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先生と私の恋愛事情  作者: 羽鳥藍那
高校編 - 後
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 久しぶりに三人揃って取る夕食は、けして豪華では無かったけれど、手が込んでいて温かい物でした。

 教えそびれていた圭祐さんの携帯電話と固定電話の番号、今の住所と新しい住所を書いたメモを母に渡し、一月中には引越してしまう事を告げます。もっとも、引越ししたとしても学校へはこの家から通い、向こうに泊まる事は有っても、行きっぱなしにならない様にする事はこちらから約束します。

「なんだか気持ちが追い付かなくて、寂しいとかの感情が湧かないよ」

 晩酌が進むと父がそんな事を言い出しますが、母は既に寂しいのでしょう。

「そんな事を言っても、二人の食事は寂しかったじゃないですか。アナタも仕事ばかりでなく、早く帰ってくるようにしてくださいね」

 そうして、今日だけは遅くまで話続けました。


 大晦日は朝から御節の用意を手伝い、年越しそばを食べて早めに寝ます。そうして迎えた元旦は、日が昇る前から道場に集まって寒稽古に臨むのです。

 今年は圭祐さんも道場側に参加していて、腕が鈍っているだろうと、他の師範たちにかなりしごかれていました。それでも善戦している所を見せつけられると、改めてすごい人なんだなぁと見惚れてしまいます。

 私たちの関係を知っているのは館長くらいだろうから、その事でからかわれることは無かったけれど、夏休みに一緒に稽古した子供たちが私を囲んでいたので、暇だった師範が多かったのかも。


 稽古も終わりに近づき、翔真君たちがやって来て新年の挨拶をし始め、結婚したことが知れ渡るや、「羨ましい」だの「早すぎる」だの「しごき直してやる」だのと、やっかみ半分の祝福を受けだします。

 そちらに目が行っている間に、圭祐さんは一足先に奥に引っ込んでシャワーを使って着替えて現れ、館長から呼ばれた私もシャワーを借りて着替えを済ませると、真理佳ちゃんに誘われる形で初詣へと向かいます。

 着替えなんかの荷物は圭祐さんの車に乗せておいたので身軽になって駅まで歩く事が出来ました。帰りがけに届けてもらえばいいかな、どうせ家に来るのだし。


 神社に着くと、美紀ちゃんと彩萌ちゃんが居て神崎君の姿も有ります。神崎君はもしかして、昨日から一緒に居たのかな。翔真君は神崎君の事をお邪魔虫と言っていたのだけれど、奇数になってしまった今、私にとってのお邪魔虫は彩萌ちゃんなのです。

「彩萌ちゃん、なんで貴女まで腕を組んでるのよ」

 そう言ってはみたものの、前後はお付き合いしている者同士で腕を組んで歩いているのだから、あぶれてしまう彼女が圭祐さんの腕を取っている事を非難しにくいのも事実ではあります。なにしろ、(おおやけ)には出来ないのですから。

「沙織ちゃんがしているからじゃない。大丈夫よ、取らないから」

「先生が困ってるでしょ」

「だって新婚さんの邪魔は出来ないし、神崎くんは好みじゃないし、でも腕組んでみたかったしね。こっちは気にしないで、二人の世界に入っていていいよ?」

 だからって「はいそうですか」とはいかずに、微量な距離感とシラケた空気の中での初詣と成ってしまいました。来年は気兼ねなく、二人きりで初詣に来たいな。


「家に寄ってくれるよね」

 どうせ帰っても正月らしいものなどないのだろうから、家で御節を食べてもらおうとお願いすると、圭祐さんも快く引き受けてくれました。

 車を寄せてもらっているので、玄関から「もうすぐ来るよ」って声をかけます。

 すぐ来るだろうからとそのまま外で待っていると、車から降りた圭祐さんは渋い顔で荷物を投ってきました。

「橘の荷物をどうするのか、まさか持って帰る気か、なんてからかわれちゃったよ」

「なんて言ったの」

「友達と遊んでくるから家に届けといてくれって、教師使いの荒い生徒だってね」

 そんなに荒く使っていないと思うのだけど、口をとがらすと「方便だよ」って頭を撫でられました。

 挨拶もそこそこに帰ろうとする圭祐さんを家にあげ、御節を食べてもらいます。

「娘を嫁がせるのだから、もっと為人(ひととなり)を知りたいのだが」

 上がる切っ掛けになった父の言葉だけど、どちらかと言えば三者面談とかに出た事のない父が、私の日頃を聞きたがった故の発言だったみたい。

 一通り聞き出すと、今度は私の幼い頃のエピソードが語られ、親バカ振りを発揮させていて恥ずかしい。初めの頃はギクシャクした感じだった母とも、夕方近くには和やかな雰囲気で話も出来ていたので、寄ってもらって良かったなって思う。


 結局は夕飯もうちで食べて行くことになり、勧められたお酒を断りきれずにそこそこの量を飲んでいました。それでも酔った様子が無いので、お酒庭強いようです。

 このまま泊まって行けと言い出す父に、そこまでは流石にと断って電車で帰ってしまいました。客間があると言っても、着替えが無ければ断るのも当たり前かな。

 車は明後日の帰省まで置きっぱなしとなるからと、車のカギを置いて行こうとしますが、スペア—キーを預かったままだったので笑顔で送り出します。カギは有るのだから、二日分くらいの着替えを用意しておいて、車にそっと積んでおくことにしよう。

『ちゃんと家に着いたよ』

 お風呂を済ますと、そんなメッセージが入っていたので返信して布団に入ります。

『今日は色々ありがとう。明後日は認めてもらえるように頑張りますから、支えてくださいね』


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