ミッション・コンプリート
ここまでの長きにわたり皆みな様
誠に感謝感激雨あられ
人生はまだまだ続く、どこまでも
しかしいったんここいらで、お開きとさせて頂きましょう
伍人衆変化これにて一巻の終わり
何処かでまたお会いできる日まで
皆様の色とりどりな未来に幸多からんことを
―― 社会福祉法人・新生ものから団総帥 カラフル新大久保 こと
彼は原稿の末尾に自筆のサインを入れる前にいったんペンを置いて、ほお、と息をついた。
まだまだ20歳になったばかりだというのに、すっかり肩が凝っている。
それでも、やりとげたという温かい満足感が、心地よく体を包み込んでいた。
目の回るような忙しさの中であったが、彼はどうしてもこれだけはという強い思いに突き動かされたままあちこち訪ねて聞きまわり、資料を集め、この一編をどうにか書き残すことができたのだった。
母は彼に言った。
「どちらが正義か、そんなことは後の人が決める。アナタはアナタの信じる道をたゆまずに歩いて行きなさい」
彼は一方を選んだ、信じる方を。
そうして今では、彼は年若き指導者として、ついに組織の頂点へと上り詰めた。
組織自体もずいぶんと合理化され、世界的な統合化も当時よりもはるかに効率的に行われている。よりスタイリッシュに、より戦略的に、そしてより密やかに危険に、彼らは世界を制服しつつあった。
正義の味方と呼ばれていた変化の数人とは、いまだ縁が切れていない。もちろん、敵同士として。
ものからが進化したと同時に、独立した変化組織もやはり、何かと進化してきたのだ。システム改良やスケール拡張は追いつ追われつ競い合うように進んでいった。
そして、その進化は双方とも止まることを知らない。彼らはずっと、この先相容れることはないだろう。
それでも、彼はそんな彼らが大好きだった。強い絆すら感じていた。
生まれた時から、いや、生まれる前からずっと知っていたのだから。
―― 僕はあなた達の活躍を忘れない。あなた達の全てを知ることがそのまま、自分自身を知ることになるのだろう。
新生ものから団の初代総帥・カラフル新大久保はまたペンを取り上げた。
軽く息をため、ひと筆で最後に署名を入れる。
―――― Milto Hara
そして大きく息をついて、今度こそ本当にペンを置く。
この物語はいったん終わりを告げた。だが……
明日からはまた、新しい戦いが始まるだろう。
伍人衆変化 了