『ご縁』が無い人が占ってもらうとこうなる
韓国は明洞の路地。
一軒の店の前。
「お姉ちゃんも、一度占ってもらいなよ。ねぇ、絶対良いことあるから」
「やだよ」
妹は、日本語も大丈夫だという占いの店に、私を誘っていた。
「そもそも、占いなんて、当たるわけないじゃん」
私は、その店の先にある海鮮料理の店に入りたいのに。
「私、占ってもらったとき、二年以内に結婚相手が出来るって言われて、そのとおりになったじゃない」
そう、妹はもうすぐ結婚する。
二人きりで過ごせるのは最後かな、と思って、韓国旅行に妹を誘った。
母が亡くなって、家族と呼べるのは、妹だけになっていたから。
「なんか、やだな~」
「いいから、占ってもらおうよ」
店の中から、三人連れの女性が楽しそうに会話しながら出て来た。
なんとなく、その笑顔に占ってもらう理由を見つけたような気もした。
そんな気分を、妹が察したように、妹はにこにこしながら、入れ替わりで店の中に入って行った。
仕方なく、私も入る。
「私はいいから、お姉ちゃん、占ってもらいなよ」
妹がお金を払ってくれて、私は占い師の女性の前に座る。
占い師さんは、生年月日やら、手相やらを見てくれた。
「仕事、楽しいですか?」
上手な日本語。
「え?はい」
「仕事、頑張りなさい」
「はい・・・」
私は、隣に立つ妹の顔をチラ見した。
妹も戸惑った表情。
「家族は?」
「この妹だけです」
「結婚は」
「していません」
「家族と旦那さんに、縁がないですね」
「やっぱり・・・。前にも二回、同じことを言われました」
「え~っ。おねえちゃん、占ってもらったことがあるの?」
妹が驚いた声を出した。
店を後にして、行きたかった海鮮料理の店に入る。
料理を注文して、ビールと焼酎を頼む。
「おねえちゃんも、占い、信じてたんだねぇ」
「信じたくはないんだよ。信じたくはないけど、当たってるしね。何より妹の結婚が当たってるし、ねぇ」
「でも、さ、まだ望みはあるよ。絶対にあるよ」
妹は私のグラスに焼酎を注いでくれて、慰めの言葉を口にした。