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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編小説

夏好きと冬好きと

作者: 半信半疑

「え? なに?」

「だーかーらー。あんたは夏と冬、どっちが好きなのって聞いてるのー」


 夏と冬か…。


「冬だね」

「なんで?」

「なんでってそりゃあ、冬はぬくぬくできるだろう?」

「ぬくぬく?」

「こたつだよ」

「あーね」


 冷えた足をつっこんで、ぬくぬくと温まる。

 みかん(アイスでも可)でも食べながら、だらだらとテレビを見る。

 最高の過ごし方だろ?

 うちのタマも、気づけば中で丸くなってるぞ。


「お前はどっちなの?」

「あたし? あたしはねー、夏」

「ほーん、なんで?」

「なんでってそりゃあ、夏は楽しいことがいっぱいじゃん」

「楽しいこと?」


 そんなんあったっけ?


「お祭りとかキャンプとか、そのたモロモロ!」

「あぁ、そういう…」


 オレはいつも、冷房の効いた部屋にいたわ。


「真夏の外って、もはや灼熱地獄だぞ」

「知ってる。ゆらめいてるもん」


 体を揺らしてるが、それはもしかして、陽炎を表現してるのか?

 そうかい、暑さは実感してるのかい。


「ならどうして?」

「家にこもっていても楽しくないでしょ?」

「それは違う、全然違う」


 家の中でも楽しく過ごせるぞ。


「動画見たりゲームしたりとか…色々やれるし」

「それはいつでもできるじゃん」

「うーむ…」


 そう言われると、その通りなんだけど…。


「夏は情熱的で、開放的な季節なんだよ。」

「お前はいつも解放してるじゃん。足とか胸元とか」

「あーっ、やーらしぃーんだーやらしんだー」


 子どもかよ。別にいいだろ…。


「いつもそんなとこばっかり見てるんでしょ」

「違わい」


 即答した。


「違わなくない?」

「違わなくなくない」

「事の真偽は後で判断するとして。実際問題、どうしてそんなに夏が嫌いなの?」

「嫌いとは言ってない」

「嘘。言葉では誤魔化せても、顔は正直だよ」

「…そんなに?」

「うん」


 マジかよ。ポーカーフェイスには自信あったのに。


「まぁ、たしかに、オレは夏が嫌いだ」

「言葉も正直になったね」

「暑いとほら、思考が鈍るじゃん」

「うん、ついついぼーっとなるね」

「だろう? あれが嫌なんだよ」


 考え事しなくちゃならないのに、一向に捗らない状況。

 うむ、エターナル思考放棄を実行したくなる。

 冬ならば、逆に研ぎ澄まされていくのにな。


「うーん? ちょっと真実から遠ざかった?」

「どういう意味?」

「嘘ついてるわけじゃないけど、それが一番の理由ってわけでもない感じ?」

「どうしてそう思うんだ?」

「勘」


 ドヤ顔がうざい。


「あんたと一緒に過ごしてきたあたしの、勘」


 何だよ、ちょっと照れるじゃないか。


「そうだな…、そうかもしれない」

「多分ね、あたしが思うに、あんたは内罰的なの」

「内罰的だと夏が嫌いになるのか?」

「自分を責める気持ちが強すぎて、開放的な気分になることを禁じてるのかも」


 そうかね?


「もしくは…卑屈すぎるせい。あんたリア充嫌いでしょ?」


 嫌いだけど、


「リア充と夏嫌いにどんな関係が?」

「夏にキャンプとかするのは、大抵リア充だと思ってない?」


 思ってる。馬鹿みたいにはしゃいでる奴らを見ると、軽く殺意が湧く。


「あんたは普段から家にこもりがちだし、思考や性格も暗くなってるから、反対の人生を歩んでるリア充に負の感情を持ってるのよ」

「………」

「人はそんなに賢くないよ。あんたももう少し馬鹿になりな」

「お前も馬鹿なのか?」

「そうよ、あたしも馬鹿よ」


 ニカッという擬音語が聞こえてきそうな、笑顔が眩しい。


「…今年の夏は、どこかへ旅行に行ってみようか」

「ほうほう、いいねいいね。そうしよう」

「おい、そのうざったい顔をやめろ」

「えぇ~? 普通の顔でしょ~?」


 一瞬で鬱陶しい顔に変化しやがって。

 オレは深くツッコまれる前に、別の方向へと口を開いた。


「んで、今まで黙って聞いてきたあんたは、夏と冬のどっちが好きなんだい?」

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