七話 覚醒
プロットっていいね(投げ捨てながら)
力也「四天王奥義、特別に見せてやろう」
麻代花「うぁ……」
四天王奥義、と言った時、妖力が爆発したかのように大きくなる。
少し足が震えているが平気だろう、と思って歩こうとするが足が進まない。
その様子を見て星熊さんは笑った。
力也「やっと、妖力に屈したようだな」
麻代花「う……」
力也「これで逃げられないな」
麻代花「あはは…なんて」
力也「いくぞ、四天王奥義!!」
麻代花「うわ!?」
まだ妖力は上がる様でさすがにびっくりする。
そして星熊さんが立っている場所はヒビが入ってきた。
力也「一歩……」
麻代花「……え?」
どんな凄い技なんだろうと思っていたら一歩、なんて言いながら前進してきた。
力也「二歩!」
麻代花「あー、なるほど」
二歩目に妖力が格段に上がる。
そういうことか。と技を理解してさっきみたいな考えはすぐに捨てた。
力也「三歩……必殺!!」
麻代花「う!?」
あまりの迫力と妖力に目を閉じて防御態勢を取る。
一番やっちゃだめな目を閉じると言う行為に気が付き、また目を開ける。すると拳が止まっていた。
力也「なんだと?」
麻代花「ん、どうしたの。情け?」
力也「確かに当てたはずだが?」
星熊さんが驚く。
すると迅と骸さんが驚いている声も聞こえた。
力也「貴様、本当に人間か?」
麻代花「そうだけど?」
力也「今のお前は、俺の攻撃を防いだだけではなく妖力と霊力を出しているぞ?」
麻代花「え?」
力也「それに、目も赤い」
麻代花「え……迅!!」
迅「力也の言う通りだ、それに麻代花の目も赤い」
力也「ふん、どっちにしろもう一度は防げまい」
そう言ってまた離れて、一歩、二歩と歩く。今度の今度は絶体絶命。
『あら、麻代花って人間以外にも怯えるのね』
その瞬間、時間が止まり真っ白な世界にいた。
そして、大きな木の近くに女の人が一人。
麻代花「えっと、誰ですか?」
「自分の家の祀り神も忘れたのかしら?」
麻代花「……?」
自分の家なんて6歳位のことだからあんまり覚えてない。
たしか鏡写しの神様だった気がする。
「そう、鏡写しの神様」
麻代花「へぇー、普通に心読まれた気がする」
鏡「名前は鏡」
麻代花「鏡さん、ここってどこ?」
鏡「ここは貴方の精神よ、友達に裏切られ、親もいない貴方が作った貴方だけの世界。貴方に必要な存在が在り、不必要な存在が無い」
麻代花「え……っと?」
鏡「じゃあ、あの木に見覚えは?」
そう言われたので木を見に行く。
見た瞬間、色々なことを思い出してくる。
友達の事、親の事、生活の事、鏡写しの自分の事。
麻代花「私の家にあった、最後の友達……」
鏡「ここで私は貴方の生活などを見てきた」
麻代花「鬼と決闘になったのも知ってるし、あの三歩必殺だっけ? 私が防がなきゃ今頃さよならよ?」
麻代花「え、どうやって防いだの!?」
鏡「私の能力。妖怪以外でも持っているのよ、貴方もね」
麻代花「その能力って?」
鏡「私は拒絶する能力、簡単に言えば全ての物事を捻じ曲げられる」
麻代花「今凄いことをさらっと言ったよね……意味わからなかったけども」
鏡「貴方が隕石に当たって死ぬことを私が拒絶した、これで分かる?」
麻代花「ま、まぁなんとか……意味わからないけど」
鏡「次に貴方の能力、属性を司る能力ね」
麻代花「なにそれ強いの?」
鏡「簡単に言えば、風とか炎とか水とか、自然を操れる。今はまだ限度があると思うけど、変換も出来るようになると思うわ」
麻代花「変換?」
鏡「たとえば、目の前の空気を氷に変換して壁を作るとかね」
麻代花「へぇー、漫画の錬金術とか魔法みたいだね」
鏡「次に貴方の妖力と霊力の関係ね」
麻代花「あ、なんか星熊さんとかが言ってた」
鏡「妖力は妖怪の、霊力は人間の力の源。そしてその二つは絶対に交わらない、半人半妖以外はね」
鏡「でも貴方は人間なのに二つを持っている、何ででしょう?」
麻代花「私が半人半妖だったり!」
鏡「ハズレ」
麻代花「ええー」
鏡「正解は、多分貴方が死ぬときに何かがあったのよ。その時に妖力がほんの少しだけ混じった」
麻代花「何かって何さー」
鏡「それはわからない。でもその少しの妖力が鬼との戦いや生活のせいで多くなったのは確かなことよ」
麻代花「妖力なんてあったかなー?」
鏡「そうね、事実を言うなら貴方が恐竜に追いかけられた時ね」
麻代花「必至すぎて覚えてない」
鏡「貴方が恐竜に追いかけられた時妖力を使ってたのよ?」
麻代花「だから足が速かったの?」
鏡「そう、途中で使い果たしたけどね。足が動かないとか言ってたのは妖力だけを使って走っていたから。」
麻代花「妖力がなくなって動けなかったってこと?」
鏡「そうよ、いきなり霊力に変えて走り出したのは驚いたけど。そして妖怪の近くに居ることで少しずつ妖力も上がっていったのよ。霊力を使っていたから鬼のみなさんは気づいていなかったみたいだけど」
麻代花「ふむふむ」
鏡「で、なぜ妖力が混ざったのかっていうと……」
麻代花「うんうん」
鏡「……人間に負の感情を持ちすぎて受け入れちゃったりとか?」
麻代花「あ、それはあるかもしれない!」
鏡「いや否定しなさいな……で、何故貴方が今決闘中に目が赤くなり、妖力と霊力の併合ができるのかについてなんだけど」
麻代花「それが一番気になる」
鏡「私がやってみたら出来ちゃっただけなのよね」
麻代花「え」
鏡「いや、混ぜてみたらどうなるのかなーって思ってやってみたのよ、したら上手くいって、でも副作用か影響なのかは知らないけど目が赤くなるらしいのよ」
麻代花「なるほど……気になって損した気分」
鏡「ごめんね、もう説明はいいかしら?」
麻代花「多分、というか説明ほぼわからなかったし!」
鏡「心で私を呼べばいつでも話相手にはなってあげるわ。じゃ自分の力で頑張りなさい」
麻代花「ありがとうございました!」
鏡「最後に、頭の中でイメージしなさい」
―――三歩必殺!!
