ひみつのデンちゃん 02
「たー」拓人、頭を抱える。
「オレが最初で、オマエが次。で、スーちゃん、で、ユキにあかね……デンちゃんはどこから登場してたんだ」
「でもさ」サクは、それほど構っていないようだった。
「とりあえず五人揃ってるからいいんじゃ、ないの?」
「オ、マ、エ、なあ~」真剣に考えてくれよ、拓人は目で訴える。
「これ、ケッコウ問題デカいぞ、ちゃんと考えようよ」
サクはしばし、マリオから目を離してから
「とりあえずさ、ユキちゃんたちを連れ込んだ時には、もういたよねえ」
「そうだそうだ、それじゃあ、スーちゃんの時は」
「ぼくら二人で、スーちゃんが寝てた穴の中に逃げたんだからまだいなかったよ」
「そうだ。あん時面白かったよなあ、オレら変化したらアイツ、きょとーーーんとしてたっけ」当時を思い出して拓人、ニヤリとしたがすぐ真顔に戻り
「とすると、スーちゃんとユキたちの間か。でも……思い出せねえ」
「聞いてみれば?」
「誰に」
「本人に」あのな~~とサクに詰め寄る拓人。
「オマエ、もしかしたら……って思わないの?」
「何を」
「ヤツがさ、なんつうか、その、敵のスパイかも、って」
「すぱい?」サク、テンで訳が分からん、という顔で
「だってさ、味方じゃん。昨日も一緒に戦ったし」
「あーのーなー」もう拓人は泣きそう。
「味方の中にいるからこそ、スパイって言うんだよ、分かる?」
「じゃさ」サクは面倒くさくなってきたようだ。
「そんならさ、スーちゃんに聞いてみりゃいいじゃん」
「お」拓人の顔が晴れやかになった。「それいいや、早速探しにいこーぜ」
スティーヴンは、相変わらず穴の底でふて寝をしていた。道路掘りを長くやっていたせいで、つい工事中の穴を見ると中にはいって、こうして寝転んでしまう。
興奮状態でここに来たいきさつを語る拓人と、その脇に「ぼー」と音をさせて突っ立っているサクとをけだるげに交互に見やっていたスーちゃん
「で、どう思う?」と拓人にそう訊ねられ、まずセブンスターの煙を吐いてら次に吐いたセリフが
「別に」
おお、そっけなさ大賞第一位に輝く栄光の返答。
「なんで? 全然フシギに思わないのかよ」
どうかしてるよ、なあサク、と更に興奮状態の拓人を冷ややかに眺めながら、スーちゃん、煙草を地べたでもみ消した。本当ならばコイツの手の甲でもみ消したい、という顔。
「オマエ、あほか」
少し沈黙の時間があった。
「一番最初のミーティングとかに呼び出された、前の日にオメエ、オレのアパートに来やがった。
そん時、テメエがほざいたのよ、
『四人目も決まったンで、最後ダレ一人入れるかみんなで考えたい、来てくれ』ってよ」
「え?」まったく、記憶にございませんですのがー。
「オメエが連れ込んだんだろ? テメエで聞いてみろやタコ」
そうし二人は穴から追い出された。
どうもユーウツそうな顔している、伝助を横目にスーちゃんは少し考えてから
「おいオカマ」わざと乱暴に声をかける。
「オメエが辛気臭え顔してると似合わねえぞ。オカマはオカマらしくヘラヘラしてろ」
「オカマ言わんといて、それにああいう方だって苦労は多いんよ」
「はいはい」
しばらく二人は並んで歩いていたが、そのうち伝助が立ち止まる。
「あーあ」大きなため息。「何とかならへんもんやろか」
「何がだよ」
「アニキがね……」話しているうちに、伝助、本当に情けなくなってきた。
「どうしてあのお人は、すぐ見かけで人を判断してしまうんやろ。すぐインデックスシール貼ってしまう……『柏のモトヤンキー』とか。ものからのロボ違いますぅ」
「どいつだって、似たりよったりだ」スティーヴンの横顔に一瞬かげりが刺す、だがすぐに何か思いついたらしく、くくっと笑った。
「どしたん」
「オマエのクソ兄貴さま、○大卒だっけ」
「あ、ああそれが?」
「いんてり?」
「ぶってるけど、どうだか」
「英語、得意か?」
「え? まあ、どうにかしゃべるんやないの? そう言えば先日、街なかでホンモノに会ってしゃべった、って自慢してたわ、道聞かれただけらしいのに」
「ホンモノ?」
「ホンモノのガイジンさん、てコトでしょ」
「なんだ、その程度か、でもフランス語で行くか……」何かぶつぶつ言ってる。
伝助、その横顔をみた。スーちゃん、久々に面白そうな顔している。
「久々に、うちのアニキにご登場願うかな」「え、何それ」「耳貸せや」
ごにょごにょごにょ……
「ほんま?」伝助の顔がぱっとほころんだ。
「それ、おもろいわ。でも……上手くいくん?」
スーちゃんはワルそうな目を上げてにやりとしてからうなずいた。
「まあ、見てろって」




