閻魔王
皆に連れられ、閻魔王の住む場所へとやって来た。
大きな赤い門の両側に、門番だろう、鬼と言えるものが立っていて、私達を見るなり大きな門を開けた。
中へ入れと促され、門をくぐる。
目の前にはこれまた大きな建物が建っていた。
灰色の瓦屋根、赤い壁の建物は、昔話に出てきそうな造りをしていた。
ここにも番人が居て、やはり私達を見るなり扉を押し開けた。
中は広く、薄暗い。冷気さえ漂ってきそうだ。
母達は知っているかの様に、私を奥の部屋へと案内した。
中へ入ると目の前の現実に目を見開いてしまった。
広く冷たい部屋の中央に座る人物を見て、驚きを隠せない。
まさしく閻魔王がそこに鎮座していた。
赤黒い顔。真っ黒な髪の毛は肩まであり、うねっている。大きな身体は威厳を放ち、見るものを震えさせる。
人を射抜く様な双眸に私は俯いてしまった。
「お前が岡野佐都か?」
固まる私に、地面が震える様な声で尋ねた。
「はい……」
小さく返した。
手には所謂閻魔帳と言うものだろうか?
分厚い本の様なものを持っている。
「ふむ……。なるほど。寿命であったか」
私とそれを交互にみやり、呟いた。
「今から四十九日を以って、 お前の処遇を決める。これより審議に入為、 お前は此処に留まる事になる。仏の援護もまあある様だな……。まあ、 心せよ」
そう言うなり立ち上がった。
「パパ……。お母ちゃん……。私どうなるのかしら?」
「大丈夫。お前には私らがついているし、 ほれ有難い仏様もついてらっしゃる。読経でも応援してくれている。落ち着いきなさい」
母の言葉に幾らかましになったけれど、昔話が現実になると、やはり不安はぬぐえなかった。
これから四十九日の間、死んでしまったけれど、生きた心地がしないとついそうもらしてしまった……。