四話 心から……
頑張りました、どうぞ。
『お前は今から鬼の仲間だ!』
夢を見ていた。昔の中学校での出来事を。
転校してきた私に友達が、『今日から私達の仲間だね!』って言ってくれたっけ。でも、アルビノだって分かったらその友達は『気持ち悪いから来ないでくれる?』って言ってきたなぁ。
仲が良かった友達にいじめられて、人間なんて信じないとか、思ってたなぁ。
帰ったらお酒がなくなった偽父が酒を買って来いとか、18歳未満は買えないのに。でも嫌って言ったら殴られるから盗んで来たんだっけ?
料理も買い物も掃除も洗濯も、全部私。
迅「麻代花、どうした?」
麻代花「ん、夢見てたから思い出してたの」
迅「そうか、じゃあ涙拭いとけよ。ほらハンカチ」
麻代花「え、あ……ありがと」
気付いたら泣いてたみたいだ、何も悲しくないのになんでだろ?
迅「少ししたら麻代花の事、聞くけどいいか?」
麻代花「うん、いいよ」
迅「じゃあ、また後でな」
そういって迅は仕事に行く、人間には出来ないというので私は役に立てるように掃除や料理などをする。昔みたいに命令をされている訳ではない、自分で考えて働く。
昔みたいに孤独じゃない。
仲間が、本当の仲間がいる。妖怪が人間の私を仲間だと認めてくれた。
だから頑張っている仲間のために、私も頑張らないと!
でも、また裏切られたら嫌だな……。
麻代花「でも、毎日宴会なんて食材とかよく持ちますねー」
酒屋の兄「いえいえ、お酒は四天王様の能力でいくらでも出来ますし、肴は少しあればいいですからねぇ」
麻代花「骸さんすごいですねー」
酒屋の兄「おかげであまり困らないですし、骸様は流石ですよ」
骸さんとは鬼の四天王の一人で、戻し進ませる能力がある。
使っているところは見たことがないが、お酒の年を進ませてすぐに発酵できるというもの。
命は戻して無に出来ないが一時的に戻したり進めたり……つまり幼児から大人、大人から幼児に出来るらしい。
寿命も伸ばせるのか聞いたところ、自分の寿命と引き換えにならできるらしい。
鬼「今日も旨い料理頼むよ」
麻代花「はい! 見たことがなかった味噌汁なども、作れるようになりましたので。頑張ります!」
鬼「おう、お前のおかげで俺達元気が出まくるからな!」
凄く嬉しい、顔がニヤニヤするのが分かり顔が赤くなる。
食べたことのない物などは作り方を教えてもらった。あと、味噌汁を知らないことに驚かれた。
迅「おーい麻代花いるかー?」
麻代花「はーい、今行くよー」
迅が呼んでいるので急いで行く。
迅「仕事中悪いな、今暇か?」
麻代花「まぁ暇だけど?」
迅「んじゃついて来い」
麻代花「はーい、味付けお願いします!」
迅「おいおい……」
紅葉道と呼ばれる秋に通れば紅葉が咲く綺麗な道を通って行く。今は春なので小鳥が3,4羽いる。川も澄んでおり、魚が沢山いるのが分かる。
迅「しかし麻代花は鳥に好かれるねぇ」
麻代花「あはは、可愛くて良いよ?」
迅「生憎私は好かれにくいんだよ」
麻代花「ほら、この子がスズ。雀だからスズ」
迅「よく覚えれるね、何が何だか……」
麻代花「鷹のハクなんて迅にぴったりだよ、ほら」
迅「お、ありがとう。可愛がらせてもらうよ」
かっこいい迅と速くてかっこいい鷹はぴったりだと思う。
迅も鳥を触りながら笑ってるし、良かったかも。
迅「ここが鬼の集まる集会場だよ」
麻代花「へぇー」
迅「今四天王が会いたいって言うから、来てもらった」
麻代花「え、四天王って骸さんしか知らないよ?」
迅「そうか、まぁ他己紹介はしないでおくよ」
麻代花「いじわるー」
迅「まぁまぁ、そういうなって」
麻代花「ん……」
そう言って私をガシガシ撫でる。
初めはびっくりしたけど気持ち良くてたまに自分からお願いしているほどお気に入り。
迅「おーい、麻代花を連れてきたぞ」
力也「そいつが麻代花か?」
