正義とは何か?悪とは何か?2ー坂本夫婦の場合ー
ーーーーーー坂本夫婦の場合ーーーーーーーーーー
S県とN県の県境というとこれといった娯楽はなく、あるのは車で行かないと行けないほど距離がある離れたショッピングモールと近くにあるパチンコ屋である。パチンコ屋というのは不思議なもので県境という言えど、まるでコンビニエンスストアのように点々とある。そして、坂本夫婦が住んでいるS県の県境にはパチンコ屋が歩いて10分という距離にあった。パチンコ屋というのはかなり煩いところであり、素行がいいとはあまり言い難い人間がいることもたしかである。しかし、全ての人間がそうであるとは限らない。パチンコに通っている中で話しかけてくる人間もおり、その中で仲良くなり、パチンコ屋以外で話をすることもあれば、パチンコ屋の外で出会った際に話をするような仲になることもある。それだけでなく車が不得手ということでパチンコ屋で知り合ったものと一緒にショッピングモールで買い物をするという仲にもなるということもある。パチンコ屋の宣伝をしたい訳でもメリットを言いたい訳でもない。パチンコ屋=悪という考えを捨ててほしいということだ。そうしなければ浮かばれないからである。パチンコ屋に行ったがために死んでしまった幼子たちの霊魂が、パチンコ屋も一つのコミュニティの場であり、そこで知り合った者は一つの仲間であるということである。パチンコ屋=悪という考えがあるために間違いが起こった時に人は自分を責め、本来存在しない霊魂という存在を良くも悪くも信じてしまうのだ。つまり、霊魂というのは通常は存在しない2文字の単語であり、それを信じがために現世を生きている人が霊魂という言葉で奈落へ落ちてしまう。奈落に落ちた人間はどう考えるか?犯人を責めるか?それは違う。自分もしくは他人を責めてしまう。そして、この坂本夫婦の場合、刑事が放った不用意な言葉
「なんで、こんなパチンコ屋につれて来たんだ!」
という言葉で呪いを掛けられ、奈落に落ちてしまい、己を責めてしまった。
「なぜ俺は・私はこんな所に連れてきてしまったんだ?」
自分を責めに責め。一週間という短い期間だとしてもテレビで報道されてしまうとさらに呪いが増幅してしまい、「辛口コメンテーター」という無責任かつ無能な人間がその対象を両親にしてしまったら奈落どころの話ではない。さらに人の噂は一週間ではやまない。365日続く場合もある。そうなると人は365日も自分を責めてしまう。この坂本夫婦の場合、地元で育ち、昔からお互いのことをよく知り、同級生たちは他県や町に行っても、ずっと地元のこの県境で育ってきた。この県境は坂本夫婦にとっての世界そのものなのだ。もし他の場所にいったことのある者であれば、そこから離れるという選択もあったが、もとより坂本夫婦にはその選択はなかった。事件から1年後、2人は仲良く首つり自殺をしてしまう。二人の手と手の間には二度と絶対に離さないように手芸な得意な奥さんが紅い紐で美紅ちゃんの写真が入った写真立てを握っていた。写真は笑顔で旦那さん・美紅ちゃん・奥さんの順で手を握っている写真だった。美紅ちゃんは二度殺された。