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車旅しかしてこなかった夫婦が、はじめてクルーズ船に乗って気づいたこと  作者: あめとおと
番外編

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11/14

三ヶ月後のドライブ


 久しぶりに高速道路を走っていた。


 窓の外には、見慣れた山の景色。


 海じゃない。


 揺れもしない。


 でも、どこか懐かしい。


「混んでないね」


 助手席で私は言った。


「平日だからな」


 ハンドルを握る拓真の横顔。


 変わらないはずなのに、少しだけ余裕があるように見える。


 三ヶ月。


 クルーズから帰って、季節がひとつ進んだ。



 サービスエリアに車を止める。


 ドアを開けた瞬間、風が冷たかった。


「コーヒー飲む?」


「飲む」


 自販機の前に並ぶ。


 紙コップが落ちる音。


 湯気。


 一口飲む。


「……あ」


「なに」


「船の味じゃない」


 拓真が笑う。


「そりゃそうだ」


 同じコーヒーなのに、少し違う。


 あのときは、時間がゆっくりだった。


 今は車の音がして、人が行き交っている。


 でも。


 悪くない。



 ベンチに座る。


 行き先は決めていない。


「どこまで行く?」


「さあ」


 いつもの答え。


 でも以前と違うのは、焦りがないことだった。


 時計を見ない。


 渋滞情報も確認しない。


 ただ、出かけている。



「なんかさ」


 私が言う。


「前よりドライブ好きかも」


「前から好きだろ」


「うん。でも」


 言葉を探す。


「急がなくていいって分かったからかな」


 船では、景色が勝手に進んだ。


 今は、自分たちで進む。


 でも速度を選べる。



 再び車に乗り込む。


 エンジン音。


 道路へ戻る。


 夕方の光がフロントガラスに広がる。


「次の休憩、海寄る?」


 拓真が言った。


「いいね」


 即答だった。


 海を見る理由なんてない。


 でも、見たくなった。



 車はゆっくり走る。


 以前と同じ道。


 でも少し違う時間。


 私は窓の外を眺めながら思った。


 旅は終わったはずなのに。


 あの船の時間は、まだ続いている。


 たぶん――。


 私たちの中で。





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