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色は色めく色々と  作者: 境乃 シキ
3/17

紫の光が収束すると、レイと忍びの少女は、見覚えのない小部屋に立っていた。

天井は低く、壁一面に色板と奇妙な器具が並んでいる。どう見ても試練の間だが、どこか生活感があった。


「……ここ、実験室か?」


少女は周囲を警戒しつつ、中央にある石卓を指さす。そこには半透明の液体が入った壺が置かれていた。液体は黄緑色に揺らめいている。


奥から、あの紫衣の番人が現れた。


「ここでは“判断”を示せ」


番人はそう言うと、色板を左右に並べた。

レイは思わず首をかしげる。


「右は左の反対だ……それは、そうなんだが」


少女が腕を組む。


「でも阿吽で“当たり前”は罠かもしれないわよ」


壺の液体がぶくりと泡立つ。番人が杖で指し示した。


「この色を完成させよ。だが、混ぜすぎれば崩れる」


レイは色板を覗き込み、眉をひそめた。


「黄緑はもう少し薄い! このままだと、主張が強すぎる」


少女は急にレイの額に手を当てる。


「ちょっと、集中しすぎ。熱はあるのか?」


「ない、と思う……たぶん」


そのやり取りを眺めながら、番人は静かに時を測っていた。


「かれこれ1時間でござろうか。迷いもまた、色の一部だ」


石卓の横には、なぜか鍋と刻まれた野菜が置いてあった。

少女がそれを見て、思わず声を上げる。


「……待って。これ、色じゃなくて“調合”っていうより」


レイも気づき、苦笑する。


「それにネギは入れるのか?」


番人は初めて、はっきりと笑った。


「入れるかどうかを決めるのは、お前たちだ。正解はない」


レイは深く息を吸い、壺の中の色を見つめる。

満たそうとせず、だが手を止めることもしない。


紫は、まだ完成していなかった。


そして彼は理解する。

この試練が問うているのは、色でも理屈でもない――選び続ける意思なのだと。

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