御披露目。「ヘンゲ、とお呼びください」 ※イラストあり
illustration by 七ツ枝 葉さま
「伍人衆変化、見参!」
今日も快調。調子いいはずだ。初めて全員そろっての『変化』。
声もピッタリ、そろってる。あとは、敵を倒すだけ。
薔薇変化、ふと後ろをふり返った。
そろっていたのは、声だけだった。
無理やりかり出された桜変化、名乗りまではよかったが、今じゃ、電信柱の影でびすびす泣いている。
「いやよぅ、死んじゃうかもおぉ~、おとーさんおかーさん、あかね~」
横で一所懸命なぐさめる若草変化。
「ま、大丈夫やてユキ、いや桜変化、たいしたことあらへんて。このコスチュームつけとれば、ぎょうさん敵はんいらしても、ま、滅多なことで負けしませんて、ホント。ほら、あんまり泣かはると、ゴーグルに水、溜まりますよぅ」
すらりと背の高い浅葱変化が、薔薇変化にくってかかる。
「てめえこのタコ、女なんて足手まといだって言ってんだろうがぁ」
桜変化の泣き声がそこにかぶる。
「うぇ~~~ん」
「ま、ま、泣かんと」
「くっそおぉぉ」
浅葱変化、まわりにわらわらと群がる『ものから団』の下っ端どもに目をやり、また薔薇変化のほうを振り向く。
目が血走っているのがゴーグル越しにもみえる。
「やっぱ、キサマのせいだこのクソやろ~」
「ど、どうしてオレが。敵はあっちだろ」
「てめえの口車に乗せられてよ……」
そうなのだ。
土方やってたヤンキーの彼を、日給二万のバイトがあるだの何だのとたぶらかして『変化』に連れ込んだのは確かに事実。
だがその後、彼も『正義の味方講座』で、自分の役割を何とか納得したはずではなかったか。
時々、プッツン切れることはあったが、それでも今までの数回、浅葱変化の活躍は目覚ましいものがあった。
それが、ここにきて、これだ。
「ここで落とし前つけたろか」
「ま、待て」
「うえーーーーーーん」
「ま、まあみなさん落ち着いてぇ」
徐々に縮まる「ものから団」の輪。
「ぎょ。ぎょぎょ。ぎょぎょぎょぎょ」
「アサちゃん、ここはとりあえず敵を倒してからだねぇ……」
迫る浅葱。薔薇変化、必死に首を巡らす。
こういう時、浅葱の説得が妙に上手い鬱金変化を探す。が、どこにもいやしない。
「いないぃぃ?」ぎょっとして、薔薇、大声をあげた。
「おい若草、鬱金は?」
「あれぇ? バラちゃんと一緒だったんじゃ……」
その間にも、浅葱の鋼鉄の右腕が、薔薇ののど首にかかる。
「ま、まてよあさぎへんげぇ」
「問答無用。しね」
「うごんべんげがいない~~」
「あに?」
ぱたっと、浅葱、薔薇を取り落とす。
「ウンコヤローが? 何でだよ!?」
伍人衆変化は、誰か一人でもメンバーが欠けると、パワー出力がガタっと落ちる。
「今日、どこで『感知』したん、バラちゃんたち」
「学校。チャリ置き場、走りながら変化して……」
「きゃっ」
桜変化、敵の一人に腕を掴まれ、飛びあがる。
「やーん助けてぇ」
叫びつつ、ぶんと腕を振ると、そいつは四丁目の角までふっ飛んでいった。
こう言っちゃ何だが、敵の奴らもそうとう弱い。
それでも、敵の数はかなりのもの。しかもますます増えている。
「どこ行っちまったんだ、鬱金変化……」
じりじりと狭まる包囲の輪。危うし、伍人衆変化! マイナス一人衆! 絶体絶命!
その頃、鬱金変化はというと。
自転車置き場で変化して走り出したまでは良かったが、ふと倒れたチャリが気になって、わざわざ自転車置き場まで戻っていた。
「とりあえず、力の限り戦うぞ!」
薔薇変化が悲壮な叫びをあげた時、ようやく鬱金変化は一階一列目のチャリを並べ終えたところであった。
(続かず)
続かず、といって続きます。すみません。