迅「あぁ、そうだ」
少し沈黙。
名前を知らないのですごい気まずい。
力也「ふむ、ただの小娘だな」
骸「これで私らの飯を殆ど担当してるんだから驚きだよ」
康也「骸は好きだもんね、その麻代花って子」
一番目は赤い角が額から斜めに一本生えている男の人。
二番目は黒い角が斜めに二本生えていて、真ん中から内側に少し曲がっている女の人、私が四天王で唯一知っている骸さん。
三番目は角が蒼く、横に二本生えてる男の人。
麻代花「えっと?」
力也「なんだ小娘、ここは鬼だけしか来てはならない場所だ、さっさと帰れ」
骸「おい、お前も会いたいって言ってただろう」
力也「骸よ、俺は強い奴だと思ったんだ、迅の側にいてもピンピンしている奴だしな、だが結果はただの小娘、興味は無くなった」
迅「おい四天王、貴様らには自己紹介をしてもらうぞ」
康也「何……まぁ自分は迅が言うなら仕方がないと思いますよ」
骸「そうか、なら私は知っているから後は力と業だねー」
康也「自分は四天王其の業、伊吹康也です」
力也「ふん。俺は四天王其の力、星熊力也だ」
骸「あぁ、ついでにね。私は四天王其の気、桐生骸だよ」
雄紀「四天王其の感、歩動雄紀」
あれ、三人しか居ないはずなのに四人目の声?
迅「麻代花、雄紀は消える能力なんだよ、無機物と自分は消えたり出したりできる」
麻代花「不思議な能力だね」
雄紀「不思議こそ我が力よ、さっきは遅れたのを誤魔化すためにやったんだ、顔を見せなかった無礼を許してほしい」
麻代花「あ、はい」
ちなみに歩動さんは角が見えないけど、鬼っぽい大柄な感じ。
骸「いつから居たのよ雄紀、気づかなかったなー」
迅「別に遅れても怒りゃしないのにね」
力也「……おい迅、俺はこいつがただの人間にしか見えないんだが?」
迅「あぁ、麻代花はただの人間さ」
力也「なら何故鬼の仲間に迎える、人間は我らが宿敵であろう」
迅「宿敵は一部の人間さね、戦争を起こしているのは民ではない」
康也「まぁ、自分も不思議に思いますが。迅が言うなら仕方ないと思いますよ」
迅「骸と雄紀はどう思うかい?」
骸「私は可愛いしご飯も美味しいし、良いと思うよ。戦いにも安らぎが必要ってね」
雄紀「僕は中立。なんせ興味がない、守れと言われたら守る。全ては迅様の仰ると通りに」
迅「ってことだ、一対二だぞ、力也」
力也「ふん、ならこちらから条件を出させてもらう、認めるためのな」
迅「麻代花、良いか?」
麻代花「へ?」
迅「……聞いてたか?」
しまった、蚊帳の外だったから全く聞いてなかった。どうしよう……。
麻代花「き、聞いてたよ。えっと、何が?」
迅「……力也が麻代花を認めるために条件を出す、それをクリアしたら麻代花が力也に認められるってことだ」
麻代花「条件を教えて?」
力也「ただ一つ、私に勝て」
骸「……ちょっと、力也君?」
骸さんが殺気か何かを出しながら力也さんを睨む。
骸さんって怒ると怖いんだよね、特に『君』なんて呼ばれたら命の危機だって鬼のみんなが言ってた。
康也「星熊、麻代花は人間だぞ」
力也「鬼は力こそ全て、認めるなら人間でも強くないとな」
麻代花「うんっと、やります!」
迅「おい麻代花!?」
麻代花「強ければいいんでしょ?」
力也「勿論」
麻代花「なら、大丈夫かな」
骸「麻代花ちゃん……本当に大丈夫?」
力也「ふん、調子に乗っているのもこれまでだぞ?」
麻代花「まぁ、私も鬼の仲間なわけだし、そろそろ迅に戦い方教えてもらおうと思ってたから」
力也「小娘が、戦い方も知らないでよく頷いたな。鬼の仲間入りをした気でいる小娘ごときが、事によっては死ぬぞ?」
麻代花「その小娘が星なんとかさんを驚かせるのが楽しみだなー!」
その言葉を後に解散し、今は部屋にいて迅と話し合いを始めた。私の事と今後についてだ。
迅「んじゃまず、麻代花はいつ生まれたんだ?」