麻代花「空気を氷に変換!!」
力也「な……氷!?」
まずは氷であのパンチを受け止めてみる、硬さはなかなかの物で傷一つ付かなかった。さて次は攻撃、完璧にイメージできるものは炎だけなんだよなー。
麻代花「氷を変換、炎!!」
力也「う、ぐあ……あああああ熱い!?」
言われた通り頭の中でイメージしながらやっている。イメージ通りには少しならないが大体は出来ている。
星熊さんの拳を氷で受け止め、氷を炎にすることで攻撃する。その様子に会場の全員が驚く、迅と骸さんも例外ではないようだ。
骸「迅……」
迅「あぁ。能力だな、完全に」
骸「これは星熊の負けだね」
力也「ふ、あはは!」
骸「本当に凄いね、麻代花って」
麻代花「降参するならやめるけど?」
力也「ふん、まだやれる……!!」
麻代花「炎の中なのに?」
力也「俺の能力はな……」
するといきなり腕を横に払う星熊さん。すると勢いのあった炎が一瞬で消える。これが能力?
力也「俺の能力は潰す力、あまり使いたくはなかったんだけどな」
麻代花「だから炎を潰したってこと?」
力也「ご名答」
麻代花「あるぇ……これってまさか!?」
力也「緊張感を持てよ、まぁ潰すんだよお前を」
麻代花「うそぉ!?」
凄いピンチを凄い形で迎えた私。
虫、主に蟻を潰す感覚で言われたっぽいその一言に、潰された後の死体を想像して怖くなる。
力也「なんだと?」
麻代花「……え?」
力也「おかしい」
おかしい、そう言って星熊さんは唸ってる。
何も知らない人が見たら面白いことだが、私は何を考えているのか分かったので凄く心配。
力也「能力が効かないな、貴様には」
麻代花「え……?」
能力が効かないとか言ってすっごいイラついてる力也さん、マジ怖い。
『あぁそうそう、言うの忘れてたけど死んだら困るからたまにだけ死に対する能力干渉はできないようにするよ。今回のは私の気まぐれだけど』
なるほど、鏡さんのおかげか。ってなにこれチート?
ま……能力だから仕方ない。じゃあ、今考えていたイメージを使おう。
麻代花「なら、いくよ?」
力也「ぐ……、こい!!」
周りに花が咲く。
イメージはあの世がお花畑っていうアレ。でも洞窟でも咲くのは驚いた。
次に風が吹く、それも私の周りだけ。
麻代花「幻想演花 風切!!」
周りに自然を一部使った花を出し、その花を一斉に散らせて風を起こし、その花と風を最高密度にして全てを切り裂くと思った技、名前は家にあった演劇のDVDの名前と風で切るから風切、今度また名前考え直そっかな。
力也「ぐあああ!?」
風が吹いている限り休みはない。
自分でもえげつないなぁ、と苦笑いしながら降参を待つ。
麻代花「降参?」
力也「あ、あぁ!」
麻代花「んー?」
力也「降参だ降参!!」
麻代花「わかった」
そして会場から歓声が聞こえてくる。
勝ったんだ、私。
そして迅が走ってくる。抱きついてもいいよね、これくらいたまにしてもいいよね。
迅「おう、麻代花おつか!?」
麻代花「勝ったよ迅!」
迅「わかったから降りろ降りろ」
麻代花「えー、嫌だ!」
迅「はぁ……まいいけどさ」
骸「それにしても麻代花ちゃん、目は治ってるね」
麻代花「うん、色々分かったからさ」
骸「この骸サマにも教えてもらえると嬉しいなー?」
麻代花「秘密!」
骸「そっかぁ、わかったよ」
麻代花「でも、いつか教えますね。骸さん」
骸「楽しみに待っている、今度家においでよ」
麻代花「え、行きたいです!」
骸「じゃまた今度」
麻代花「はい!」
迅「麻代花、本当に」
麻代花「何さ迅、重いって?」
迅「お疲れ様」
麻代花「……うん!」
決闘は私の勝利で終わった。星熊さんも家族として、ライバルとして認めてくれた。
ライバルはちょっとなー。と思いながら今わたしは幸せだな、と実感する。
ここに来てからたまにやる家族への手紙。いっつも書いては燃やし、天国に届くといいなーと思う。
お母さん、お父さんへ
新しい家族、私も信用できる家族がより賑やかになりました。
友達も沢山できて毎日が幸せです。
ライバルというのも出来て、忙しくなりそうです。色々自分のことが分かって、嬉しいのかなんか不思議な気持ちです。
鏡写しの神様も見守ってくれています。天国でも、生まれ変わっても幸せな日々を過ごしながら、私を見守ってください。
お母さんのパーカー、少し汚れちゃってたけど、また洗って綺麗にします。
神崎麻代花より。
決闘も終わり、また日常を書いていきます。