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先生と私の恋愛事情  作者: 羽鳥藍那
高校編 - 後
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「そう答えた翔真を、私は羨ましくなりました。いまの私には同じ様な状況下で、沙織さんを優先するだけの理由が有りません。いえ、教師の立場を捨てて沙織さんを優先した時の、弱い自分を納得させる理由が欲しいだけなのだと思います」

「それにしたって軽率だろう。二度も三度も起きる様な事ではなかろうし、これから娘にだって出会いの機会が無い訳ではないのだし」

 母は未だ蒼白な顔のまま、成り行きを見守っている様子だったけれど、父は少し落ち着きを取り戻してきているようで、口調も声の大きさも抑えられてきました。そして圭祐さんは、真剣な表情のまま頭を下げます。

「高校を卒業するまでは教師と生徒の関係は崩しませんし、進学後も卒業を妨げるような行いは慎みます。ですから何かしらの選択を迫られた時、沙織さんを一番に選べる立場として、お付き合いのご了承を頂きたいのです」

「泊めたという事は、体を求めたのではないのですか」

 ここで始めて母が涙ながらに言葉を発したのだけれど、以前に否定したはずの事を蒸し返してきて、その辺りの信用が私には無いのかと落胆します。それでも私が口を開いて解決するとは思えないので、圭祐さんに任せるしかありません。


「言い難い話なのですが、求めてこないのは風俗的な所に出入りしているのでは、と疑惑を持たれまして。そうした浮気に当たると考える行為はしていない、と説明するに適した場所が他に思い付かなかったものですから」

 顔をあげてそう釈明した圭祐さんを含めた大人が、三者三様の表情を浮かべて目線を合わさずに押し黙ってしまいます。

 このままでは(らち)もないし、知りたい事でもあったので、父にいけにえになってもらうため質問をぶつけてみます。

「パパ。彼はこう言っていますが、男の人って性的な欲求を抑えておけるものなの? それとも、そう言ったお店が有る以上は抑えられないもので、パパも利用したことが有るの?」

 当然、男性陣はギョッとした表情を浮かべ、言い淀む父を母が睨み付けます。

 母は潔癖すぎるきらいが有るので、キャバクラでさえ否定的なのだけど、父だって付き合いも有るだろうから利用したことが無いとは言い切れないでしょう。そもそもどこまでが許される範囲かは、突き詰める程に父の立場を危うくすると思うのです。


「話してわかったと思いますが、彼は誠実な人です。高校進学の際も翔真君に頼んでくれて、無事に進学できました。剣道で成績が残せたのも、厳しく指導してくれたおかげです。大学の受験だって、親身になって尽力してくれました。今の私が有るのは彼のおかげなのです。今すぐにとは言いませんから、お付き合いについて考えてもらえないでしょうか」

 圭祐さんの横で私も膝をついてお願いすると、しばらく唸っていた父が「少し時間をくれ」と言ってきたので、圭祐さんと二人で一旦部屋を出る事にします。

 両親、特に母にはもう少し冷静になってもらう必要が有ります。そこに圭祐さんがいるのは、たぶんマイナス要因でしょうから。


「すまなかったな、こんな状況になってしまって。とりあえず、俺はこれで帰る事にするよ」

「そうだね、後は私が頑張る番だから。それより今日はありがとう。やっぱり私には圭祐さんしかいないわ」

「明日も会えるんだよね」

「朝早くでも大丈夫だよ。予定が分ったらメールしてくれ。駐車場に着いたら電話入れるから」

「「それじゃ、また明日」」

 そう言ってロビーで見送ったものの、直ぐに部屋に戻っても居辛いだけなので、ティーラウンジで紅茶を飲みながら時間をつぶし、食事の時間くらいに戻ります。


 部屋では、父も母も疲れ切った感じでベッドに腰掛けていて、入ってきた私に精気の無い目を向けてきます。

「食事は家族で楽しめって事なので、ロビーまで送ってきました。やはり認めては貰えないですか? それでも私は圭祐さんを諦めるつもりは無いですし、彼に尽くしたいと思っていますけど」

 それを黙って聞いていた父は時計を確認して立ち上がり、母を促して最上階のレストランへと向かいます。

 案内された席は例年の窓際とは違い、少し奥まって周りの視線も会話も気にならない席。前菜やスープに始まり、メインのローストチキンが出されるに至っても会話らしい会話が無くて、こちらから切り出す必要があると口を開きました。

「そんなに彼が気に入りませんか?」

「貴女は騙されているのではないの?」

「私が迫ったんです。それでも彼は頑なで、彼女は作らずに待っているから焦るなと」

「キスが如何のと言ってはいなかったか?」

「それだって、彼の飲み掛けをもらった間接的な物です」

「それにしたって、相手の立場がなぁ」

 やはり、両親ともに乗り気ではないことが伺えます。


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