麻代花「んとねー」
迅「恐竜のことが分かるのなら、まず麻代花は人間ではない気がするんだよ」
迅の話なら恐竜は300年くらい前に存在して、隕石で全滅したらしい。
麻代花「うんと、隕石が衝突したのは知ってる、見てたしそこに居たし。それに私は偽なんだけど、親からの虐待で死んでさ。目が覚めたら恐竜が居たの」
迅「ちょっと待て親のせいで死んだって。まず、虐待って何だ?」
麻代花「親が子供を殴ったりすることかな」
迅「親が麻代花を殴ったりしたせいで死んだ……?」
麻代花「うん、お父さんにお酒を買って来いって言われてね、でも私が居たところは18歳未満は買えなかった。でも買わないと怒られたり殴られるから盗んだりしたよ、それで捕まったこともある」
迅「盗みって……警察って犯罪者を取り締まる奴等だろ?」
麻代花「うん、結局親は迎えに来たんだけど『面倒くさいことさせるな』って言われて殴られちゃった」
迅「そいつは麻代花の義理の親なんだよな?」
麻代花「そうだよ、全部私に無理矢理押し付ける。だからまた酒を買って来いって言われても嫌って言いたかった、でも嫌って言ったらまた暴力がくる」
迅「……そうか」
麻代花「だから盗みもしたし、人を襲ってお金を取ったりもした」
迅「……」
麻代花「偽の母親もさ、家事も何もせず、私に全部やらせたよ。過労死しかけたりもした。だから料理も洗濯も掃除も上手いって言われるのかな?」
迅「まだ……話してくれるか?」
麻代花「うん、私はパン以外食べたことがなかったんだよね。だから味噌汁とかも知らなかったし」
迅「仲間とかに相談しなかったのか……?」
麻代花「昔は居たよ、アルビノって知ってる?」
迅「あぁ、目が赤く、肌は白く、毛も色が抜けて白い病気だろ?」
麻代花「ちょっと違うけど……私は沢山の友達が居た、すっごい楽しい毎日だったよ。でも私は隠し事がしたくなくてさ、アルビノって事を言ったら全員が敵になっちゃった。いじめられて、裏切られて。最後は死んじゃった」
迅「それで……目が覚めて恐竜が居て、隕石が落ちてまた目が覚めたら私に出会ったのか」
麻代花「初めは人間かと思って凄く嫌だった。でも妖怪って言われて、信じられなかったけど少しホッとしたんだよ」
迅「どういうことだい?」
麻代花「私は、人間が大嫌い。前は曖昧だったけど、今はハッキリと言えるよ」
迅「なっ……お前も人間なんだぞ、人間には人間の仲間が必要だとは思わないのかっ!?」
麻代花「私は、鬼の仲間。でもまた裏切られないかって心配で、どこか仲良くしたくないって思ってるんだ。宴会場では、心から私と過ごそうねって言ったのに。私自身が心から過ごせてないんだから、馬鹿だよね……私って」
少しの沈黙。
すると迅から呻り声が聞こえてきた。
もしかして泣いてるの?
麻代花「迅、もしかして泣いてるの……?」
迅「あたりまえだろ……仲間がこんな目にあったのに、泣かない薄情な奴がいるか!?」
麻代花「ごめん。その気持ち、分からないよ……?」
迅「いいか、鬼のルールを教えてやる!!」
麻代花「き、急だね……?」
迅「一つ、嘘をつかない。「二つ、仲間は自分の命より大切に。三つ、喧嘩をしたら相手は親友だ」
麻代花「えっ?」
迅「鬼はお前に嘘はつかない、絶対に。だから裏切らない!」
麻代花「えっ……え?」
迅「だから、裏切られることは考えず、心から私達と心から過ごせ!」
麻代花「良いの……?」
迅「お前は私達の家族だ!」
麻代花「迅……私……ううぅ」
迅「もう夜だ、泣いて寝ろ、明日から特訓だぞ?」
麻代花「う……ん、わかっ、たよ……」
迅「おやすみ」 麻代花「おや、すみ……」
天国のお母さん、お父さんへ……。
私は心から信じたいと思う家族ができました。
少し不思議だけど、見守っててください。
神崎麻代花より。
初3700文字突破。
駄文だけど頑張りました。