいなかったら、俺は貴重な休日を寝て過ごしてるところだったよ」
「いいえ!主人にご満足頂けるように励むのが奴隷の役目です故!」
そうは言いつつも、ネーナは嬉しそうにニッコリと笑ってくれた。
グウウウウ~
「うッ!」
せっかく良いムードになっているというのに、俺の腹が豪快に鳴ってしまった。自分の腹の空気の読めなさが苦々しくて仕方が無い。
「ふふ。朝食の用意は既にできておりますので、顔を洗ってリビングへいらして下さい」
ネーナは小さく笑った後、そう言って俺の寝室から去っていった。