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3rd-Real  作者: 音祇 レンド
序幕編
4/13

転生、そしてエラー

短いです。アンバランスで申し訳ない。

 『凰鬼』センチュリア・オンラインに存在する職業の一つであり、その中でも最強と名高い存在だ。

 しかし『凰鬼』のゲーム内人口は『道化』の次に少ない。

 現状では低レベル帯でちらほらと見受けられるが、それらもすぐに断念し他職に転職を余儀なくされている。

 βテスト時にヴィネルも挑戦したがあえなく断念することになっていた。




 『凰鬼』には幾つかの特徴があげられる。他職と比較してもずば抜けた超火力。不死とでも呼べるほどの体力量とその自動回復率。

 だが、その最もたる物が『物理攻撃無効』の能力だ。

 パッシブスキル『炎化』。自身の体を炎に変えることが出来るようになるこのスキルにより剣での斬撃、拳での拳撃、銃による射撃などの物理的な物を完璧に無効化することが出来る。

 誰の目に見ても明らかな壊れスキルなのだが、これには致命的な副作用があった。


 それは防御力最低値固定。完全な防御力0。

 当初は誰も気にしていなかった。物理が効かないのだから防御を気にする必要は無い、と――だがそれは間違いだった。

 このゲームにおける『K・O』システムの概念が『凰鬼』に待ったをかけた。

 そう、このゲームにおいて痛覚を緩和させるステータス『防御力』。

 それが0に固定されていることが問題だった。


 レベルが上がり狩場が上位になればなるほどその仕様が響いた。

 物理は完全に無効化出来るから問題はないのだが、魔法にはとことん弱い。

 魔法攻撃に当たれば一発『K・O』は間違い無し。それほどの激痛が走るため、恐怖に駆られたプレイヤー達は我先にと他職へと転職していった。

 どの狩場でも魔法攻撃主体のモンスターと物理攻撃主体のモンスターが入り交じっている中、『凰鬼』が狩りを行うのは至難の技となっていたのだ。


 そうして誰もが認める最強職にも関わらず、誰も使わない。

 もしくは使っても高レベルまで到達出来ないという現状が出来上がっているのだ。


 そんな中、未だに『凰鬼』を諦めないプレイヤーが一人いた。


 『道化』ヴィネル。豊富なパッシブスキルの中に痛覚無効の可能性を見た彼は、転生によるスキル保持で『凰鬼』の問題点を打破出来ると考えていた。

 誰もが机上の空論だと嘲笑う中、それでもヴィネルは『道化』を演じ続けた。


 そして今、その苦労が報われる時がきた。




【転生権の使用を確認。これより『道化』ヴィネルの転生を行います】


 殆ど何も無い自室が徐々に色を失い、ついには完全な闇となった。

 宙に浮いているような感覚にヴィネルは戸惑うも転生を進めていく。


【転生する職業をお選びください】


「『凰鬼』」


 決まりきった答えをするヴィネル。ついにここまで来たのだと体に震えが走る。


【転生後に保持する方をお選びください】


 選択肢が二つ用意されたウィンドウが現れる。

 1.ステータス 2.スキル

 無論選択肢は決まっている。


「2番」


【現在の所有スキルを保持したまま『凰鬼』へと転生いたします。よろしいでしょうか?】


「はい」


【処理中です。しばらくお待ちください――――IDカードの書き換えを完了致しました】


 ヴィネルは新しく更新されたIDカードを受け取る。

 無事に終わった、とヴィネルが安心するのとその『異常』が発生するのは同時だった。


【ログイン中…………エラー。サーバーと――更新―――――せん。再――――――行い――データ―――――に】


「な……一体何が――――ぐぁっ!?」


 システムの声がぶつ切りになったと同時に暗闇の空間が異常な振動を起こす。

 それに加えてヴィネルを激しい頭痛が襲う。まるで脳を高熱の何かで攪拌されているような得体の知れないそれに、ヴィネルは意識を霞ませる。


(エ、ラー? ……嘘だろ? ……こんなに……苦労……して……)


 何かを掴もうと伸ばされたその手は、何も掴むこと無く力なく握られる。


 暗闇の空間が崩壊し底が抜け、ヴィネルの体は音も無く何処までも落ちて行った。


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