表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色は色めく色々と  作者: 境乃 シキ
4/17

壺の色が静まると同時に、実験室の壁がゆっくりと崩れ始めた。

紫の石片が霧となって剥がれ落ち、その向こうに、かつての街並みが現れる。


「……幻影?」


レイが一歩踏み出すと、床石が鳴った。


「踵が軋むな……ここ、現実に近い」


忍びの少女――名をユイと名乗ったことは、まだ一度もない――は、街の中央に立つ白い塔を見つめ、わずかに息を詰めた。


「ここは……私の故郷」


街に人影が現れる。

その中心で、赤い外套をまとった少年が高らかに宣言する。


「我は救世の民、レッドフィールである」


その言葉に、レイは振り返った。


「救世の民……? それってどういう意味?」


ユイは唇を噛み、答える。


「色を“固定”する一族。赤は赤のまま、白は白のまま。混ざることを許されなかった人たち」


白い塔の上から、老いた賢者の幻影が街を見下ろしていた。

レイは、その姿に見覚えがあった。


「……メガロ?」


ユイは冷たく言い放つ。


「メガロも衰えたな。あの人は、色は混ざることで意味を持つって言ってた……でも、止められなかった」


幻影の中で、争いが起こる。

赤と白がぶつかり合い、街は崩壊していく。


突然、幻のユイが誰かに背後から捕まれた。


「――っ、脇の下はだめだ!」


思わず叫んだその声が、現在のユイと重なる。

レイは驚き、現実の彼女を引き寄せた。


「大丈夫だ、ここはもう過去だ」


だがユイは、レイの腕を振りほどき、白い塔を睨みつける。


「……それでも」


彼女は、はっきりと言った。


「白は譲らない。全部を混ぜればいいわけじゃない。守る色だって、ある」


その瞬間、幻影は砕け散り、再び阿吽の遺跡が姿を現す。

番人の声が、どこからともなく響いた。


「混ざることを恐れ、混ざらぬことを選んだ者。

その矛盾を抱えたまま、なお進むか?」


レイはユイを見た。

彼女の瞳には、過去と後悔、そして確かな意志が宿っていた。


「進むさ」


彼はそう言って、紫の光の奥へ足を踏み出す。


混ざらぬ色を抱えたままでも、歩くことはできる。

阿吽は、それを拒まなかった。


――そして物語は、次の“境界”へと進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